1 / 1
私が……王太子……のはずだったのに??
しおりを挟むおかしい!
おかしい!!
おかしい!!!
一体何が起こっている?
一体何が起こっているのだ!?
久しぶりに……王城へ帰ろうとしたら……物凄い人だかりだ……
華やかな色とりどりの出店、小綺麗に着飾った行き交う人々……
2階の住居からは、花びらが撒かれている。
確かに五日後は、私の立太子式だが……
それだけで……今からこんなに人が集まるものか?
何かがおかしい……何かが起こっている……
集まっている人々が、口々に言っている。
「今日は立太子式でめでたい」
と……
最愛との愛の育みに夢中で……日にちを間違えた……それはないはず……
周りを見れば、私の最愛も、側近も顔色を悪くしている……
何かが……何かが確実に起こっている……
嫌でも心がせかされる……冷や汗が背中を伝い……
運動をしたわけでもないのに……息が上がる……
人だかりを掻き分け、なんとか王城へと戻れた。
父上と話すために廊下を進むが、すれ違う者すべてから厳しい視線が向けられる。
私が一体何をしたというのだ……
「なんだ……貴様か……」
父上のいる部屋に入った際、投げかけられたのは……心底興味のなさそうな、父上の一言だった。
私のことをチラリと一度だけ見て……すぐに視線を外した。
「えっ……あっ……」
そのあまりにも冷たい声に、言い返す言葉がうまく出てこない……
「これから立太子式だ。くれぐれも邪魔をしてくれるなよ」
「なっ!!」
父上の〝立太子式〟という言葉に心臓が跳ね上がる。
震える口元に力を入れ、なんとか言葉を紡ぎ出す……
「りっ……立太子式は五日後では?」
「何を言っている? 王太子になる第2王子の要望で、婚約者の誕生日……今日になったわ」
一瞬、父上が何を言ったのかがわからなかった……
王太子が第2王子……??
「お、王太子は私なのでは!!」
「いつの話をしている。二週間も前に第2王子に変わったわ!」
……二週間前?
……第2王子?
父上の言葉は、確かに耳に届いているが、脳が、頭が、その言葉をうまく処理できない……なかなか意味を結べない……
二週間。
え、たったそれだけの時間で……王太子の座が私から……弟へ変わるのか……
喉がひくりと鳴った。
心臓の鼓動だけが、やけに大きく耳に響く。
「何故急に!! こ……婚約者が! 公爵が! それを認めるわけがありません!!」
その言葉に、父上はようやくちゃんと私を見た。
いや……正確には、見ているようで見ていない……
私という人間が……居ようが居まいがどうでもいいような……視線……
その視線に宿っていたのは、怒りでも失望でもない。
ただ、処理済みの案件を蒸し返されたような、露骨な煩わしさが滲み出ていた。
「貴様は何を言っている? 貴様には婚約者などいない」
「は……はい? い、いや……いますよ! 公爵家の、あの女が!!」
「あの女?……貴様がどう思っていようが構わんが、令嬢はもういない」
「も……もういない……?」
いない?
どういうことだ?
最愛と一緒にいるたびに、いつでもどこでも現れていたではないか……
毎度毎度、口うるさく小言を言いに来ていたではないか……
だから、城を抜け出し……城下で最愛と会っていたというのに……
なのに……あの女が……もういない……?
「公爵令嬢は、女神様の要請を受け、異世界の聖女として召喚されて行ったわ。貴様が、どこぞの阿婆擦れのもとに通っている間にな」
頭の奥が、白くなる。
あの女が……聖女として選ばれた?
毎日のように王城から抜け出し……数日、帰らない日もあった……
婚約者を大事にしろ……公務を大切にしろ……と言う周囲の忠告を無視した……
嫌でも、最後はあの女と結婚すると……放置した……
どうせあの女がやると……公務も放り出していた……
自分が第1王子だと……王太子になるのだと……自分の立場を疑いもしなかった……
その間に?
「そ……そんな……じゃあ……私は……」
「阿婆擦れのもとでも、どこにでも行けばいい」
父上の声色は、どこまでも興味がなさそうで……
「王太子のスペアは、第3王子が務めるからな」
――スペア。
その一言で、十分理解できた……
私は……王家において……余剰ですらない存在なのだと。
「それから、公爵令嬢が聖女召喚で送られる前に、貴様とは婚約解消している。公爵令嬢がこちらに心を残さないように、そして公爵への礼儀としてな」
「……」
「公爵家への賠償金は、貴様が払え」
それは、命令ですらなかった……
ただの事務連絡だった……
もう用はないとばかりに、父上が手を振る……
私はどうすればいいのかわからず佇んでいると……父上の護衛に両腕を持たれ、部屋から追い出された……
私が……王太子……のはずだったのに……
これから……私はどうなるのだろう……
どうすれば……良かったのだろう……
あの女を大切にしていれば……女神の要請を断ったのだろうか……
私は……王太子になれていたのだろうか……
頭を巡る自問に……誰も……答えてはくれない……
27
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています
お姫様は死に、魔女様は目覚めた
悠十
恋愛
とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。
しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。
そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして……
「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」
姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。
「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」
魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
よくある風景、但しある特殊な国に限る
章槻雅希
ファンタジー
勘違いする入り婿、そしてそれを受けてさらに勘違いする愛人と庶子。そんなお花畑一家を扱き下ろす使用人。使用人の手綱を取りながら、次期当主とその配偶者の生きた教材とする現当主。それをやりすぎにならないうちに収めようと意を痛める役所。
カヌーン魔導王国では、割とよくある光景なのである。
カヌーン魔導王国シリーズにしてしまいました(笑)
『小説家になろう』様・『アルファポリス』様に重複投稿、自サイトにも掲載。
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
悪役令嬢に相応しいエンディング
無色
恋愛
月の光のように美しく気高い、公爵令嬢ルナティア=ミューラー。
ある日彼女は卒業パーティーで、王子アイベックに国外追放を告げられる。
さらには平民上がりの令嬢ナージャと婚約を宣言した。
ナージャはルナティアの悪い評判をアイベックに吹聴し、彼女を貶めたのだ。
だが彼らは愚かにも知らなかった。
ルナティアには、ミューラー家には、貴族の令嬢たちしか知らない裏の顔があるということを。
そして、待ち受けるエンディングを。
嘘つきと呼ばれた精霊使いの私
ゆるぽ
ファンタジー
私の村には精霊の愛し子がいた、私にも精霊使いとしての才能があったのに誰も信じてくれなかった。愛し子についている精霊王さえも。真実を述べたのに信じてもらえず嘘つきと呼ばれた少女が幸せになるまでの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる