1 / 32
プロローグ:鎖を自ら求める雌奴
しおりを挟む
窓の外は、もうとっぷりと闇に包まれている。
店を閉めてから数刻。辺境の小街特有の、静けさに沈み込むような夜だ。
この街には、人の罪と欲が澱のように溜まっているが、それを覆い隠す夜の帳は、常に厚い。
油の染み込んだ埃っぽい臭いと、微かに鼻腔をくすぐる上質な香油の匂いだけが漂う、この二階の私室こそが、俺、ヴァリスの玉座だ。一階が店舗。この二階は俺の生活空間、そして、俺の飽くなき欲望を満たす調教の場だ。
痩身の体躯にかけた眼鏡越しに、暖炉の火に照らされるミランダを見る。 16 歳の華奢な雌奴隷。俺が奴隷商人から 80 銀貨という破格で買い上げ、そして『調愛の首輪』という名の付与術で完全に支配下に置いた、完璧な人形だ。
「ヴァリス様、お疲れではございませんか」
ミランダは跪き、俺の足元に頬を寄せてくる。肉付きは薄いが、その瞳に宿る熱だけは、年頃の娘の誰にも負けない。いいや、誰にも持てない。それは、彼女が俺を神か救世主と信じ込んでいる盲信の熱だ。
俺は言葉を発せず、ただ優雅に、火酒を呷った。口内に広がる灼熱感が、この穏やかすぎる日常への苛立ちを少しだけ鎮めてくれる。その沈黙が、彼女の不安を煽る。
「あの…もし、何かご不満な点がございましたら、何なりとお申し付けくださいませ。ミランダは、ヴァリス様のご命令とあれば、いかなる事も…」
「いかなる事」か。その謙虚で純粋な響きが、俺の支配欲をくすぐる。
元々、虐げられた奴隷だ。多少の愛情と優しささえ見せれば、忠誠は得られただろう。だが、俺は確実性を好む。何よりも、強固な魔術によって精神を縛りつけ、それを純粋な愛情だと錯覚させるこの過程に、最高の優越感を覚える。意志の自由を奪い、魂の奴隷と化す。これこそが、俺の付与術の真骨頂であり、生の愉悦だ。
俺はグラスを傍らの机に置き、その細い顎を指先で掬い上げた。
「ミランダ。お前は今日、店の掃除を完璧にこなした。食事も美味かった。不満などあるはずがないだろう。むしろ、褒美をくれてやらねばな」
彼女の顔が、悦びと期待に濡れる。この瞬間だ。この依存と絶対的な服従に満ちた瞳を、俺は愛している。安定した支配は、俺の権能を証明してくれる。
俺はゆっくりと立ち上がり、彼女の華奢な肩を掴み、その場に寝かせつける。
「褒美だ。今夜は『奉仕の姿勢』で俺の愛を受け入れろ。お前が、俺の全てを満たすのだ」
彼女の瞳が一瞬大きく見開かれ、そしてすぐに情欲と歓喜の熱を帯びた。その反応は、訓練された獣よりも、あるいは完璧な人形よりも忠実だ。
「はい、ヴァリス様…っ。ミランダは、ヴァリス様のお体と、心を満たすためだけに存在しています…っ」
彼女は自ら、普段は使用しない専用の拘束具を棚から取り出した。それは、彼女が奴隷時代に受けた傷や、不当な扱いの記憶を呼び起こすように、冷たい金属の光を放つ。彼女にとって、これは隷属の証であり、愛の証なのだ。自ら鎖を求める奴隷。この歪な関係こそが、俺の望む理想形だ。
俺は、彼女の薄い身体に触れる。わずかに肉付きの薄い胸元、白い肌、そして純粋な心。その全てが、今や俺という腐敗した野心に捧げられている。ミランダの身体は、俺の触れる場所全てに、過剰なまでの反応を示す。それは魔術による強制力もあるが、何よりも「神」に奉仕する歓びに他ならない。
俺の指先が、彼女の薄い胸の先端に触れるだけで、彼女の呼吸は乱れ、喉の奥から甘い呻きが漏れる。
「よくやった、ミランダ。お前は、俺の最高の雌奴隷だ」
俺の言葉に、彼女の身体は微かに震え、その目尻に幸福の涙が滲む。この夜もまた、俺の支配は絶対であることを、彼女の肉体と精神に深く刻み付けるのだ。快楽と服従は、こうして蜜と毒の如く、深く混じり合っていく。
だが、どれだけ調教しようと、ミランダの完全な献身は、俺の退屈を完全に埋めることはできない。
俺が本当に欲しいのは、抵抗だ。誇りだ。清廉さだ。
「ああ…そろそろ、新しい獲物が必要な頃合いだ…」
俺はミランダの熱に溺れながら、冷酷にそう呟いた。この小街に、俺の渇きを満たすに足る、純粋で美しい標的が現れることを、俺は静かに待ち望んでいた。
(プロローグ了)
店を閉めてから数刻。辺境の小街特有の、静けさに沈み込むような夜だ。
この街には、人の罪と欲が澱のように溜まっているが、それを覆い隠す夜の帳は、常に厚い。
油の染み込んだ埃っぽい臭いと、微かに鼻腔をくすぐる上質な香油の匂いだけが漂う、この二階の私室こそが、俺、ヴァリスの玉座だ。一階が店舗。この二階は俺の生活空間、そして、俺の飽くなき欲望を満たす調教の場だ。
痩身の体躯にかけた眼鏡越しに、暖炉の火に照らされるミランダを見る。 16 歳の華奢な雌奴隷。俺が奴隷商人から 80 銀貨という破格で買い上げ、そして『調愛の首輪』という名の付与術で完全に支配下に置いた、完璧な人形だ。
「ヴァリス様、お疲れではございませんか」
ミランダは跪き、俺の足元に頬を寄せてくる。肉付きは薄いが、その瞳に宿る熱だけは、年頃の娘の誰にも負けない。いいや、誰にも持てない。それは、彼女が俺を神か救世主と信じ込んでいる盲信の熱だ。
俺は言葉を発せず、ただ優雅に、火酒を呷った。口内に広がる灼熱感が、この穏やかすぎる日常への苛立ちを少しだけ鎮めてくれる。その沈黙が、彼女の不安を煽る。
「あの…もし、何かご不満な点がございましたら、何なりとお申し付けくださいませ。ミランダは、ヴァリス様のご命令とあれば、いかなる事も…」
「いかなる事」か。その謙虚で純粋な響きが、俺の支配欲をくすぐる。
元々、虐げられた奴隷だ。多少の愛情と優しささえ見せれば、忠誠は得られただろう。だが、俺は確実性を好む。何よりも、強固な魔術によって精神を縛りつけ、それを純粋な愛情だと錯覚させるこの過程に、最高の優越感を覚える。意志の自由を奪い、魂の奴隷と化す。これこそが、俺の付与術の真骨頂であり、生の愉悦だ。
俺はグラスを傍らの机に置き、その細い顎を指先で掬い上げた。
「ミランダ。お前は今日、店の掃除を完璧にこなした。食事も美味かった。不満などあるはずがないだろう。むしろ、褒美をくれてやらねばな」
彼女の顔が、悦びと期待に濡れる。この瞬間だ。この依存と絶対的な服従に満ちた瞳を、俺は愛している。安定した支配は、俺の権能を証明してくれる。
俺はゆっくりと立ち上がり、彼女の華奢な肩を掴み、その場に寝かせつける。
「褒美だ。今夜は『奉仕の姿勢』で俺の愛を受け入れろ。お前が、俺の全てを満たすのだ」
彼女の瞳が一瞬大きく見開かれ、そしてすぐに情欲と歓喜の熱を帯びた。その反応は、訓練された獣よりも、あるいは完璧な人形よりも忠実だ。
「はい、ヴァリス様…っ。ミランダは、ヴァリス様のお体と、心を満たすためだけに存在しています…っ」
彼女は自ら、普段は使用しない専用の拘束具を棚から取り出した。それは、彼女が奴隷時代に受けた傷や、不当な扱いの記憶を呼び起こすように、冷たい金属の光を放つ。彼女にとって、これは隷属の証であり、愛の証なのだ。自ら鎖を求める奴隷。この歪な関係こそが、俺の望む理想形だ。
俺は、彼女の薄い身体に触れる。わずかに肉付きの薄い胸元、白い肌、そして純粋な心。その全てが、今や俺という腐敗した野心に捧げられている。ミランダの身体は、俺の触れる場所全てに、過剰なまでの反応を示す。それは魔術による強制力もあるが、何よりも「神」に奉仕する歓びに他ならない。
俺の指先が、彼女の薄い胸の先端に触れるだけで、彼女の呼吸は乱れ、喉の奥から甘い呻きが漏れる。
「よくやった、ミランダ。お前は、俺の最高の雌奴隷だ」
俺の言葉に、彼女の身体は微かに震え、その目尻に幸福の涙が滲む。この夜もまた、俺の支配は絶対であることを、彼女の肉体と精神に深く刻み付けるのだ。快楽と服従は、こうして蜜と毒の如く、深く混じり合っていく。
だが、どれだけ調教しようと、ミランダの完全な献身は、俺の退屈を完全に埋めることはできない。
俺が本当に欲しいのは、抵抗だ。誇りだ。清廉さだ。
「ああ…そろそろ、新しい獲物が必要な頃合いだ…」
俺はミランダの熱に溺れながら、冷酷にそう呟いた。この小街に、俺の渇きを満たすに足る、純粋で美しい標的が現れることを、俺は静かに待ち望んでいた。
(プロローグ了)
0
あなたにおすすめの小説
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない
二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。
ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。
当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。
だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。
――君の××××、触らせてもらえないだろうか?
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜
桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。
上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。
「私も……私も交配したい」
太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる