時空魔術操縦士の冒険記

一色

文字の大きさ
3 / 175
1章魔戦操縦士学院

3話厄介な人再登場

しおりを挟む
 弱々しいドワーフはおどおどし頭を抱える。
 本当か?

「だから僕じゃないです!」

 金髪少女はどちらが犯人か分からず、俺とドワーフを交互に見て困惑している。
 なんで助けに来た俺が犯人扱いされているだろう。
 金髪少女は可愛い笑顔を向け、耳元で囁く。

「あなたが盗ったなら財布出してっ?」

「だから俺は盗ってねーよ。この場を治めようとしただけだ」

「そっか。なら早くそれを言ってよ!」

 金髪美少女は正義の顔で、三人組達に再度立ち向かった。

「この二人盗ってないって言ってるし、盗った場面も目撃した訳じゃないなら犯人扱いをするのはおかしいよ」

 赤髪の男は金髪少女を睨みつけ、苛立ち露わに足をドン踏み鳴らす。

「近くにいたんだ。疑わしきは罰せよって言葉もあるだろう!」

 違げぇーよ。疑わしきは罰せずだろそれ。
 すると。

「ったく、使えないわね。私は見てたのよ!」

 目撃者がいたようだな。全てぶちまけろ!
 やっぱりなあの坊主男が犯人だったか、見た目からしてそんな気がしてたよ。
 
 左隣にその声の主がやってきた。
 黒の後ろ髪は膝まである、美少女。白肌の容姿端麗。種族はハーフエルフ。
 暗い紫瞳は冷静さが現れる。

「お前が見てたのかよ」

 さっき俺の肩を骨折させようとしたクレイジー女じゃん。
 

    不良の三人組は一瞬驚きの表情を見せ、一方黒髪美少女は話を続ける。
 先生に告げ口をする委員長のような生徒。
 勝ち気な、正義感溢れる性格が表情から滲み出ている。

「私は見てたわ。そこの机の上にあった財布を赤髪の男がポケットにしまうのをね」

 赤髪の男は額に汗が垂れ、語気を荒げる。

「何でたらめなこと言ってんだ!!」

「証拠ならあなたの制服の内側のポケットにあるはずよ」

「くっ……」

 そして、三人組は歯を食い縛り、言い逃れが出来ないと思ったのか、俺達を睨みつけて去っていった。
 一時間経ったチャイムが鳴る。
 周囲の野次馬も乱闘しないのかよといった表情で、溜め息をつき、教室へと戻っていく。
 そして、黒髪美少女ハーフエルフ、金髪美少女、ドワーフも足早に散っていく。

 Fクラスの教室に入り、自らの席へと向かう。
 何の変哲もない白い教室をキョロキョロと見渡していく。

「確か……掲示板には一番左隅の最後列だったな」

 突如として、校内放送が鳴り響いた。

「え……今すぐFクラスは授業のため、校庭に来なさい」

 戸惑う生徒達。緊張のクラス発表の次はいきなり授業が重なり、動揺せざる負えない。
 そして、ぞろぞろと教室を出て、校庭へ向かう生徒達。

 やがて、広大な楕円形の、緑の芝生、整備された砂地が広がる。
 すると、一人の男が言い付け通りに、皆に呼びかける。

「とにかく体操しとくようにと」 

「はぁ? 体操服なんてないんだぞ!」

「仕方ないじゃないか! 先生がそう言ったんだ!」
 生徒達は不満を口にしながら、やる気のない体操をする。
 そこで、右隣で聞き覚えのある声がする。

「まさかあなたと一緒になるなんて最悪だわ」

 顔を右に向けるとそこには先程俺をいじめ現場に行かせ、しまいには殴られるという結果を招いた張本人。
 通称クレイジー女。ただ、俺がそう呼んでます。
 黒髪の超絶美少女。
 ハーフエルフ。
 その冷淡な目は魅惑的オーラを放っている。

「お前……何でここにいるんだ」

「何でって言われてもFクラスなんだし仕方無いじゃない」

「お前俺に恨みでもあるのか?」

「恨みなどないけど。お前って言われるの凄い不愉快だから止めてくれる?」

「それは悪かったな。じゃ名前教えてくれ」 

「あなたには教えたくないわ。仲良くなりたくないし」

 何この冷たい態度。一年間仲間として過ごすというのに初日からこの無礼な態度は何だ。
 でも、仲間は大切にしたいとな。ここは慎重に関係を築こう。

「まあまあそんなこと言うなよ。俺はトーマス・アル。よろしく」

 少女は溜息をつく。
 深い深い息。

「アルね。私はユークリウス・マシュ。よろしく」
 
 

 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル 異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった 孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。 5レベルになったら世界が変わりました

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身、動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物や魔法、獣人等が当たり前に存在する異世界に転移させられる。 彼が送るのは、時に命がけの戦いもあり、時に仲間との穏やかな日常もある、そんな『冒険者』ならではのスローライフ。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練とは如何なるものか。 ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜

るあか@12/10書籍刊行
ファンタジー
 僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。  でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。  どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。  そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。  家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。

処理中です...