時空魔術操縦士の冒険記

一色

文字の大きさ
39 / 175
1章魔戦操縦士学院

39話風呂閑話

しおりを挟む
「仲睦まじいですな」

「どこがだよ。カバーニはおとなしくならないのか」

「まあそうですな」

 俺はカバーニの文句を口にし、湯船に腰を落として、顔まで浸かる。何もかも忘れるように。
 そして、湯船から顔を出す。

「くはっ……合宿が始まる……ああ嫌だ嫌だ」

「食らいついていくしかないですな」


            *


 
 その頃、女子の大浴場では、湯煙が辺りに漂う。
 マシュは艶のある長い黒髪を泡で丁寧に洗い、表情は赤らめ、どこか明るい。
 鼻歌も混じりながら、シャワーで全身の綺麗な肢体を洗い流す。
 全身の疲れが癒えてくる。 彼女は大きく息を吐く。

「ふっーーー」
 
 隣ではリオラがシャワーを浴び、金髪を揺らし、お湯で泡を取り除く。
 リオラは熱さで顔を赤らめ、マシュに声を掛ける。
 マシュは一瞬びっくとし冷静に応答する。

「気持ちいいねっ」

「えっ? そうね」

「そういえばアイリスちゃんが露天風呂に行こうって言ってたよ」

「そう」

「行こうよ?」

「行かないわ」

 そんな短い会話をした後、リオラはマシュの左腕を強引に掴む。

「行くのっ!」

「ちょっとと……もう」

 リオラの胸の感触を感じ、それに嫉妬を覚えつつも、マシュは露天風呂へ。
 外は暗く、森林が不気味に揺れている。天井には明かりがあるだけ。
 湯も熱く、湯煙が漂う。
 すでにアイリスは湯船に浸かりながら、豊かな胸が下から浮き上がってくるのタオルで恥ずかしながら隠そうとしている。
 リオラも勢い良く「バッジャン!!」と音を立たせながら湯船の中に入る。
 静かにマシュも後から続き、陽気な声で、両手で伸びをする。

「気持ちいいっ!」

「そうね」

「ああ……ですね!」

 マシュ、アイリスは頷く。

             *
風呂場の扉を開けた瞬間、湯煙が俺の顔を刺激する。
 周りを見渡すと、中はとても広く。高級感溢れる温泉。
 風呂場というより大浴場。眩い光が周りを照らす。
 大きな窓から見えるのは闇のような真っ黒。
 俺はタオル片手、床の大理石の断熱の感触を足に感じながら、シャワーへ。
 ロンも周りの光景にキョロキョロと見渡す。

「これはこれは……いい風呂ですな」

 ロンがお爺さんのような口調で一言。
 なんか可愛い。
 俺は上から降ってくるシャワーの湯を浴びる。
 今日一日疲れが吹っ飛んでいく。

「ザーッ!!! ふぁ~あああああ」

 頭から体まで洗い流す。一通り洗い終わる。
 俺はすぐさま湯船の中へ。
 ん?
 ばじゃばしゃばしゃと広い浴場の中で全力で犬掻き? 
 平泳ぎ? 
 をしている奴がいた。
 ここは泳ぎ場じゃねーよと突っ込みたくなる。
 そいつは数秒潜って、顔出す。
 濡らした茶髪の少年。

「アル、めっちゃ気持ちいいで。はよ入れや」

 興奮気味なつり目で犬顔のカバーニだった。

「泳ぐな! 湯が汚れるだろうが」

「そんな細かいこと言うなや」

「マナーを守れ!」

「3人しかいねーやろうが」

「人数じゃねーよ。マナーの問題だ!」

 湯船の中で言い合いになる俺とカバーニ。
 カバーニは肩を俺にぶつけて押し飛ばす。

「ザパァァァァァァァ!!!!!」

 俺は音を立てながら湯船の中に、溺れそうになるもすぐさま立ち上がる。
 怒りの表情に変わる。

「何すんだ!!」

 俺も反撃とばかりにやり返し、カバーニを湯船の中に突き飛ばす。
 カバーニも負けじと突き飛ばす。

「……やりやがったな」

 何度か互いにに湯船に押し飛ばし合いをする。
 もうめちゃくちゃで、何が何だか分からない。

「なんだよ!!!!!!」
 
「てめぇ!!!!!!」

 そしては俺は湯船の中から顔を出すと、カバーニは目の前におらず、飽きたのか平泳ぎしながら向こうへ行った。
 

「あいつ……ふざけんな」


 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...