Two Runner

マシュウ

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向かうは世界の果て

多分彼が一番疲れてる

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 与一は未だ興奮冷めずに男用の風呂場へ向かうと、脱衣所には三つのカゴに服が入れられていた。

 服を見るにどうやら俊明とワールド、そしてビートが一緒に入っているらしい。

 与一はそれらよりも少し離れたところにある籠に服を突っ込むと、真っ裸で中に入った。

「………覗きか?」

「しっ!にーちゃんは黙ってて!」

 風呂場に入るなり壁に耳を当てて、必死になって向こうの声を聞こうとしている俊明とワールドに与一は呆れながらため息をついた。

「なぁにしとんねん」

「だからうるさいって!」

 すると、ワールドは湯から上がってバシャバシャと夜市に向かって歩いていくと、与一の肩を掴んでシャワーの近くまで引っ張っていった。

「な、なにぃ?」

 ワールドは与一の質問に答える前にシャワーの蛇口を捻ってお湯を出した。

「……向こうが女湯なのは分かっておるな?」

「まぁ、反応見る限りそうやろなぁ……」

「……あそこをみろ」

「え?どこ?」

 与一はワールドの指差したところを見ていたが、眼鏡をつけていないためあまり良く見えていなかった。

「なに?」

「……ここの湯は男湯と女湯が一つの空間で繋がっているのだ」

「うぇっ!?」

 与一は驚きの声を上げて、女湯と男湯を隔てる壁の上の部分を目を凝らしてみた。

「……んーまやん……え?ロキはなんの意図あって?」

「我が知るわけなかろう……兎も角、そんな空間であるココだが、必然的に向こうの声も聞こえてくるのは分かるよな?」

「まぁせやろなぁ」

「……先程、セツが向こうの湯に入ったのだ」

「………」

 与一はワールドと俊明を怪訝な目で見た。

「覗きではないぞ……問題なのは、向こうにカミラが居ると言う事だ」

「………修羅場ぁ………」

 与一はそう言うと、女湯の方を向いた。

 すると、タイミングが良いのか悪いのか、向こう側から声が聞こえた。

「………セツ?貴方……なの?」

「……人違いだ」

「……ねぇ、セツはまだタクミと番いたいって思っ……」

「私はもう自由の身だ、タクミやアンタ達の指図は受けない」

「………あの男の事が気に入っ……」

 すると、バシャッと音がして、

「ふざけるな!私は誰があんな男の事を!!」

 俊明は非常に残念そうに与一の方を向いた。

「泣いてええねんで」

「くたばりもうせ」

 与一も同じように湯に入って壁側に近寄った。

「なんや、結局にーちゃんも聞くんかい」

「うるさい、聞こえへんやろ」

 と、与一は湯に浸かって、話の続きをまった。

「……それはごめんなさい……ねぇ、貴方は今タクミの事をどう思ってるの?」

「……失敗した男だ、それももうどうしようもなく失敗した……な」

「そう……因みに、私の方が年上なんだから、口の聞き方には気をつけなさい、じゃないと……」

 すると、もう一度バシャッと音がした。

「痛い目みるわよ」

「………フン」

 すると、パシャパシャと音がして向こうの扉が開いて閉まる音が聞こえた。

「……でぇ?いつまでそこで盗み聞きしてるつもりかしらぁ?」

「「「!!」」」

 三人は同時に顔を見合わせて『音を出すな』と、目線で語り合った。

「………あら、気のせいだったかしら?」

 と、暫くすると先ほどと同じようにパシャパシャと音がして扉が閉まる音が聞こえた。

「……シンゾウトレチャウカトオモッタ……」

「にーちゃんがペチャクチャ喋るからー、バレたかと思ったやん!」

「いや、ごめんやん」

「いや、恐らく普通に俊明と我の時から気づいていたと思うぞ?」

「でじま?まじで?」

 と、俊明がそう言うと、サウナの方からビートが体から蒸気を発しながら出てきた。

「えっ?ビートお前熱いところ大丈夫なん?寒い洞窟に住んどったけど」

「…………」

 ビートは無言で頷くと、こちらの親に浸かってふぅと息を漏らした。

「……所でお前ら、サウナで何分耐えれる?」

「サウナ……今ビートが入っておったところか」

「俺無理パース」

 と、俊明は与一のその問いかけの意味に気がついたのか、手を挙げて風呂から上がろうとしたが、

「へっちょ!」

「はいはい、俺はへちょくてけっこーこけこっこー」

「ふーん……じゃあ俺にサウナで勝ったら今度の風呂掃除番変わったるわ」

 と、その言葉を聞くと俊明は足を止めて、向きを変えると冷たい風呂に飛び込んですぐさま出てくると、

「……さ、さ、ぶ……何しとんねん!はい、今からな、よーいスタート!」

 と、俊明は与一が返事をする前にサウナに飛び込んだ。

「あっ!くっそ!行くで!ワールド!」

「ふん、勝つのは我に決まっておるだろう?」

 と、二人は俊明の跡を追ってサウナに飛び込んだ。

「…………」

 そして、暫くすると俊明とワールドがフラフラになって出てくるとサウナの前で倒れ込んだ。

「………」

 ビートはそれをみると、湯から上がって二人を担ぎ上げると、風呂から出ていってしまった。

「……へ、へ……暑さにも俺は強いんだどー……」

 そして、後から出てきた与一もフラフラになりながらも、風呂場から出た。

「……あっどぅー!」

 と、体を拭きながら訳のわからない事を叫び、首にタオルを巻いてパジャマ姿になって出ると、そこにはセツとカミラだけでなく、フォールやユウラビ、そしてリーシャ、更にはアスター、カモ、カナ、ノヴァ、そうつまりこの列車に乗る女性全員がそれぞれ話し合いながら、風呂場の前の広間に集まっていた。

「……」

 与一はなぜか気まずそうに広間の端の方を通るように出て行こうとすると、

「あっ!ヨイチ!ちょうど良かった!ちょっと聞きたいんだけど!」

「あっ?ん?何や?」

 と、与一は少しビックリしたように振り返ってユウラビの方を向いた。

「ロキがさ、『風呂の後って言ったらこれだろ?ってヨイチに言っとけ、私は風呂に入ってくるから、これで遊んどけ』ってね?この……よく分からない奴を置いていったんだ?」

 と、ユウラビが指さしたそれは、折り畳まれた卓球台と、そのセットだった。

「……風呂上がりに汗かかすて……デジマ……?」

 と、一人呟きながらテキパキと卓球の準備を始めた。

「ねぇねぇ、何なのこれ?」

「まぁ、ちょっとした遊びや……ルールは簡単やし、すぐできるで」

 と、言っている間に与一は準備を済ませ、ラケットを持った。

 すると、そこに俊明が意気揚々と現れて、与一に向かって手を差し出した。

「……ハイハイ、ファンの方ですかね?ありがとうございます~、今後とも応援お願いしますね~?」

「そうそう、プロの人に握手一回はして欲しかってん……有難うございます……ってちゃうわ!」

 と、俊明は切れながら与一の持っていたラケットをぶんどった。

 他のワールドや女性陣はそのやりとりを黙って見ていた。

「さっきはたまたま具合悪なってんけど、今回はもう大丈夫やで!」

「まってまって、にーちゃんコフィ牛乳飲みたいからちょっとまってて」

「あーあー、そんなん後でええねん、ほらやるで」

 と、俊明は与一に有無を言わさずにピンボールをラケットで弾いた。

「おっま!」

 与一はギリギリそれを返すと、俊明はしてやったりとほくそ笑んでそれを返した。

「おまえ!あとで!覚えとけよぉ!」

「んーなん!全然!知らんがな!」

 と、二人は罵り合いながら卓球をしていたが、そんなにラリーが続かないうちに、与一がラリーをスカった。

「ぷー!にーちゃんざっっっっこぉぉぉぉ!!」

「ぉおまえええええ!!!!」

 と、与一はキレながら俊明に近づくと、手を振り上げた。

 その瞬間、女性陣は止めようと立ち上がり、ワールドは与一の後ろに立ったが、

「「イェェェェェイ!エビ!タコ!カニ!フォーーーー!!」」

 と、二人でジェスチャーをしながら叫んだ。

『………』

 全員呆気にとられて黙っていたが、与一がそのラケットを後ろにいるワールドに渡した。

「ほら、次やりたいねやろ?ルールは簡単、自分のところで二回バウンドしたらアウト、持ってもアウト、打つときは自分の所と相手のところで二回バウンドさせる、逆にバウンドしやんと打ち返すのもアウトな?じゃあ俺はコフィ牛乳飲むからガンバ」

 と、そう言って与一は食堂車に向かった。

「ゆーきのふるよーるは、わーたーしーはーひーとーりー」

 と、与一は歌いながら廊下を歩いていた。

 そして、ふと外の景色を眺めると、何を思ったのか立ち止まって外の景色を眺め続けていた。

「……」

 そして、暫く呆けていると、与一は再び歩き出した。

「……あったあった」

 与一はコーラ以外の飲み物がたくさん入っている冷蔵庫を開けると、そこからコーヒー牛乳を取り出した。

「………んっ」

 与一はそれを飲みながら窓から外の景色が見えるところに座った。

「……」

「聞いていたな?」

「っっっっげほぉっ!」

 与一は吹き出しそうになるのを堪えて、牛乳を飲み込んでから盛大にむせた。

「がほっ……な、何の事や?セツ?」

「………」

 セツは与一の質問に応えることなく、与一の前の席に座って外の景色を眺めていた。

「………なんかあったかいの出そか?」

「………おまえのそれと同じ物を」

「冷たいでこれ?」

「おまえで体調を崩さないのに、私で体調を崩すはずがないだろう」

「……わぁった、ちょっと待っとき」

 与一は席から立ち上がると、先ほどと同じ様にコーヒー牛乳を取ると、同じところに座ろうとしたが、セツが先ほど自分が座っていたところに座っていたので、ため息をつきながら先程セツが座っていた所に与一が座った。

「あいよ、コーヒー牛乳な」

「うん」

 セツはそれを受け取ると、蓋を開けてちびちびと飲み始めた。

「「……」」

 二人は黙って暫く外の景色を眺めていた。

「………」

 与一は牛乳を飲み干すと、その場でスマホを取り出して色々と操作し始めた。

「………何をしてる?」

「ちょっとな、ゲームをば……」

「………」

 セツは目を細めると、持っていた瓶を置いて、与一のスマホを取り上げた。

「あっ!ちょっ!」

「人と一緒にいるときはこう言うものは触るな」

「んーなん俺の勝手やろーが……」

 と言いつつも、与一はセツからスマホを返してもらうと、それをポケットにしまった。

「……なんの様なん?」

「……私が先に質問したのだが、質問に質問で返さすな」

「……め………ハイハイ、聞いてませんですよ、なんのことかさっぱしやな」

「……嘘つき」

 与一はその言葉を聞いてため息をついた。

「そんなこの世界の人らって耳ええの?」

「そんな事はないが……まぁ、正直ここにいる奴らは全員異常だ」

「……はぁ、なんか聞かれてたら問題やった?」

「開き直るのか?」

「それ言われたらツラいなー……ごめん、勝手に聞いて」

「………まぁ、あそこの作りに問題があるのだが」

「ならなしてロキやなくて、俺に言うたし……」

 与一はゲンナリとしながらセツにため息をつきながらそう言った。

「……お前は……何なんだ?」

「えっ?唐突に哲学ふんのやめてくれん?」

 与一は困惑気味にそう言うと、顎に手を当てて唸りながら考えだした。

「……あれちゃう?テキートー男」

「…………」

 しかし、セツの表情によるとまだ納得していない様だった。

「……んーなん分からんて!それやったら次俺の質問タイムな!」

「……お前は奇妙な男だ」

「は?」

「なんでお前は、奴隷であるノヴァに対して対等に扱う?」

「え?だってなんか嫌やん?何かそういう風に扱って、やーな感じの目でさぁ、見られるの……」

「……抽象的過ぎないか?」

「わー!もう!なんよ!?もう!はい!正直に言います!かわいそうだと思ったから助けたのに、かわいそうなことしたら俺がむかつくからしてないんです!はい!もうええ!?これで満足!?」

 最後の方は悲鳴交じりに吐き出した与一は、くたっと椅子にへたり込んだ。

「………感情的だな」

「感情的でけっこーけっこーこけこっこー……」

 と、与一はひらひらと手を振って立ち上がった。

「……何か服買い行こか?」

 と、唐突にセツのゴワゴワの服のセンスのない与一の目から見ても酷い服を見て与一はそう言った。

「しね」

 それに対してセツの反応は辛辣だった。

「ウィ……」

 与一はため息をついて瓶を手に取ると、キッチンの流台に立った。

 瓶を軽く洗って乾かす為にひっくり返して置く専用の所に置くと、与一は食堂車から出た。

「……次はなぁんですか?」

 与一は後ろにひっついて歩くセツに痺れを切らし始めたのか、少しイラつきが窺える声で振り返ることなくそう言った。

「……」

「……なんか言ってくれやな、俺何もしてあげられへんねやけど?」

「後ろについていくからきにするな」

「あっそ」


 与一はもうどうにでもなれ、と手を上げて寝台車に向かった。

 セツの部屋の前に着くまで二人は何も喋る事は無かった。

 そして、二人はセツの部屋の前に着くと、

「じゃあおやすみ」

「……」

 バタン

 と、目の前で扉が閉まるのを見届けると、与一はため息をついて頭をバリバリとかいて、自分の部屋のベッドに寝そべった。

 そして寝返りを打つと、そこには美しい白い肌の夜空に輝く星の様にキラキラとした目の顔があった。

「……グー」

「寝るな」

 セツは与一の顔をつねるとそのまま引っ張って起き上がらせた。

「いったたいったい!何なんもう!ええ加減にしぃや!?」

 与一はキレ気味にそう言って起き上がると、口元に人差し指を当てられて黙った。

「静かにしろ、外に聞こえる」

「………何なん?寝込みぶち殺しに来たわけや無さそうやけど」

 与一は唇から人差し指が離れると、ため息をつきながらそう言った。

「……さっきの話の続きだ……少し話したくなった」

 と言ってセツは、与一の服からコーラを一本どうやってか拝借して椅子に座った。

「……何の話?」

「そうだな……お前達が私とカミラの話を聞いていた話だ」

「悪かったって……」

「それはもういい、そこじゃない……肝心なのは……お前がカミラ達をどう思っているかだ、未遂とはいえ差し違える覚悟で戦った相手を自分の近くに置くのは正直正気の沙汰ではないのだが……」

「んーなんどーでもええわ、死ぬときは死ぬ、ただ簡単に死ぬつもりはない、以上!」

 と、与一は淡々と告げて、セツの手を握った。

「……もうええか?」

 すると、セツは驚いた様に目を見開いた。

「………」

「……ごめん、ちょっとやり過ぎた」

 と、与一は急に反省した様にセツの手を離した。

「ごめん急に手ェ掴んだらして、キモかったな、ごめんな」

 と、与一はそう言ってベッドに寝込んだ。

「……おやすみ、はよねぇや、夜更かしは美容に悪いらしいからな」

 すると、セツは瓶を机に置いて与一のそばに近寄って、

「もう一度……」

 と、ささやいた。

「何?」

「もう一度手を握って欲しい」

 至極純粋な目線で見られた与一は、困惑した様な表情をしたが、セツの手を恐る恐る握った。

「……暖か……熱いな……お前の手は……」

「なんで言い直したし」

 与一はそう突っ込んだがセツはそれを綺麗にスルーすると、その手をほっぺたに持っていって、顔を撫でた。

「っっっっっ!!!!!」

「………意外と子供なんだな……こういうに喜んで襲ってくるとまで思ったんだが……」

 与一のあまりにも童貞なリアクションにセツはキョトンとしながらそう言った。

「お前ぇ……襲われてもよかったんけ?」

「言い訳ないだろう、襲われたらここで殺すつもりだった」

「え?待って?もしかして、俺のとこ来た目的それ?」

「全く持って違うが?」

「あそう」

 と、与一は疲れた様にそう言うと、ベッドに再び寝転がった。

「……なんやもう分からんけど、もう寝ぇ、きっと疲れとんねん」

「……そう……だな、気持ちの悪いお前になんでこんなことをしたのか……」

「ストレートに悪口本人の前で言わんでくんね?流石に死にたくなるで?」

「…………そう言う所だ」

 と、ドアを開けて部屋からの去り際にそう言ってセツは与一の視界から消えた。

「……わんちゃん?」

「いやー、ノーチャンだね」

「………グォ~」

「じゃあ私もそこで寝よっと」

「「…………」」

「ね、ねぇ、恥ずかしいから離れて?」

「…………グー……」

「じゃあベッドからおーとそっと」

「………ぐぇっ」

「やっぱ起きてたじゃん!」

 ユウラビは与一のことを何度も足で踏むと、怒った様にほっぺを膨らませた。

「もう!お前ら何なん!?俺ことす、す、す……」

「ぷっ、ないない」

「やったら何やねん!」

 与一は涙目になりながらロキにセキュリティを強化してもらおうと、相談することを誓った。

「え?お話だよお話……」

 すると、ユウラビはセツと同じ様に与一の服からコーラを拝借しようとしたが、失敗してほっぺを膨らませた。

「フグか?」

「何のことかわからないけど馬鹿にしてるのはわかったよ」

 ユウラビは与一に組みついて関節技を決めようとしたが、与一はそれを怪力で無理やりねじもどした。

「……女の子には優しくしなよ?」

「お前らの方が優しくしてこやへんからったら話は別やろ?」

 と、与一は掴まれた腕を意外にも痛かったのかさすりながらそう言った。

「……ほら、話って何?」

 与一はコーラをユウラビに渡すと、自分自身もコーラを開けた。

「結局くれるんだ……なーんかやな感じ……」

「いやだって……」

「セツはセツ、私は私、オッケー?」

「……悪かった、ごめん」

「……今度から気をつけてね?」

「あい……」

 与一は若干理不尽と思いながらも、頭を下げた。

「それで話ってのはね……本当に昔の事覚えてないのって事」

「昔……なぁ、残念やけどほんまに知らんねん、人違いちゃう?世の中には似てる人間三人ぐらい居るらしいし」

「ふーん……名前も雰囲気も喋り方も身長も同じ人っているのかなぁ?」

「……どう言う事や?」

「……本当の本当に覚えてないの?」

 ユウラビの眼差しは真剣だった。

「………ごめん……ほんまに何のことか分からんねん……」

「…………本当みたいだね……うーん、何でだろうね……じゃあ、やっぱりロキねぇに聞くしか……」

「ごめんな?」

「うん、いいよ、じゃあまた明日、街をいっぱい案内してあげるね?」

 と、ユウラビは眩しいほどの笑顔で笑うと、与一の部屋から出て行った。

「………次は誰や?」

「………………………」

 与一は今度こそだれもいない事を確認して、ベッドに寝転んだ。

「……」

 そして、しばらくすると、与一の部屋には爆音のイビキが響き渡った。
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