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1章辺鄙な領にて
5話可愛いくない
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ユスアがベットに座り、無関心を装う兄姉三人に手招きする。
「サリバン、ストラノ、エリオ、こっちにおいで」
「……」
「この子が僕たちの弟になるんだね」
「可愛いね……」
「ほら、シウス、お兄ちゃんとお姉ちゃんだよ」
サリバンはどこか不満そうな赤色の両瞳で、近寄ろうとも、見向きもしない。
俺には興味がないらしい。別にいいのだが。
一方、エリオは無感動な片目で、俺のモチモチの頬や小さな指を触って、小さいねとか可愛いねとかわざとらしく言っている。ストラノは俺のベビー服をめくったり、足の指を強く握ったりと、嫌がることをしてくる。
「ねぇ……なんでこんなにちっちゃいのぉ?」
「あなたたちも小さかったのよ」
彼女達の指を握り返すと、
「あーにぎった」
「可愛いねぇ」
ストラノが掌を触ろうとする隙に抓ってこようとしたので、逆にストラノの指を強く握り、ぐにゃりとさせようとしたが、
「あーにぎった」
「可愛いわね」
倍の力で握られ手や指が痛い。指折れてるんじゃないか。明らかに普通の子供ではない。ストラノは面白くなってきたのか何回もやってくる。完全に俺はおもちゃ。
「こらこら、シウスで遊ぶじゃありませんよ」
「はーい」
何だこの痛い視線は。
父ウルギアが一定の距離を保ったまま、険しい顔で俺だけを凝視しているのだ。
腕を組み、敵を討つかのような黄金眼と不機嫌な顔で睨んでいる。
なんかしたのだろうか……。
「はぁ……怖いな」
その言葉を発した瞬間、場は静まり返った。
やばっ……。
初めてのお喋りを達成しました
赤ちゃん成長ポイント5ポイントを獲得しました
所有している赤ちゃん成長ポイント:2005ポイント
称号:ステージ1 小さな不確かな命
皆、目を丸くし、口をあんぐりと開け、俺の方に釘付けだ。
やっと、興味を示したのか、身を乗り出し子供らしく驚いた顔をするサリバン。
「今喋った?」
「ふふふ……喋るなんて。サリバンは全くおかしなことを……だって、まだこの子は産まれたての赤ん坊なのですよ」
まずい……変な空気にさせてしまった……。
渾身の赤ちゃんスマイルでこの場をやり過ごそう。
「あひゃあひゃあひゃゃ」
どうだ!
「ただの空耳ですよ」
「えーうそ、しゃべったわ」
「サリバン、戯言を言うな! 赤ん坊が喋る訳なかろう!」
「……むっ……なによ……」
「父さん。サリバンの言う通り、シウスは言語を喋ったかもね。利口そうには見えないのにね~」
「エリオ! 馬鹿なことを言うな! 全く。それも、全て母であるユスア……お前の教育が悪いせいだぞ!」
「はいはい。分かっていますよ」
母を悪く言われると、厳格な父相手でも反抗するようだ。
「ちょっと、父様待ってよ! 母様は悪くないわ! 頭ごなしに母様を叱らないでよ!」
「ありがとうね、サリバン」
「何なんだお前ら……父に対して反抗するとはふんっ……もうよい。あとは廊下で仕えたメイドに任せる。ワシは商会共との用事があるからな」
「はい。お気をつけて、いってらっしゃいませ」
ウルギアは相変わらず不機嫌な態度で、部屋を出た。
親戚達は鬼が去ったとばかりに、やっと嘘の演技から解放されると言った風に溜め息をつきながら後に続いて出て行く、今度はメイド美少女達が入ってきて、ミルクやベビー衣服、強力吸収オムツなど運んだり、色々とせわしなく動き始める。
サリバンはベッドにだらんとし、髪を左右に揺らしながらごろんごろんとし、口を尖らせ、ブーブーと文句を垂れた。
「ねぇ母様なんかさいきんの父様……嫌い」
「そうね。きっと、お仕事で少し気が立っているのね」
「わたしのことをわるくいうのはいいけど、母様をわるくいうのは……ゆるせないっ」
「お母さんは全然気にしてないから、大丈夫よ」
「そんなのうそよ。わるくいわれても、へっちゃらな人なんていないわ! だって、わたしがわるいこといわれたら、むねがズンズンいたむもの!」
ユスアは俺を軽く揺らし、新緑が映る庭を窓越しに優しく見ながら、こう言った。
「お母さんは強いのよ。だから、大丈夫。それより、お父さんは色々と大変なの、だから、大目に見てあげてね。分かった? サリバン」
「……」
「ほら、サリバン……可愛いシウスも言ってるわよ」
サリバンは険しい表情で、俺の頬をゆっくりと触ったが、ぐいとつねられた。
痛っ! 痛いのは勘弁してくれ。
「サリバン、駄目よ!」
「ふんっ、可愛くないわ!」
ダダダダッと一人の少女は親戚達の中へ消えていった。
「サリバン、ストラノ、エリオ、こっちにおいで」
「……」
「この子が僕たちの弟になるんだね」
「可愛いね……」
「ほら、シウス、お兄ちゃんとお姉ちゃんだよ」
サリバンはどこか不満そうな赤色の両瞳で、近寄ろうとも、見向きもしない。
俺には興味がないらしい。別にいいのだが。
一方、エリオは無感動な片目で、俺のモチモチの頬や小さな指を触って、小さいねとか可愛いねとかわざとらしく言っている。ストラノは俺のベビー服をめくったり、足の指を強く握ったりと、嫌がることをしてくる。
「ねぇ……なんでこんなにちっちゃいのぉ?」
「あなたたちも小さかったのよ」
彼女達の指を握り返すと、
「あーにぎった」
「可愛いねぇ」
ストラノが掌を触ろうとする隙に抓ってこようとしたので、逆にストラノの指を強く握り、ぐにゃりとさせようとしたが、
「あーにぎった」
「可愛いわね」
倍の力で握られ手や指が痛い。指折れてるんじゃないか。明らかに普通の子供ではない。ストラノは面白くなってきたのか何回もやってくる。完全に俺はおもちゃ。
「こらこら、シウスで遊ぶじゃありませんよ」
「はーい」
何だこの痛い視線は。
父ウルギアが一定の距離を保ったまま、険しい顔で俺だけを凝視しているのだ。
腕を組み、敵を討つかのような黄金眼と不機嫌な顔で睨んでいる。
なんかしたのだろうか……。
「はぁ……怖いな」
その言葉を発した瞬間、場は静まり返った。
やばっ……。
初めてのお喋りを達成しました
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所有している赤ちゃん成長ポイント:2005ポイント
称号:ステージ1 小さな不確かな命
皆、目を丸くし、口をあんぐりと開け、俺の方に釘付けだ。
やっと、興味を示したのか、身を乗り出し子供らしく驚いた顔をするサリバン。
「今喋った?」
「ふふふ……喋るなんて。サリバンは全くおかしなことを……だって、まだこの子は産まれたての赤ん坊なのですよ」
まずい……変な空気にさせてしまった……。
渾身の赤ちゃんスマイルでこの場をやり過ごそう。
「あひゃあひゃあひゃゃ」
どうだ!
「ただの空耳ですよ」
「えーうそ、しゃべったわ」
「サリバン、戯言を言うな! 赤ん坊が喋る訳なかろう!」
「……むっ……なによ……」
「父さん。サリバンの言う通り、シウスは言語を喋ったかもね。利口そうには見えないのにね~」
「エリオ! 馬鹿なことを言うな! 全く。それも、全て母であるユスア……お前の教育が悪いせいだぞ!」
「はいはい。分かっていますよ」
母を悪く言われると、厳格な父相手でも反抗するようだ。
「ちょっと、父様待ってよ! 母様は悪くないわ! 頭ごなしに母様を叱らないでよ!」
「ありがとうね、サリバン」
「何なんだお前ら……父に対して反抗するとはふんっ……もうよい。あとは廊下で仕えたメイドに任せる。ワシは商会共との用事があるからな」
「はい。お気をつけて、いってらっしゃいませ」
ウルギアは相変わらず不機嫌な態度で、部屋を出た。
親戚達は鬼が去ったとばかりに、やっと嘘の演技から解放されると言った風に溜め息をつきながら後に続いて出て行く、今度はメイド美少女達が入ってきて、ミルクやベビー衣服、強力吸収オムツなど運んだり、色々とせわしなく動き始める。
サリバンはベッドにだらんとし、髪を左右に揺らしながらごろんごろんとし、口を尖らせ、ブーブーと文句を垂れた。
「ねぇ母様なんかさいきんの父様……嫌い」
「そうね。きっと、お仕事で少し気が立っているのね」
「わたしのことをわるくいうのはいいけど、母様をわるくいうのは……ゆるせないっ」
「お母さんは全然気にしてないから、大丈夫よ」
「そんなのうそよ。わるくいわれても、へっちゃらな人なんていないわ! だって、わたしがわるいこといわれたら、むねがズンズンいたむもの!」
ユスアは俺を軽く揺らし、新緑が映る庭を窓越しに優しく見ながら、こう言った。
「お母さんは強いのよ。だから、大丈夫。それより、お父さんは色々と大変なの、だから、大目に見てあげてね。分かった? サリバン」
「……」
「ほら、サリバン……可愛いシウスも言ってるわよ」
サリバンは険しい表情で、俺の頬をゆっくりと触ったが、ぐいとつねられた。
痛っ! 痛いのは勘弁してくれ。
「サリバン、駄目よ!」
「ふんっ、可愛くないわ!」
ダダダダッと一人の少女は親戚達の中へ消えていった。
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