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会えない訳じゃない?

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その一方で、オレは…
「また…会えなかったの?」
オレの行動は、ナゼか空振りディスり対象と言うか、
笑いのネタと言うか…
「どっちも、同じだろ?」
「そう言うもん?」
四時限前の休み時間。
前の席と後ろ姿の席に挟まれる感じで、話をしていた。
「けど…ライガって、中学の頃は、ファッション系で合う女子と仲良かったろ?  何で、対象がアレに移った?」
やっぱり。そう言う風に、見られてたんだ…
「分かった!  可愛いからか?」
「えっ…」
「えっじゃなくて、実際…お前の場合は、キレイでも、身長差で有り得ねえーって去る方が多いてけど…あのカケルって子となら付き合えるって、本気で思ってるヤツ居るらしい」
「えっ!!……」
「今更だろ?  あの顔だぞ?  勘違いするヤツ…ぜってぇー居るって」(笑)
へぇ~っとか、言いながら心臓の音が、ヤバい。
「…それって…マジに付き合えるかって?」
中学からの知り合いが、はぁ?  とした表情を見せる。
「さっきから、そう言ってんじゃん。実際さぁ…普通の女子よりも可愛いし性格良さそうだし…」
付き合いたいって、思っているヤツは、オレだけじゃない?
「だって、お前も、カケルってヤツが、可愛いから。付き合いたいんじゃねぇーの?」

可愛いから?

「にしても、お前も服以外に好きなものできて良かったじゃねぇ?の」
「えっ、うん」
「どうした?  歯切れワリー。あっそうだ。本人に言っとけよ。ボーッとしてると、狙われるぞってさ!」(笑)
「狙われる!?」
何?  えっ…
「声でけーよ!!」
「何! ライバル多いってこと?
カケルを狙ってるヤツが、マジに居るってこと?」
勢いで椅子から立ち上がろうとするオレを、二人は宥めるように再び椅子に座らせた。
「ライガ、落ち着けよ!」
「いや…何日か前にも、三年の先輩だかに、絡まれて通り掛かった人に助けられたとか、聞いたからさ…」
「あっ、男子の後輩に威嚇されたとか言う話しな。まぁ…三年の先輩だから後輩相手に威嚇されたとか、広まるもの嫌なんじゃねぇ…って話しな…お前からしたら複雑かな?」
「あっ」
「何?」
「それ…オレだと思う…」
「マジか?  でも、お前も、大変だな…相手、可愛いし目立つし…(お前も)」
「ここだけの話しな…」
カケルが、朝イチでクラスに来て声を、掛けた瞬間、注目を集めたらしい。
「実際に男子の中で、可愛いって言ったヤツもいたしな」
「女子は女子で、彼女が、居るのか、居ないのかの話しで、もし今、告白したとしたら。付き合える確率は、あるかって…」

オレが、知りたいよ。

それに…
あの桜って子の件もあやふやと言うか…まぁ…カレカノじゃない疑いは、晴れたけど…
あの距離感は、解決してない。

「……でっ、その言い分は、分かった…だからって、何でオレの所に?  昼は、いつもの所に行くんだから。オレを呼び止めるなってぇーの!!」
昼休み。
いつもの場所に向かおうとしていたオレは、自販機でお茶を買っている修二を見掛け駆け寄った。
「同じクラスだし…少なくとも、オレよりかは、そう言うの詳しいんじゃないかって…」
「っても、なぁ…今日、朝イチで、お前のクラスに行って会えなかったのも、他の休み時間も擦れ違ったってのは、結子から聞いて知ってる。カケルが、お前のSNSを知りたいとかって…」
「桜って子に、勧められた…とか?」
「随分と敵意向けてんのな?」
修二は、何とも言えない冷ややかな視線でオレを見ながら残念そうに笑った。
「何?」
「いや。ただ…ライガって、素直に相手、見れねぇーのかなってさ…」  
素直に?
「桜って女が、切っ掛けでも、調べる。調べないは、カケルが決めたことだろ?  アイツが知りたいって、思ったから。お前に聞きに行ったんじゃねぇーのかよ?  それで十分なんじゃねぇ?」
その言葉は、間違ってない。
何って言うか、焦っている分モヤモヤが、加速しているだけ。
思い通りにいくわけないことは、分かってる。
でも、納得がいかない。
「独占欲的なことなら。それは、今のカケルの前では、出すなよ。アイツは、アイツなりにお前からの告白の返事?  考えてんだから…待ってやれよ…」
そんな素直に捉えても、大丈夫なのか?
不安でしかない。
「…っはぁ?」
鼻で笑われた気がした。
「お前の性格、なんかネジ曲がってねぇ?」
「ネジ曲がって…」
…いるのか?
多分、家族意外で誰かと深く関わってきたことがないから。
どう接していいのか、分からないんだと思う。
人に対して変に免疫力があるくせに、肝心な人を目にすると、舞い上がる訳じゃないけど…
平常心でいられなくなることに、カケルを通して気が付いた、
「…て、平常心でいられなくなるのが、好きって気持ちじゃねぇの?……まぁ…彼女持ちの戯れ言ってことで…」
「余裕だね」
「そうでもねぇーよ。連絡取り合ってても、違う学校に通ってる訳だし。信じてはいるけど…やっぱ気になるし。心配もするよ。でもそれは、相手も同じだから。お前らは、近くにいるんだから。もう少し話して、カケルのことも、ちゃんと聞いてやれよ」
校舎を出て中庭に向かおうとする修二にオレは、投げ掛ける。
「…あのさぁ…カケルは、オレを…好きになってくれるかな…」
相変わらず修二は、不機嫌そうに。
「知るわけねぇーだろ」と、一言。
「だよね…」

ホント。
笑えない話し。
オレばっかりが、焦っているみたいで…
余裕なんってなくて…
中庭に着いたらカケルに、何って声掛けよう。
でも、その場にカケルは…
「教室よ…何か調べものするとか?  私達のクラス午後からテストなのよ。それでじゃない?」
「そう…」
芝生に座っていた結子が、顔を上げ箸を置く。
「カケルくんも、自分からアナタの所に行ったんだから。いつもみたいに会いに行けば?」
結子や修二の声には、何か突き動かされる強い気持ちが響く。
「分かった行ってみる…」
今日に限って、やること成すこと抜けててダサくて…
でも、カッコつけたいとか、
よく見られたいとか、全く考えられなかった。
こんな気持ちになるのは、初めてだった。

「でっ、これで良かったの?」
「話し合いは、必要だろ?  でも、不思議なんだよな…アイツ」
「アイツって、カケルくん?」
「そう…入学して早々に男子から告られてんだよ。その時でさえ、ごめんて一言で、終わらせたヤツが、何でライガに限って、そこまですんのかなってさ…」
微妙な間と言うか、空気が流れる。
「あの。アレじゃないでしょうか?」
「何?」
「どちらが、先に好きになったとか、正直、私達には分かりません。でも、カケルくんにとっては、自分から告白したって言うのが、あるんだと思います」
「…確かに勘違いではあるけどな…」
「自分から声を掛けてしまったから…返事と言うか、決着と言うか…多分…」
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