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1章女神の願い

1章40話衝撃

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 場と相手が悪いのは確かだろう。
 アカリは店が崩壊するのを危惧し、あえて力を抑え、なかなか強い攻撃に至れない。
 一方、デストロは防御に徹していれば、後はじわりじわりと相手が弱るのを待てばいいだけだ。
 勝負あったな。
 そして、三度目のアカリの攻撃の瞬間、火力が不十分なためか、デストロは簡単に回避し、速効の反撃の右手で、アカリの細い首を掴み、締め上げる。

「あっああああ」
 
「ギャハハハハハ……雑魚が粋がってるからこうなる」

「早く……この店から出て行きなさい」

「口だけは達者だな……なら、その生意気な口が出来ないようにしてやる」

 醜悪に満ちた左目が笑みを浮かべ、開いた左手で、アカリの胸に近づく。
 ヒヨリの穏やかな表情が一変し、目を見張る。

「アカリ!」

 そして、デストロの左手がアカリの天衣に触れようとした瞬間、右方向から凄まじい左手の拳が顔面に炸裂し、

「あ?」

「邪魔だ」

 入口の店ごと破壊し、圧倒的な爆発音共にデストロを吹き飛ばした。
 場内は騒然となる。
 アカリは咳をしながら、放心状態で崩れ落ちる。
 魔王はアカリに心配の情を掛ける訳でもなく、鼠に企みの笑みを漏らす。

「鼠!」

「はぁぁい……」

 あたふたしながら、恥ずかしい声を上げる鼠。

「俺が今日からこの店のオーナーとなってやる。いいな?」

「えええ……いや、でも……」

「まさか、拒否する気か? 何なら、この店潰してやってもいいぞ?」

「いえいえ……そんなことはありません」

「クックックックッ」

 そして、魔王はヒヨリや他の従業員美女にも促す。
 
「というわけだ……」
 
 皆は訳も分からず、ただ頷く。
 ヒヨリだけは、悲しげに黙っていたが、やはり、奴隷の素質のある奴は手中に治めるのが容易い。 
 奴隷はどこいっても一生奴隷なのだ。
 俺の下で、立派に一生奴隷として務めを果たせ雑魚共。
 円形の破壊現場からデストロが顔面に血を流しながら、立ち上がる。

「てめぇ……良くもやってくれたな」

「まだ、生きてたのか」

 次の瞬間、魔王は今度は強力な破壊の巨大左拳で、デストロの顔にぶち込み、天井を貫き、天へ吹き飛ばした
 瞬殺だった。

「ガガガガガガガガ」

 凄まじい音が鳴り響き、天井には歪な形状の巨大な穴が出来た。

「フハハハハハハハ……弱過ぎる……弱過ぎる……弱過ぎる……こんな奴が英雄なのか……がっかりだ」


 
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