テーマパークの虜達 女王様はプレイヤー

S.miyako

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女王様はプレイヤー

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 パメラのチームの旗艦オブシディアンのロックが解除され、コックピットに鈍い振動が伝わった。フリーになり、ハンガーからゆっくりと離れ始める。
  要塞下部中央の軍用ベイエリア開口部に向かって、右回転しながら、垂直に降りて行く。本来なら、そのまま宇宙空間に飛び出し、要塞から充分に距離をとってから針路設定の後、転舵する。
  しかし、オブシディアンはピッチダウンし、垂直下方に機首を向けた。厚く黒い鉄の扉が六方にゆっくりと開き、煌めく星々が姿を表わす。
 戦況モニタの3Dインフォメーションの赤い光点が、獲物を狙うサメのように遊弋している。要塞の外で、逃亡者を待ち受けているのだ。
  普段は装備することのない翼下に、無骨なミサイルランチャーをフル装備したパイロンを可能な限り取り付けたオブシディアン。発射ボタンは押された。全弾が主人に先行し、わらわらと宇宙空間に踊りだす。シールドを、リパルサーモードでショートさせ、空になったランチャー毎パイロンを無重力空間に投棄。
  star globeに表示された要塞下部を遊弋する赤い光点の軌道が、一つを除いて、大きく乱れる。敵船の止めを目的とした対艦ミサイルでなく、防御用の撃ち放しミサイルである為、破壊力は弱い。が、100発以上放った。レナ軍にしてもアリエス軍にしても、無傷な船はもういない。ワープドライブ不能な船やシールドを失った船が殆どだった。全てのミサイルを振り切るには、二、三分かかる筈。包囲網を混乱させるには充分である。それに対して、オブシディアンは応急修理とは言え、アリエス調教中の五時間近くドッグ入りさせていた。ワープドライブは修理完了し、シールドデバイスも60%近くの能力を発揮できる状態だ。
  しかし、大きな問題が二つ。一つは、star globeに表示された敵を意味する赤い光点の内、一際大きく、ほぼ、不動で布陣する存在である。初めて、会敵したが、あれほどまでとは思わなかった。ワンダーさえ参戦しなければ、この敗北はなかったのに!
 宇宙軍港の外壁から顔を出し、1秒経ったか経たなかったかのその瞬間、オブシディアンは閃光に包まれた。コックピットが船体のローリングをシミュレートした。極太のビームは近距離を通っただけにも関わらず、折角、修理回復させたオブシディアンのシールドを60パーセントから11パーセントにまで低下させた。「おまえは、波動砲か!?」女達は思わずハモった。
  そしてもう一つの脅威。戦闘の趨勢がほぼ敵に傾いた。パメラは退却側であり、敵は捨て身の体当たり攻撃でさえ可能である。敵には、帰る基地即ち今日までパメラが支配していた要塞がある。かたや、パメラ達にはこの要塞を諦め、戦闘宙域から出来るだけ遠く離れるしか選択肢がないのである。
  要塞下方とその三方を、機動力に優れたアリエスとレナ軍の宇宙船が、飛び回っている。間もなく、オブシディアンの放ったミサイル群も無力化されるだろう。
  パメラは、決断、指示した。
 「ピッチアップ。仰角60°。ワンダーの戦艦の真下に針路を向けて……全力加速」
 「よーそろー」
  背後周辺から、レナ軍のカマキリと、アリエス軍の車がミサイルに絡みつかれるのも構わず追いすがり始めた。
  ワンダーの戦艦の船首にはエネルギーの再充填を意味する、淡い光の集束が見て取れる。そして、オブシディアンの移動に合わせて、誘導されるようにピッチダウンしている。まるで、銃口を額に突きつけられた気分だ。
  「面舵いっぱい!」
  パメラは全身からアドレナリンが滲み出るのを感じながら指示を続ける。星がゆっくりと左に流れるのをもどかしく眺める。
  「全速前進、出力全部ドライヴに回せ!」
  「よーそろー」
  ワンダーの戦艦が爆発したかのように閃光を放ち、もう一発の巨大ビームを発射した。
  「やばいシールドが持たんってぇ!」とダリアがおっさんのように叫ぶ。
  パメラも内心そう思いながら、奥歯をぎりぎりかみ締め、指示を続けた。
  「よーそろー」
  案の定、シールドのパワーが3パーセント付近にまで落ちた。
  「よっしゃ!ワープドライヴON!」
  船体の加速具合に合わせて、ゲージが上がっていく、カウントは10を示していた。
  もうあかん間に合わん!心の中で、そう叫ぶパメラ。
  敵の放つエネルギー弾が追いすがる。コックピット周辺が明るくなり、エネルギー弾の干渉波で、船体が揺れ始めた。
  もう知らん!思わず呟くパメラ。
  女王が諦めたその瞬間、カウンターが6辺りからパタパタパタとあっという間に0に到達した。前方の星が渦巻き、船窓が明るくなった。
  「助かったぁ~!」
  思わず、女王らしからぬ台詞を漏らしてしまい、後ろを振り返るパメラ。イヴが空を見上げる猫のようにポカンとしている。彼女は、パメラの視線に気づき、「ヒュー!」っと叫び声を上げた。パメラは思わず「ハッハッ」と笑い、次はミーナの顔を捜した。
  ミーナの複雑な立場を考えると、どんな表情をしてるか、気になった。
  あれ、ミーナがいない。
  嘘っお!忘れてきた?えっーーーーーー!?
  体が激しく揺れた。
  危うく、落ちそうになったが、何とかまだベッドの上だった。
  何だ、夢か……
 あの時は、正直やばかった。
  パメラのSM帝国が、終焉を迎えるか迎えないかのターニングポイントだった。
  あの時、パメラとイヴが囚われていたら。あっけなく、またまぬけな終焉になってただろう。多くのファンやギャラリーからブーイングの嵐だったに違いない。
  床に着いた右手を、気だるそうに引き上げながら起き上がり、ベッドに腰掛ける。髪の毛を掻き揚げながら、思わず隣のベッドで寝ている人物に思わず声を掛けそうになり、思い留まった。
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