『隷属の付与術師~白濁と悦楽に沈む乙女達~』

ナイトメア・ルア

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第一章:獲物と番犬~二つの純粋を穢す調律~

第八話:番犬の怒りと絶望

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予感は的中した。

三日後、リーゼが再び「愛の密会」へと向かう夜。俺は二階の窓の隙間から、その光景を静かに観察していた。

リーゼは、周囲を過度に警戒しながら、裏通りへと足を踏み入れた。その様子は、罪を犯す者のそれだ。清廉な治癒師の魂は、既に背徳の蜜に慣れきってしまったらしい。

そして、その影を追う者がいる。

重装甲を脱ぎ捨て、黒いマントを纏ったイザベラだ。彼女は闇に溶け込もうと必死だが、その鍛え上げられた体躯と、隠しきれない騎士としての気迫が、彼女の存在をかえって際立たせている。

その愚直な正義感が、哀れで、そして愛おしい。彼女は今、自分の友情を裏切ったリーゼへの悲しみと、そのリーゼを狂わせた魔術師への怒りで、胸を張り裂けさせているだろう。

リーゼは、裏通りの奥にある、俺の店『黒曜の瞳』へと吸い込まれていった。扉が開く音は微かだが、イザベラの心臓には、雷鳴のように響いたに違いない。

そして、間もなく、二階の私室の窓に、微かなランプの光が灯る。

リーゼが俺の私室に入ったことを確認したイザベラは、もはや理性を保てなかった。彼女の瞳は怒りの炎を燃やし、その顔は悲痛な裏切りに歪んでいる。

——番犬は、ついに吠え始めた。

イザベラは、裏口からではなく、店の表扉を乱暴に蹴破って店内に雪崩れ込んできた。

「ヴァリス!出て来い、この外道が!」

その怒声は、この小街の静寂を切り裂く。イザベラの声には、正義の剣を振りかざす者特有の、揺るぎない確信が込められていた。

俺は、一階の扉が破壊される轟音を聞きながら、二階の私室で優雅に火酒を呷った。ミランダは、俺の隣で静かに跪き、その光景を歓喜で受け入れている。

「ヴァリス様…っ、獲物を守る番犬が、牙を剥きましたね」

ミランダの瞳は、まるで美しい劇を見ているかのように潤んでいた。彼女にとって、これは俺の支配の絶対性が試される、神聖な儀式なのだ。

「ああ、ミランダ。最高の舞台だ。その番犬の誇りを、お前と二人で白濁の悦楽に沈めてやろう」

俺は立ち上がり、黒髪黒目の瞳に冷たい光を宿した。

「リーゼに、下の喧騒など気にする必要はないと伝えろ。彼女には、俺の愛の奉仕を続けるようにと」

ミランダは、恍惚とした表情で頷き、奥の階段から階下へと降りていった。

俺はゆっくりと階段を降りた。一階の店内に立っていたのは、怒りに燃えるイザベラと、そのすぐ側で、怯えながらも狂信的な愛を訴えるリーゼだった。

「イザベラ、やめなさい!ヴァリス様を侮辱しないで!」

リーゼは俺を庇うように立ち塞がっている。指輪から流れる魔力は、彼女の理性を完全に麻痺させていた。

イザベラはリーゼを押しやり、俺に向かって、震える指を突きつけた。

「卑劣な魔術師!あなたはリーゼに何を付与した!?彼女の心は、あなたの邪悪な魔術で汚されている!」

イザベラの青い瞳には、涙と憎悪が混ざり合っていた。彼女の友情と正義感は本物だ。その清廉な怒りこそが、俺の欲望を最高潮に刺激する。

俺はゆっくりと眼鏡を押し上げた。

「騎士さん。何を勘違いしている」

俺は、慈悲のかけらもない、冷酷な笑みを浮かべた。

「俺はリーゼに、彼女が最も欲していたものを与えただけだ。お前という貧弱な友情では満たされなかった、絶対的な愛をな」

俺は指を鳴らした。

「そして、その愛を受け入れた彼女の身体は、今や俺の玩具だ。お前はただの敗者。一歩遅く、獲物を闇の底に奪われた、哀れな番犬に過ぎない」

イザベラの顔色が一気に青ざめた。彼女は、俺の言葉が真実を突いていることを理解した。リーゼの心は、もはや彼女の知るリーゼではない。

「ふざけるな!今すぐその魔術を解け!そうでなければ、この剣で、お前を切り刻んでやる!」

イザベラは、カウンターに置いてあった自分の剣を掴み、怒りに任せて俺に斬りかかろうとした。

その抵抗こそが、俺が待っていた瞬間だ。

俺は魔力を練り上げた。力ではなく、支配のための魔術。イザベラのような誇り高い騎士にとって、最も屈辱的な隷属の鎖。

「抵抗するのか、騎士。その誇りと正義ごと、調律してやろう」

俺の口元に浮かんだのは、冷酷な付与術師の、勝利の予感に満ちた笑みだった。

(続く)
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