はぁ……潔く……散るか……

#Daki-Makura

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はぁ……潔く……散るか……

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 外から聞こえてくる喧騒……
 王家は……今日で終わるのだろう……
 願わくば……国だけは助かってほしい……

 何故、このバカ王太子は……こんなことをしてしまったのか……
 
 いや……それもこれも……私達夫婦が教育に失敗したからなのだろう……
 目の前で腰を抜かし、無様にへたり込み失禁しているバカ息子王太子
 その姿を見て……親である自分自身も愚かに思えてくる……
 ここで無様に死んで逝くのがお似合いだ……
 
 安心しろ……私も一緒に死んでやる……


 
 バカ王太子がしでかした……婚約者に婚約破棄を叩きつけた。
 相手は〝北壁〟、北の辺境伯の娘。
 
 北の辺境伯――元S級冒険者、二つ名は〝皆殺し〟。
 私の古き友……魔物に蹂躙されかけていた国を、私との友情だけで〝北壁〟となって……守り抜き続けてくれた男。
 
 そんな彼のただ一つの宝……彼に似ず美しく賢い一人娘。
 私も王妃も、義娘になってくれるのを心から願っていた……

 それをバカ王太子が貶めた……

 最近の不仲は知っていた……
 どこぞの伯爵令嬢を側に侍らせているのも知っていた……
 注意はした……口うるさいほどに……
 関係改善が無理なら、婚約者を第2王子に変えるから王太子を降りろと再三言っていた。

 だが、バカは「私が王太子です。責任を果たす義務はわかっています。」と言っていた………
 どうして……あんな薄っぺらな言葉を信じたのか……
 いや……わかっている……甘い親だったのだろう……
 どうしても、このバカを信じてやりたかったのだ……

 なのに……
 
 卒業パーティーでの婚約破棄――大勢の目があり、覆すこともできなかった……。
 何が最愛だ……何が真実の愛だ……
 散々王族として、優雅な生活を享受しておいて……
 義務を果たそうともしない……

 義務の婚約者……?
 愛などそこには無かった……?
 そんなもの……彼女だって一緒ではないか……

 
 そして……今、彼が単身で攻め込んできている……
 立ちはだかるものを……文字通り〝皆殺し〟にして……
 もう、私たちの間には……友情はないのだろう……

 単身で千匹の魔物を倒せる男……そんな男を誰も止めることはできない。

 バカ王太子が勝手に軍を動かしていたが……
 それはすぐに王命で止めた……が……多くの犠牲が出てしまった……

 尻拭いは我々だけで十分だったのに……

 軍でも止められないと理解したのか……今度はこっそりと逃げ出そうとしたバカ。
 自称〝最愛〟(笑)と側近だけを連れて逃げ出そうとした……
 自分のしでかしの責任すら取れない、そのあまりに情けない姿に……自然と流れ出る涙を止められなかった。

 婚約破棄から三日目、もうすぐ友がやってくる。
 バカと仲間たちは、最後まで逃げ出そうと暴れた……
 面倒だから、全員の足を折って玉座の前に転がしてある……

 喧騒が近づき、玉座の間に友が入ってきた。
 片刃で細身の剣――数多の魔物を〝皆殺し〟にした一本を持って……
 その目は昔と変わらない……魔物へ向けられてきた鋭い視線を……まさか私が向けられるとは……

 ギャァギャァ騒ぐバカども……
 本当に情けない……潔く逝くこともできないのか……

 友が一歩、また一歩と近づいてくる。

 すまない……たった一つの約束……「娘を幸せにする」……それすらも守れなくて……
 はぁ……潔く……散るとするか……

 
 友が無言で剣を差し出してくる……不始末は自分の手で処理しろと……
 相変わらずだな……手厳しいのは……昔のままか……
 そうだな……最期くらいは……私が引導を渡してやるか……

 もう、見苦しい姿は見せるな……なぜ潔く散れない……
 頼むから……これ以上、王家に名を汚すな……

 …
 ……
 ………
 
 全ての処理が終わり……そして友は帰って行った。
 再び我が国の〝北壁〟になるために……

 私は……潔く散ることすら許されなかった……
 
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