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ラルファ戦犯

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「グアアアア!」

 魔王はこの前あったときのナイスミドルとは違い、巨大な胴体から蜘蛛のような八本腕を出した姿で僕たちを襲ってきた。

 魔王のおっさんのこれって最終形態だよな?
 ラスボス戦ってのはボスがどんどん姿を変えていくから面白いのに、これでは全く絵的に面白くない。

 しかもバルスたちは修行したことで、おっさんの三倍近く強くなってるから戦いは一方的なものになった。

「なぁバルス。魔王って思ってたほど強くないな」

「油断するなグレスト。魔王は追いつめられると更に強い姿へと変身すると古い文献に書いてあった」

 バルス。今が最終形態だから。
 そうか。ラスボスの形態変化ってレベルの高い敵を油断させる為だったのか。
 違うなうん。

「てか、エニシのほうが強いんじゃね?」

 ギクッ。ラルファめ、余計なこと言いやがって。
 疲れてるふりしとくか。

「ハァハァ。僕はあの空間だと通常の100倍強くなるようになってるんだよ。そうでもなければ君たち六人を圧倒できるわけ無いだろう?」

 ここで僕が魔王より強いことがわかったら、なんで一人で戦わないの?ってなるから、あるあるネタの敵の時は強いけど味方になった瞬間に弱体化するキャラになる事にした。

 フッ、子供の頃あんなにムカついてた存在になるなんてな。

「何だよ、使えねぇな」

(おい、落ち着け。ラルファがバカなのは分かってるだろう)

 ギリギリと拳を握りしめて歯ぎしりする僕を理性が嗜めた。
 ラルファめ、あいつは本当に腹立つな。

「グオオオ!」

 魔王がこっちに向かって走ってきた。キモい。
 とりあえずフラガラッハを投げまくっておっさん周りをワイヤーだらけにする。
 中二が使ってないときのフラガラッハは二本で一組だ。両方の柄から伸びるワイヤーが繋がっている

 そして跳躍からの、ワイヤーの上に着地。目にも止まらぬ速さでワイヤーからワイヤーへと移動してすれ違いざまに魔王を斬りつける。

 僕は中二と違ってフラガラッハを使いこなせないから、この身体能力に完全に依存した雑な戦い方しかできない。
 だけどこの戦い方もこれはこれでと、最近思い始めた。

「十分の一であれか?どのみち強くないか?」

 もう都合の悪い言葉は無視しよう。
 戦いが始まってから30分くらいだったところで魔王は既に虫の息だった。
 八本の腕は半分以上切り落とされ、青い血が滝のように流れ出ている。

「よっしゃー。俺がとどめを刺してやる」

 ラルファが魔王に向かって走り出した。
 はいラルファ戦犯だ。
 なんでこいつは数%の確率を出してしまうんだ?

「ぐへっ」

「シマッター。マホウガスベッター」

「魔法って滑るもんだっけ⁉」

 一の力のファイアボールでラルファの後頭部を打ってこけさせた。

「今だバルス!とどめを刺せ!」

「お、おう。なんか釈然としないが、『サンシャインブレイク』!」

「ギヤァァァァ!」
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