24 / 25
朱き守護者 〝ダンぺー〟②
しおりを挟む私はしばらくの間、彼らのパス回しに魅了され、見入っていた。
レイスである彼らには時間という概念がないのか、それは終わりの見えない儀式のようにも思えた。
やがて私は、一度遺跡の外へ戻ろうと身を引いた。
そのときだった――通路の奥から、こちらへ向かってくる大きな影に気づいたのは。
私は咄嗟に物陰へと身を隠し、それが通り過ぎるのを待つ。
姿を現したのは――ローリングボアだった。
かなりの巨体だ。
それが私の存在など意にも介さず、三体の〝ダンペー〟へと歩みを進めていく。
気づけば、〝ダンペー〟達もパス回しをやめ、それぞれが首を手に取って構えていた。
ローリングボアが立ち止まる。
後ろ足で地面を蹴り、〝ダンペー〟達へ威嚇する。
背中が大きく膨らみ、前傾姿勢になった次の瞬間――高速回転の突進が始まった。
三体の〝ダンペー〟は、即座に間合いを取る。
正面に立つ一体が、首を投げた。
あれは〝抱きつき魔〟の首だろう。
次の瞬間、首を包んでいた光が形を持ち、〝抱きつき魔〟の姿となってローリングボアへ突っ込んだ。
――だが、それでは駄目だ。
素人の私でもわかる。
回転に入ったローリングボアを、正面から対処してはいけない。
案の定、光の〝抱きつき魔〟はあっさりと弾き飛ばされ、霧散した。
それを合図にしたかのように、左右へ回り込んでいた二体が動く。
投げられた首が、再び光の魔物となり、側面から襲いかかった。
これが正解だった。
側面から体勢を崩されたローリングボアは宙へと浮かび、そこへ、朱き鎧のリーダーが首を投げ放つ。
その光も魔物となり、正確にローリングボアの首を掻き切った。
それは、ためらいのない――正確無比な投擲だった。
見事な連携攻撃である。
ただ、正面にいた個体だけは、まだ戦いの経験が少ないように見られた。
倒されたローリングボアの前で、朱き鎧のリーダーが失敗した個体へと何かを説明している。
今後の戦いへの指導だろうと見ていた――その時。
その個体が持っていた首を強く、地面に叩きつけた。
叩きつけられた首が爆ぜる。
私は何が起こったのか瞬時には理解できなかった。
だが、静まりかえったその空間を見つめ――一つの解答に行き着く。
そう――逆ギレだ。
注意された個体が逆ギレしたのだ。
その個体は、そのまま背を向けると奥へとズカズカと戻っていった。
もう一体がリーダーに頭を下げ、その個体を追いかける。
そこに、一体だけ残されたリーダー。
朱き鎧の奥から漂う空気は、言葉にしがたい……もの。
そんなリーダーの背中を見ていると、ふと、昔の父の姿が重なった。
部下の愚痴をこぼしながらも、結局は一人で抱え込んでいた、あの背中だ。
回想しつつどうしようか迷っていると、頭皮にちくりとした痛みが走った。
見ると、肩に乗っていたマンドラゴラが私の髪を引っ張っていた。
その丸い目が、はっきりと訴えている。
――どうにかしろ。
私が?と思わず口に出しかけたが、視線の先にいるリーダーの背中を見て、ため息をつきつつも話しかけに向かった。
ありがたいことに攻撃はされなかった。
知識があり言葉が通じたからか、肩や頭に乗ったマンドラゴラ達を見たからなのかはわからない。
だが、そのおかげで大体は地面に文字を書いて――会話をすることができた。
4
あなたにおすすめの小説
【流血】とある冒険者ギルドの会議がカオスだった件【沙汰】
一樹
ファンタジー
とある冒険者ギルド。
その建物内にある一室、【会議室】にてとある話し合いが行われた。
それは、とある人物を役立たずだからと追放したい者達と、当該人物達との話し合いの場だった。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
失礼ながら殿下……私の目の前に姿を現すな!!
星野日菜
ファンタジー
転生したら……え? 前世で読んだ少女漫画のなか?
しかもヒロイン?
……あの王子変態すぎて嫌いだったんだけど……?
転生令嬢と国の第二王子のクエスチョンラブコメです。
本編完結済み
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる