品質操作スキルを貰って、異世界辺境領で慎ましく過ごしています

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1章辺鄙な領にて

30話また

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そして、俺はストラノに制止されながらも、ハイハイしながら、家を出て、怪しい人影を見たという門番小屋へ向かう。
 来て周囲を一通り歩くがやっぱり、誰もおらず、聞こえるのは風に揺れる林の擦過音。
 やっぱりいない。
 その時、ふふふという少女の愉快そうな笑い声とともに、視界が突如上昇し、くるりと回されると、そこには水色髪で、くるりとした羊の角を生やし、白黒のシックなワンピースを纏った美少女が紅の両瞳で笑みを浮かべていた。

「あれこの子……どっかで」

「大精霊様私をお忘れでしょうか?」

 いや、この幼く、可愛いらしく、純真で、従前の美少女見たことがあるし、知ってる。

「先日、花瓶の件では大精霊シウスフォード様には大変お世話になりましたラズレート=レゼミアです」

「あぁ! 学校の試験に落ちた女の子!」

「はいぃ……そうです……試験で落ちた女の者でございます」

「あっ、悪い」

「いや、気にしなくていいんですよ! 本当のことですし、現に今日も試験に落ちた帰りですから。学校も、バイト全部受かりませんでした」

「ははは。それは大変だな」

「私、本当に何の才能も無いんです。そもそも、アセドラ魔術第1学院の入学推薦だって。きっと人違いだったんです。地元の田舎の学校で通うつもりだった私に突然、その紙が送られてきた時は、本当に天にも昇る嬉しさでした。なにせ、低い使用人の身分で、貧しかったですから。学校を代表した入学推薦の知らせを聞いた家族のみんなはとーっても喜んで、また受かったわけではない合格だのと煽られて、貧しいながらも旅費を用意してくれたり、お祝いパーティーを開いてくれたり、盛大に見送ってくれました。幸せでした。ですが、二次の面接では簡単に受け答えをすれば合格だと言われ、ここまで出向いて来ましたが、蓋を開けて見たら、こんな散々なありさまで、不合格でした。入学推薦されなければ……」

 色々と恨みが積もっているようだ。

「でも、このままでは帰れません。旅費だって、魔術道具費だって両親が全部一生懸命働いて作ってくれたんですぅ!」

 そこまでしてくれた両親に、やっぱり不合格でしたなんて言えないわな。

「けど、やっぱり、どこも駄目でした。魔術の才能なんてありませんし、うちの家系は全員雇われの放牧民ですから。雑用全般なら難なくこなせます! いや、むしろ、得意なんですぅよ!」

「はは」

「だから、学校は諦めて、働き口を手当たり次第に受けているんですが、やっぱり駄目ですね……どこへ行っても受からないんですぅ」

「明るいし、可愛いし、真面目だし、受からないのが不思議だな」

「えっ……かわいい? 私、私が? ですかぁ!?」

「うん。なんか気弱そうだし、守ってあげたくなる感じだし、何より見た目が超絶可愛いよ」

 唐突に、レゼミアは俺を胸いっぱいに抱きしめ、顔を紅潮させる。

「あ、ありがとうございますぅぅ! 大精霊様にずっと付いてきます」

「ははは……いたいっ」

 この子はお世辞というものを知らないのか。

「高望みし過ぎなんじゃないか?」

「へ? してるんしょうか? ……でも、最低級職の馬番でも、雇ってもらえませんでした。やっぱり、全部だめだめなんですね私って」
 
 はにかんだ笑みを作る彼女はとても悲しく、絶望の縁にいるようだった。
 レゼミアは魔術才能は無いにしても、悪い女の子ではない、どこか入学できる学校や雇ってくるところがあってもいいはずだ、この異世界でも人手不足とどっかで聞いた。
 
「それで、今日は何かもが悲しくなって、ふと大精霊様のことを思い出して、また会えるかなと思いここに来てしまったんです」

 この家って勝手に入れるのか。

「今日は門番人がいなかったようだったので、入りやすかったです」

「はは」
 
 他人の家に勝手に入ることはなんとも思ってないようだ。

「あの……その……」

 レゼミアは急にもじもじし、何か言うか戸惑っている様子だ。

「ん? どうした?」
 
「えと、その、秘密基地見つけたんですよ」

「え? この家に秘密基地なんてあるのか?」

「そのあたりをふらふらしておりましたら、運良く見つけたんですよ」

「え? でも」

「いいじゃないですか、気分転換ですよ? こんなにいいお天気なんです、お部屋にいたら気分も暗くなっちゃいますし、もったいないですよ、行きましょうよ?」

「まあ、そうだな」


 
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