スラムの子と王子様

うー吉

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第十二話

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聞きたい事があるからフィーを呼び出せと親父から連絡があった かなりご立腹である
親父が フィーにセシルについて聞きたいとだけ言った
「セシルは ずっと母親に魔力を取られていた」
フィーが悲しそうに言う
「『セシル 早く来て 魔法を頂戴』妹がよく言ってた 
セシルは何も言わずずっと母親に魔力を送り続けた そして眠ってしまった
妹の最後は あの子たちへの恨みの言葉だけだった」
「よくわかった すまなかったな」と城へ帰って行った
それからのロルフとスティーナは セシル今まで以上にかわいがった
親の愛情がもらえないのなら 他の大人があげればいいの
この世に自分を愛してくれている人がいると思うだけで 生きていけるからとスティーナが言っていた

三人間に何があったのかわからない
熱を出したからそちらには行かさない連絡があってから 一週間後
手をつないで三人で離れに来た
「少し無理をさせていたようだ すまなかった」とセシルに言うと
「ううん 大丈夫 ごめんね心配かけて もう大丈夫」とニッコリ笑った
「しんどくなったら クロウにきちんと言うのよ」「うん」
「スティーナと夕方迎えに来るから」「二人ともちゃんと仕事してよ また怒られるよ」
「「はい わかりました」」とじゃ クロウお願いねと2人は城へ行った

「すごくないか」とセシリアが言うほど
それからのセシルはすごかった アシルの魔力をもらい アシルを安定させるていく
みるみる間に アシルの顔色がよくなった

寝る前 いつものように アシルにマッサージをする
両手でアシルの手を包んだ時 少し力を感じた
「アシル 手を握れる?」と声をかけると 俺の手を握ろうと動いたのがわかった
「ーーーっおかえりアシル」涙が止まらなかった

次の日 朝から城の住居へ行く 庭で朝の鍛錬をしている3人 
セシルが以外とやるんだとスティーナが言うように これはなかなかのものだと見ていると
「朝から どうした」とスティーナが声をかけてきた
「いや 昨日の晩アシルが少し反応を見せて 手を握ってくれた 早く伝えた
ドンと体当たりがきた 
「ほんと ほんとにのほんと 今から言っていい ねぇいいでしょ ねぇ」
セシルが俺の足を離そうとしない
「だから 呼びに来た」とヒョイと抱きかかえ 二人にいいだろと声をかけて連れていく
「早く 早く」とセシルがせかす
アシルのベットの横に降ろし 声をかける
「アシル セシルを連れてきたよ わかる?」手が少し動く
セシルがその手を握って「アシル 初めまして セシルだよ」と言うと
口が少し動く セシルと耳を近づける「ク・・・ウ セ・・・シル」と声が聞こえた
セシルと2人で抱き合って泣いた

しかし アシルの目は ほとんど見えなくなってしまった
体はきれいに回復しているのに 目だけが回復しなかった
「眠る前から なんとなく見えなくなってたんだ 黙っててごめん」
寝ているアシルの横に添い寝をする
「そうか」体中をべたべたとさわる
「くすぐったいよ クロウやめて」「なんで いいだろ うれしいんだ」
「眠っているとき 何をしてもやめてなんて言ってくれなかった
だから うれしいんだ 目が見えないのはアシルはツライだろうけど
俺は 目で済んでよかったと思ってる お前がこのまま眠ったままだったら
このままいなくなってしまったら」
アシルの細くなった体を俺の体全体で抱きしめる
「怖かった」
「ごめんね」
「帰ってきてくれたからもういいよ」と抱きしめあって眠る


「セシル泣くな」「だって~」
「セシル泣かないで 俺大丈夫だから ね」
「あああーーーーん」とさらに大声で泣いてしまった
「どうした そんなに泣いて」とスティーナがアシルのへやにやってきた
エリ呼んでくれたようだ
「スティーナ アシルの目 アシルの目が」スティーナの元へ走り泣いて訴える
スティーナがセシルを抱きしめて 俺を見る 俺は首を横に振る
「スティーナ」アシルが呼ぶ「どうした」
「セシルが俺の目を気にして 眠る前から少しづつ見えなくなってたから
しょうがないのに 泣き止まなくて ごめんなさい」
「アシルは悪くない 悪いのは俺なの ごめんね アシル~」
涙が ボタボタと落ちていく
「目だけで済んでよかったんだよ ねクロウ」
「ああ そうだよ こうやって言葉を交わせる 手を握り返してくれる
じきに歩いけるようにもなる 何の問題もない」
「でも でも」
「セシル アシルの目は残念だけど 見てみろ」
手をつなぎ 寄り添い 椅子に座っている二人がいる
「これ以上の幸せはないと二人が言ってるように見えるぞ」
二人でうなずく
「幸せ? 二人とも幸せ?」「「ああ」」
「よかったと思ってる」とクロウが言う
ギュッとスティーナにしがみつく 
「二人の邪魔になってしまうから また明日来ような」コクリとうなずく
「明日また来てね 楽しみにしてるよ」とアシルがやさしく言った




アシルも安定して 杖を使えば歩けるぐらいになった頃
フィーがセシルを迎えに来た
「少し前にフィーに帰ろうって言われてたんだけど 言えなくて」
もう目に涙がたまってる
「そうなのね」スティーナがセシルを抱きしめる
「帰っても私たちの事忘れないでね たまには遊びに来てね 体に気を付けて
お友達だくさん作るのよ お勉強もしてね 鍛錬も忘れないで・・・・・
大好きよ愛してる セシル」
「いつでも帰ってきていいからな ここでスティーナと待ってるよ
愛しているよ セシル」
フィーに 「お願いね この子の事 お願いね」と頭を下げるスティーナ
「わかった 行くぞ セシル」
振り返り振り返り 二人を見るセシル 「元気でね」と言い続ける二人
フィーに乗せてやろうとした時 フィーが「いいのか」と一言だけ言った
「おろして クロウ」俺の手から飛んで出て 二人の元へ走るセシル
何も言わずセシルを抱きしめる 二人
ため息をついて 二人ともお前たち家族に取られたといい
「二人の事 お願いします」と言い残して 飛び立った



「アシル 助けて」セシルの声が聞こえる
声のする方へ行こうとしたら 足が絡む
「あっ」と来ると思う衝撃が来ない
「立ち上がる時は 気をつけろといつも言ってる」たくましい腕で俺を支えてくれる
「クロウ ごめん」きちんと立たせてくれて 杖を渡してくれる
「セシルの声が聞こえたんだけど」
「ああ また城から抜け出したみたいだな」
離れと城の間の部屋を診療室として使っている 
グフタスが お前の力仕事にしないかと誘われた  
全てを救うのかと思っていたら 回復のお手伝いをするのだと
グフタス曰く 神様じゃないから命を操ってはいけない 少しお手伝いをするだけだよ
と言っていた
クロウは国王の仕事を手伝いだした
セシリアとナディヤも クロウの手伝いをしている
セシルが診療室に飛び込んできた
「聞いてよ アシル 俺は王子じゃないのに みんなが王子王子って 勉強もさせられるし
お行儀よくしなさいって怒られるし お城の壁登ったら スティーナ上から石投げてきたんだよ」
セシルの声がする方へ手を伸ばす セシルの小さな手が俺の手をつかんでくれた
「ひどいと思わない」とぷりぷり怒っている 
「まぁセシル座れ」とクロウが声をかけてくれて 俺の手を取り椅子座らせてくれる
治療した後なので少し疲れていたのが ばれたらしい
「アシル へいき?体ツラい?」とセシルの心配する声が聞こえる
「大丈夫だよ」と答えた
三人で お茶をのみながら 休憩していると
クロウが小さな声で 「そろそろかな」と苦笑いをした

「セシル」とスティーナが治療室の扉を開けた
「「「はい」」」となぜかクロウまで返事をしている
「逃げだして 何か変わりますか 王子でも王子じゃなくても勉強はするものです」
「はい」
「では 戻って続きをしましょう いいですね」
「はい スティーナ 勉強したら剣教えてくれる」
「もちろん たくさん教えてあげるわ」
「スティーナ 逃げてごめんね」
「いいのよ 追いかけっこは慣れてるから」と嬉しそうに言うスティーナが言って
「また ゆっくり来るわね アシル」と声をかけてくれた
手をつないでお城へ歩いているよとクロウが教えてくれた


壁を伝い 杖をつきながら ゆっくり進む
自分たちの部屋へと続く廊下を歩いている
あれから 何人か急患が来て 忙しかった
「明日は休めそうでよかった」
「ほんとにね ちょっと忙しかったもんね」
「疲れただろう」
「少しね」
「少しね」
疲れすぎて ゆっくりしか歩けない 
それでもクロウは一緒に歩いてくれる 
手を取り 急がなくてもいいよと声をかけてくれる 


このまま一緒に歩いていこうな とクロウのやさしい声が聞こえてきた


  

 
 
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