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毒大盛り

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 とりあえず男女の部屋に分かれてのんびりしていると食事の呼び出しがかかった。
 どの食事に毒が入っていても良いように鑑定眼鏡を掛けていく。まあこの心配が杞憂で終われば必要ないが一応な。

「待ってたのダーリン。こっちなの」

 細長い長方形のテーブルには美味しそうな料理が所狭しと並んでいて、テーブルの上に置かれた小さな椅子に座っているロメイアが自分の後ろの椅子を指差した。

 俺が上座?並びは俺、ロメイア、、ロメイアの家臣、俺の仲間の並びだ。
 俺とロメイアの料理の量の差がない。彼女は小さいままなのに食べられるのか?

「おいロメイア、そんなに食えるのか?」

「余裕なの」

 どちらのサイズでも食べる量は同じらしい。
 明らかにフェアリー形態のロメイアの体積より料理が多いけどな。

 さて、念の為料理を鑑定…………お、おう。全部毒入りね。
 毒マシマシとか注文したかな?

 冗談はさておき、殺意高すぎだろ。
 ヴァイオレットたちには盛られてない。俺さえ殺せば何とかなると思ってるのだろうか。

「どうしたのダーリン?」

 唐突に俺が涙を流したのを見てロメイアはあたふたとしながら聞いてきた。
 あ、もちろん嘘泣きです。

「いや、やはり俺は歓迎されていないらしい。もうお暇させてもらう」

 席を立った俺をロメイアは、慌てて大きくなって捕まえた。

「どうしたの?ロメイアたちはダーリンを歓迎しているの」

「だったらどうして食事に毒が盛られるだろうか。扉の外も殺気が甚だしい」

 俺が扉の外に待機させてある兵の存在を見破っていたことに気づき、何人かの家臣がドキッとした表情をした。

「毒?みんながそんな事するはずがないの。さっきのシャクリーンの態度が気に入らないの?」

 俺が何も言わずに首を振ると、なんとロメイアが自分で毒味をすると言い出した。

「ロメイアのお城の料理は美味しいの!ダーリンにも食べて欲しいの」

 ロメイアがフォークを使って肉を口に入れようとした瞬間、シャクリーンが彼女の腕を掴んだ。

「…………シャクリーン?」

 ロメイアはシャクリーンの切羽詰まった顔と食べようとしていた肉を交互に見て、俺が言っていたことは事実であることを察し、泣きながら部屋を出ていってしまった。
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