時空魔術操縦士の冒険記

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2章ダンジョンへ向かおう

古代魔戦

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「馬鹿な……」

 そして、ジャックはシャルマンに秘密を教える。
 驚愕するシャルマン。
 ランスロット・パラディンは動きを止め、そしてジャックは鎖に縛られたまま、古代魔戦に向かって詠唱する。

「汝《なんじ》に魔力を与える……我が魔力を……偉大なる異世界神の魔力と血を……」

「!?」

 ジャックから青い魔力が放たれ、眩い閃光が発生し、放たれた魔力は古代魔戦の頭部に直撃。
 黒い一つ目から青い眼が光り、動き出す巨岩の体躯。
 周りの砂岩が崩れ、ガガガガガガガガガガという地鳴りが発生し、ランスロット・パラディンは振動で崩れ落ち、ジャックを縛っていた鎖を放してしまう。
 ジャックは首をポキポキと揺らしながら、巨岩の魔戦の肩に乗る。
 シャルマンは叫ぶ。

「待て!!!!」

「また会う機会もあるザス」

 巨岩と奇怪な怪人は天井を貫き、漆黒の空に飛んで行く。
               *
  

 地上に出るとドラゴンやコブリンや狒狒《ヒヒ》はいなくなって、俺達や国民はデイトナ王国付近の山の丘に避難することができた。
 女、子供の泣き声が聞こえ、何万人規模の避難者だ。
 白騎士やその他の魔戦らは国民の救出に向かっている。
 黒こげの街並み、一部の民家や建築物はなんとか残っている。
 しかし、明日から国としての機能は果たせないだろう。
 ドラゴンや騎士や国民の亡骸が無造作に散らばった無惨な後光景。地面や、数々の亡骸の頭部には槍や刀が無数に刺さっている。
 まるでララナ村と同じだ。
 俺はその場にいたのに、またしても止められず、犠牲者を出してしまった。
 俺は歯を食い縛る。
 ミユミユやカナブンバッタは疲れて、ポケットで眠り、リオラ、アイリス、マシュも、草原で寝そべっていた。
 三人とも服は裂けて、胸や脚や腹が露わになり、美しい肌にかすり傷が多々見受けられる。
 一方、カバーニは草原の地に拳で何回も何回も殴り続けた。
 悔しく悔しくてしょうがないのだろう。
 ララナ村と同じような結末になってしまったことに。
 止められなかった己の弱さにも。
 シャルマンは茫然自失で前を見据える。
 この男も明らかにおかしかった。
 俺が話掛けて何も答えようとしないし。
 ジャックと何があったのか。
 すると、白いウルフの男と鷲のような顔の男がやってくる。
 ウルフマンとグリフォンズは険しい表情。
 ウルフマンは鋭く睨む。

「シャルマン……てめぇ……ジャックを逃がしやがるとはな」

「……」

「本当に気に食わない奴だぜぇ」

「ウルフマン……もう良かろう……ジャックは我々ではどうしようもできない」

「だけどよぉ?」

「シャルマン……中層から連絡が入った……即時に下層の安定を図れとな」

 腕を組みながら、グリフォンズは鋭い目で訴える。
 正気に戻れと。
 シャルマンは俯きながら、返答する。

「分かっています」

「下層で絶大権力を誇っていた……デイトナ王国が壊滅したとなると……下層の不安定化をもたらす……異世界神の暴走や凶悪ギルドの反乱、犯罪者が多発する」 

「だが、デイトナ王国ではもう下層を取り仕切る事は難しい……まして十魔王族など無理だ」

「そうだ……中層の王国に拠点を移し、下層を取り仕切る。もちろん十魔王族も続行だ」

「そんな国があるんですか?」

「現在、王が不在。もちろん国として機能も大国並みだ。デイトナの国民を受け入れる用意もある。シャルマン? お前はそれぐらいは知っていていいはずだ」

「はい」

「まあ……お前は今正気ではないようだな」

 グリフォンズは厳しい姿勢は変わらない。
 シャルマンは目を細めながら、身を正した。

「……国王総選挙をしなければいけません」

「すぐさま召集を掛けろ」

「はい」
 
 
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