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2章英雄と龍魔王

突然の英雄との決闘

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 敵意の視線が向けられたアタマカラ。
 紺色髪の英雄の殺気は凄まじい同心円状の水の魔力に変貌を遂げ、あっという間に薄い水が構築され、微弱に波を打ち、途中で止まった。
 強烈な青眼で立ち上がり、睨み、青剣を抜いて、問う。

「貴様、魔獣だな」

「……」

 気づかれたか。
 相手は本気で殺そうとしている。
 おそらく、返答次第で、次の展開が変わるだろう。

「もしかしたら、間違いかもしれない。慈悲深い僕は君に一時の潔白の証明の機会を与えよう……その白い頭部の仮面を今すぐ取れぇぇぇぇぇ!」

 ルークは激しい怒気を籠もらせ、問いただす。
 アタマカラは仮面を手に触れるが、戸惑いを露わにする。
 どうする?
 ここで、あのミイラのような顔を見せたら、必ず殺されるだろう。
 すると、イリスはアタマカラを庇い、剣を抜こうと手に取る。
 以前の感情の無い、儚げなイリスではない、戦い意志を持ったルビーの宝石が光を放つ。

「大丈夫、私が守るから」

「イリス……」

 アタマカラは勇敢な彼女の姿に魅れ、固まってしまう。
 一方、ルークはその光景に増幅するわだかまりを何とか抑える。

「イリス様……僕はこの件に関しては見逃すことはできません。英雄道に関わる。英雄は魔獣の屍を踏んで、今まで厳しい修行、鍛錬を行って生きてきた。たとえ、あなたが立ちふさがっても、僕は矛を治めるつもりはない……」

「それで良い。私は友人のために戦う」

「し……しかし。僕はあなたと敵対したいのではない」

 やはり、敵意を向け、高圧な態度を取っているもの、動揺しているのは確からしい。
 アタマカラも急遽作って貰った白い剣を取った。

「これは俺の戦いかもしれない」

「え?」

 心配の紅の両眼でこちらをじっと見つめるイリス。
 もっとも、アタマカラとルークには彼女を危害に曝されるのは、回避したいという共通認識は一致しているの確か。
 その気持ちを汲み取ったか定かではないが、ルークがある提案をする。

「ならば、貴様と僕の1対1の戦いをするとしよう。貴様が勝てば、今回の件は無かったことにしよう。もちろん、負ければ、僕がここで貴様を殺す」
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