魔女が住まう街にて〜Incident analysis by modern witches〜

nashlica

文字の大きさ
67 / 100
file4:魔女と俯瞰を彷徨う亡霊

第3節 ラフィラの亡霊②

しおりを挟む
PM 7:30 『仮面の魔女』の工房

 目が覚める。目が覚めると、ラフィラではなく、私のよく知るところだった。あれから、どれだけの時間が経ったのか、わからない。だが、私は確実に死んだのだ。

「もうお目覚め?」
「『仮面の魔女ジャンヌ』なのか? ここは?」
「私の工房よ。あなた、あれに運ばれて来たのよ。それも、ひどい状態でね」

 『仮面の魔女ジャンヌ』の言葉に、思い出す。そうだ、私はあの亡霊に追い込まれ、自分で自害したのだ。それも、ひどくやられた状態で。
 しかし、誰が運んできたのかもわからない。私は、試しに聞いてみた。

「誰が私をここに? 君が運んできたのか?」
「いいえ。あなたのところの野良猫よ。全く、少しは躾をしたらどう?」
「明日香が運んだのか? 珍しいこともあるんだな」

仮面の魔女ジャンヌ』は、私の衣服を用意する。私は、体を起こすと、自分の負傷した箇所が治っているのを見る。

「あなたの身体の認識情報を変えておいたわ。今の肉人形ボディが、あなたの身体よ」
「なるほど。通りでボロボロになったところが、元通りになってるわけか」
「早く着替えなさいな。見せたいものがあるんだから」

 私は、『仮面の魔女ジャンヌ』の用意した着替えを着る。着替え終えると、『仮面の魔女ジャンヌ』のいる所へ向かった。到着すると、そこはまるで人形の工房アトリエのようだった。

「それにしても、早すぎないかしら? あの小娘が、『魔女どうほう』になったのが最後のはずよ」
「それを悪かった。そうだな、彼女が『死んだ』ことになってからもう1年か。そんなあっという間だったとはね」
「何を呑気に言ってるの? これはあくまで、『大罪級の咎人』との戦いのための肉体スペアよ。まぁ、あなたはそう言うわけには行かないでしょ?」

「あぁ、これ以上、あれに勝手される訳には行かない。これ以上、自殺者ひがいしゃを増やす訳には行かない。奴にあそこから退去してもらわないとな」

仮面の魔女ジャンヌ』は、私の言葉に疑問を抱く。

「被害者? 彼女たちは自殺したんでしょ? ――――――あなた、それを?」

「そうだ。彼女たちは、自殺したんじゃない。自殺ころされたんだ。奴の身勝手な我儘でな。本来なら、もうこの世にはいない魂だ。それを魔術を用いて縛られてる。彼女たちは、死ぬ前までは正常な人間だったんだ。なのに、奴に誘われる形で、すすきののビルから飛び降りたんだ。まるで、雛が育って大きくなって母鳥の元に向かうようにな。だから、この被害者たちは自殺ころさせられたんだ。だから、これは『他殺』になるんだ。側から見たら『自殺』にしか見えないが、実際は殺されただけなんだ」
「なるほどね。貴方にしては、随分と良い考察ね。私も同感よ。さっきまでそこに引っかかっていたけど、それで、全て繋がったわ」
「君が引っ掛かるなんて、意外だよ。だけど、何を目的にしているか。そうだな、本来なら、彼女は見たかったんだろう。見えなくなった自分が見る『俯瞰風景』とやらを。でも、意図しない形で、間違った方向に行っている。今頃、誰かに助けを呼んでるだろうな。だから私は、助けころしに行かなきゃ行けない。それが、今できることで、最善なことだ」
「そうね。貴方は今もじっとしていられる時間は無い。なら、どうするか。自分1人では出来ないわよ? 貴方のお仲間を使うしかないわ」

仮面の魔女ジャンヌ』の言葉に、ラスティア達の頭が浮かぶ。そうか、それを忘れていたんだと痛感した。『仮面の魔女ジャンヌ』は、見かねたのか、私に紙切れを渡す。

「これは?」
「彼女のいる病室よ。それをあげるから、誰かに見舞いに行かせない。」
「なるほど、全くの赤の他人だって言うのに、病室まで調べて」
「まぁ、良いんでしょうよ。それより、早く行かなさい。下で待ってるわ」

 私は、魔力を感じ、誰かが待っているを知った。それを聞き、私はここを去る。すると、仮面をつけられた人形を見つけた。

「これは?」
「私の傑作よ。貴方を素体にして作った『虹の魔女あのお方』の人形よ。貴方には何に見えるか知らないけど、私にとっては大切な、主人なのよ。貴方が居続ける限り、私は貴方に着いていく。だって、貴方は――――――」
「知ってるさ。4年も前からずっと。でも私は奴とは違う。だから君の支えがいるんだ」
「えぇ、貴方は、私の親友。そして、貴方は我が愛おしき『魔女』。だから、貴方が必要としているのなら何でもするわ」

仮面の魔女ジャンヌ』は、私を後ろから抱きつく。彼女はたまにこうしてくるから、少し面倒に感じる。
 けど、それでも満更でも無いのは私の良心だろうか。私は、『仮面の魔女ジャンヌ』から離れる。そして、ここを後にする。

「んじゃ、また頼むよ。『仮面の魔女ジャンヌ』」
「えぇ、それじゃね。アル」

 私は、その声を後ろに、工房を離れる。そして、エスカレーターに乗って下に降りた。1階まで降りると、いつもと違う格好をした知り合いが待っていた。

「遅い! あれと何話してたの?」

 髪をツインテールにした明日香が、エントランスで待っていた。どうやら、私を待っていたらしい。

「悪い。少し、立て込んでいたよ」
「嘘。身体が起きたばっかなくせに。それで? 何か話したの?」
「まぁ、ただの雑談さ。君こそ、なんで迎えに来たの?」

 明日香は、ニンマリした顔で私を見る。

「ラスティアが、待ってるよ。それも、怒った顔で」
「はぁ……。わかったよ。すぐに帰ろうか」

 私は、溜息をしながら、歩く。明日香も、私に着いていくように歩く。こうして、私は渋々と明日香と共に邸に帰っていくのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...