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2章魔術師学院(閑話)
20話冷静
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「なな……なによこれ……なんなのよ……あんた。こ、来ないでよ!! 叫んでやる! 叫んで、あんたを一生この学校から通えなくようにしてやるわ!」
「勝手に叫べばいい……それはお前の自由だ。それにこんなくだらないお前がいる学校に未練はない」
クロテアは何とか反撃しようと魔力を放出しようとしたが、またも魔力は消失し、背筋が凍る程に寒気が襲い、動作が止まり、手が震えた。
「だから、無駄だ」
俺は瞬時に移動し、銃口をクロテアの後頭部に向ける。
「今すぐ、先生に自分が犯した罪を言え」
「私が……誰だか分かっているのの……オルガネスト子爵家よ」
「これ以上、抗うならブリュンヒーゲル帝国の力でお前の子爵家を潰すぞ。お前はこの学校からだけじゃない、貴族階級から追放される、穢れた同族と共にな」
「なな……ブリュンヒーゲルスって、上層の十魔王家じゃない……嘘よ、ふふふ……そんな嘘で私を騙せると思ってるの! 舐めるんじゃないわ」
その時、後ろ向きにも関わらず、クロテアの巧みな手捌きで、手刀が下から伸びる。
しかし、【重力制御】レベルEX100によって手刀はするりと宙に浮き、右側の壁に一瞬で衝突し、更にバンッと弾丸を発射し、クロテアは倒れた。
「あああああ…………」
「空弾だ安心しろ」
*
「世界には十魔王家、上流公爵家、侯爵家、一般人の身分制度があることは知ってるな……十魔王家は世界の選ばれし一族で、それぞれの王国で絶大的な権力を……」
白騎士暴走事件から1ヶ月余りに経ってしまった。
その後、クロテアを含めたその他10名の生徒は校長室に呼ばれ、こっぴどく叱られクロテア以外の生徒は退学を言い渡された。
当のクロテアは10日程度の自宅謹慎で済み、今は復帰している。
けれど、同級生達のクロテアに対する風当たりは強く、強い言葉で罵倒されたり、陰口を叩かれたりしていた。
もっとも、フレスファン、今は自称フレス親衛隊になった男達は退学を掲げたプラカードでクロテアに抗議していた。
すると、チャイムの音が2時限の魔法世界学の授業の終了が告げられる。
肩が疲れて伸びをする。
さて、お昼だし、食堂に行くか。
椅子から立ち上がり、教室を出て、廊下を歩いていく。
後ろから急ぎ足で駆ける音がする。
振り向くと、そこにはフレスがいた。
髪を弄りながら、顔を赤らめている。
「どこに行くの?」
「食堂だけど」
「私も行きたいっ」
「ああ……行こう」
「あの時は本当にありがとう」
「別に俺は大したことはしてない」
「それで、ゼルフォード君にお礼がしたいの」
「いや、いいって」
「駄目だよ。そんなの……ここまでしてもらって、礼の一つもしないなんて、私そんな礼儀知らずにはなりたくない」
「本当に大丈夫だから」
「何でも言ってっ……そのデートとか……」
フレスは俺の腕を引っ張り、近くにあった人気の無いの隅に誘導し、自らの柔らかい胸に抱き寄せる。
「……こういうのとかも好きでしょ?」
だから、それは俺には刺激が強すぎる。
「……ゼルフォード君だったら……いいよ」
いいよってどういう意味なんだ?
「フレス……」
エメラルドの双眸に見つめられ、思わず声が震えてしまう。
「ゼルフォード君は好きな人はいるの?」
近い……。
意識してしまうと、やはりフレスは可愛い。
髪を掻き分けると、仄かなシャンプーの香りがする。
柔らかい感触、じわじわと生暖かい温もりが感覚を刺激する。
艶めかしい息づかいが聞こえる。
この展開は……だんだんと近づいてくる甘美な唇。
その時、クロテアが現れた。
勝ち気さはどこにもなく、暗い影が見え、目の下に隈、酷く狼狽した様子。
「ちょっといいかしら……」
「クロテア……良く私達の前に現れることができるねっ」
「そうね……言いたいことがあって来たの。フレスさん……怪我をさせて本当にごめんなさい。そして、濡れ衣や酷い言葉を使ったことも本当にごめんなさい……本当にごめんなさい……本当にごめんなさい」
クロテアが泣きながら謝ったことは驚きだった。
けれど、彼女のやったことはそう簡単に許せるものではない。
「お前のやったことは許されない。もしかしたら、フレスが魔術師が出来ない身体になっていたらどうするんだ? 謝るだけじゃ、済まなかったかもしれない」
「謝って済むとは思っていないわ……償いをさせてもらうわ」
意外にもフレスは不満げではあるが、謝罪を受け止めた様子だった。
「そう。なら、償ってもらうから、私だけじゃなくて、ゼルフォード君にも」
・
「ゼルフォード……新入生による模擬戦のことを知ってるか?」
クールぶった表情のドワーフの少年ウディがそう言って話し掛けてきた。
「ああ……なんとなくは」
模擬戦。
魔術による闘い。
種目は個人戦《ソロ》トーナメント戦、団体戦が行われる。
個人戦についてはAクラス生徒30名全員出場可能。他クラスは代表者1名のみ。
団体戦は全クラス対象。
Aクラスは三組出場可能。他クラスは一組のみ。三人一組。
実際のダンジョンでの対人戦を想定した戦い。
フィールドはゲーム世界。
それぞれの生徒にライフポイントが設定され、相手のライフポイントをゼロにすれば勝利する。
ダメージによるライフポイントの減少はスーパーコンピューター独自の評価による。
ゲーム上であるため、ある程度、身体によるダメージが軽減される。
武器や道具、魔術使用可能。
ただし、相手を死傷されることは禁止。
この大会は、あくまで、殺し合いではなく、対人同士で決闘になった場合を想定した大会なのだ。
「勝手に叫べばいい……それはお前の自由だ。それにこんなくだらないお前がいる学校に未練はない」
クロテアは何とか反撃しようと魔力を放出しようとしたが、またも魔力は消失し、背筋が凍る程に寒気が襲い、動作が止まり、手が震えた。
「だから、無駄だ」
俺は瞬時に移動し、銃口をクロテアの後頭部に向ける。
「今すぐ、先生に自分が犯した罪を言え」
「私が……誰だか分かっているのの……オルガネスト子爵家よ」
「これ以上、抗うならブリュンヒーゲル帝国の力でお前の子爵家を潰すぞ。お前はこの学校からだけじゃない、貴族階級から追放される、穢れた同族と共にな」
「なな……ブリュンヒーゲルスって、上層の十魔王家じゃない……嘘よ、ふふふ……そんな嘘で私を騙せると思ってるの! 舐めるんじゃないわ」
その時、後ろ向きにも関わらず、クロテアの巧みな手捌きで、手刀が下から伸びる。
しかし、【重力制御】レベルEX100によって手刀はするりと宙に浮き、右側の壁に一瞬で衝突し、更にバンッと弾丸を発射し、クロテアは倒れた。
「あああああ…………」
「空弾だ安心しろ」
*
「世界には十魔王家、上流公爵家、侯爵家、一般人の身分制度があることは知ってるな……十魔王家は世界の選ばれし一族で、それぞれの王国で絶大的な権力を……」
白騎士暴走事件から1ヶ月余りに経ってしまった。
その後、クロテアを含めたその他10名の生徒は校長室に呼ばれ、こっぴどく叱られクロテア以外の生徒は退学を言い渡された。
当のクロテアは10日程度の自宅謹慎で済み、今は復帰している。
けれど、同級生達のクロテアに対する風当たりは強く、強い言葉で罵倒されたり、陰口を叩かれたりしていた。
もっとも、フレスファン、今は自称フレス親衛隊になった男達は退学を掲げたプラカードでクロテアに抗議していた。
すると、チャイムの音が2時限の魔法世界学の授業の終了が告げられる。
肩が疲れて伸びをする。
さて、お昼だし、食堂に行くか。
椅子から立ち上がり、教室を出て、廊下を歩いていく。
後ろから急ぎ足で駆ける音がする。
振り向くと、そこにはフレスがいた。
髪を弄りながら、顔を赤らめている。
「どこに行くの?」
「食堂だけど」
「私も行きたいっ」
「ああ……行こう」
「あの時は本当にありがとう」
「別に俺は大したことはしてない」
「それで、ゼルフォード君にお礼がしたいの」
「いや、いいって」
「駄目だよ。そんなの……ここまでしてもらって、礼の一つもしないなんて、私そんな礼儀知らずにはなりたくない」
「本当に大丈夫だから」
「何でも言ってっ……そのデートとか……」
フレスは俺の腕を引っ張り、近くにあった人気の無いの隅に誘導し、自らの柔らかい胸に抱き寄せる。
「……こういうのとかも好きでしょ?」
だから、それは俺には刺激が強すぎる。
「……ゼルフォード君だったら……いいよ」
いいよってどういう意味なんだ?
「フレス……」
エメラルドの双眸に見つめられ、思わず声が震えてしまう。
「ゼルフォード君は好きな人はいるの?」
近い……。
意識してしまうと、やはりフレスは可愛い。
髪を掻き分けると、仄かなシャンプーの香りがする。
柔らかい感触、じわじわと生暖かい温もりが感覚を刺激する。
艶めかしい息づかいが聞こえる。
この展開は……だんだんと近づいてくる甘美な唇。
その時、クロテアが現れた。
勝ち気さはどこにもなく、暗い影が見え、目の下に隈、酷く狼狽した様子。
「ちょっといいかしら……」
「クロテア……良く私達の前に現れることができるねっ」
「そうね……言いたいことがあって来たの。フレスさん……怪我をさせて本当にごめんなさい。そして、濡れ衣や酷い言葉を使ったことも本当にごめんなさい……本当にごめんなさい……本当にごめんなさい」
クロテアが泣きながら謝ったことは驚きだった。
けれど、彼女のやったことはそう簡単に許せるものではない。
「お前のやったことは許されない。もしかしたら、フレスが魔術師が出来ない身体になっていたらどうするんだ? 謝るだけじゃ、済まなかったかもしれない」
「謝って済むとは思っていないわ……償いをさせてもらうわ」
意外にもフレスは不満げではあるが、謝罪を受け止めた様子だった。
「そう。なら、償ってもらうから、私だけじゃなくて、ゼルフォード君にも」
・
「ゼルフォード……新入生による模擬戦のことを知ってるか?」
クールぶった表情のドワーフの少年ウディがそう言って話し掛けてきた。
「ああ……なんとなくは」
模擬戦。
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種目は個人戦《ソロ》トーナメント戦、団体戦が行われる。
個人戦についてはAクラス生徒30名全員出場可能。他クラスは代表者1名のみ。
団体戦は全クラス対象。
Aクラスは三組出場可能。他クラスは一組のみ。三人一組。
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フィールドはゲーム世界。
それぞれの生徒にライフポイントが設定され、相手のライフポイントをゼロにすれば勝利する。
ダメージによるライフポイントの減少はスーパーコンピューター独自の評価による。
ゲーム上であるため、ある程度、身体によるダメージが軽減される。
武器や道具、魔術使用可能。
ただし、相手を死傷されることは禁止。
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