ガーランド大陸魔物記  人類が手放した大陸の調査記録

#Daki-Makura

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朱き守護者 〝ダンぺー〟②

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 私はしばらくの間、彼らのパス回しに魅了され、見入っていた。
 レイスである彼らには時間という概念がないのか、それは終わりの見えない儀式のようにも思えた。

 やがて私は、一度遺跡の外へ戻ろうと身を引いた。
 そのときだった――通路の奥から、こちらへ向かってくる大きな影に気づいたのは。

 私は咄嗟に物陰へと身を隠し、それが通り過ぎるのを待つ。

 姿を現したのは――ローリングボアだった。

 かなりの巨体だ。
 それが私の存在など意にも介さず、三体の〝ダンペー〟へと歩みを進めていく。

 気づけば、〝ダンペー〟達もパス回しをやめ、それぞれが首を手に取って構えていた。

 ローリングボアが立ち止まる。
 後ろ足で地面を蹴り、〝ダンペー〟達へ威嚇する。
 
 背中が大きく膨らみ、前傾姿勢になった次の瞬間――高速回転の突進が始まった。

 三体の〝ダンペー〟は、即座に間合いを取る。

 正面に立つ一体が、首を投げた。
 あれは〝抱きつき魔〟の首だろう。

 次の瞬間、首を包んでいた光が形を持ち、〝抱きつき魔〟の姿となってローリングボアへ突っ込んだ。

 ――だが、それでは駄目だ。

 素人の私でもわかる。
 回転に入ったローリングボアを、正面から対処してはいけない。

 案の定、光の〝抱きつき魔〟はあっさりと弾き飛ばされ、霧散した。

 それを合図にしたかのように、左右へ回り込んでいた二体が動く。
 投げられた首が、再び光の魔物となり、側面から襲いかかった。

 これが正解だった。

 側面から体勢を崩されたローリングボアは宙へと浮かび、そこへ、朱き鎧のリーダーが首を投げ放つ。

 その光も魔物となり、正確にローリングボアの首を掻き切った。

 それは、ためらいのない――正確無比な投擲だった。

 見事な連携攻撃である。
 ただ、正面にいた個体だけは、まだ戦いの経験が少ないように見られた。
 倒されたローリングボアの前で、朱き鎧のリーダーが失敗した個体へと何かを説明している。

 今後の戦いへの指導だろうと見ていた――その時。
 その個体が持っていた首を強く、地面に叩きつけた。
 叩きつけられた首が爆ぜる。

 私は何が起こったのか瞬時には理解できなかった。
 だが、静まりかえったその空間を見つめ――一つの解答に行き着く。

 そう――逆ギレだ。

 注意された個体が逆ギレしたのだ。
 その個体は、そのまま背を向けると奥へとズカズカと戻っていった。
 もう一体がリーダーに頭を下げ、その個体を追いかける。

 そこに、一体だけ残されたリーダー。
朱き鎧の奥から漂う空気は、言葉にしがたい……もの。

 そんなリーダーの背中を見ていると、ふと、昔の父の姿が重なった。
 部下の愚痴をこぼしながらも、結局は一人で抱え込んでいた、あの背中だ。

 回想しつつどうしようか迷っていると、頭皮にちくりとした痛みが走った。
 見ると、肩に乗っていたマンドラゴラが私の髪を引っ張っていた。
 その丸い目が、はっきりと訴えている。

 ――どうにかしろ。

 私が?と思わず口に出しかけたが、視線の先にいるリーダーの背中を見て、ため息をつきつつも話しかけに向かった。

 ありがたいことに攻撃はされなかった。
 知識があり言葉が通じたからか、肩や頭に乗ったマンドラゴラ達を見たからなのかはわからない。
 だが、そのおかげで大体は地面に文字を書いて――会話をすることができた。

 
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