神様になりましたが願いを叶えてあげるかあげないかは"俺"次第

竹野こきのこ

文字の大きさ
8 / 20

神様の作戦

しおりを挟む
「神さん、直接行くんは分かったけど、そこでの作戦ってなんやの?」

 となりで歩くオスのデブ猫……いや三毛猫は、気になるようでしつこく話しかけてくる。

 俺は今回の作戦には、少しだけ自信があった。というのもサブローが現れてくれた事が大きい。

 町中を歩き、迷わずに向かう。サブローもその事は知っている。

「なぁ、やっぱり殺すにしても作戦っちゅうもんがあるんちゃうか? 危ないからミイコ置いて来たんやろけど……」

「サブローさんは、妖怪なんでしたっけ?」
「そうやで。それいうたらミイコも猫又なんやけどなぁ……」

 ほぼ見た目は猫と変わりは無いのだが、長い間生きて化ける事ができるようになると猫又になるのだという。

「やっぱり妖怪って強いんですか?」
「まぁ、猫又が強いんやのうて、ワシが強いんや。ミイコは同じでも綺麗に化けるのが得意やからなぁ……」

 確かに、ミイコが巫女になっている時は普通の人間と言われても全く違和感が無い。あれはあれであの子の能力だったわけだ。

 そうこうしているうちに、俺たちはビルの前に着いた。

「なんやのここ? もしかしてここかいな?」
「そう、おじさんを追いやった人の事務所が3階にあるみたいなんだ」

「やっぱり神さん、そのまま突入やんか!」
「サブローさん、もしかしてびびってる?」

「そんなわけあるかい! ワシは巷ででも恐れられた猫又やで? せやけど、今のご時世そのままザックリ行くんは危なないか?」

 サブローのいう通りここで、そのまま突入する時代では無い。それに、元々そのつもりは全く無かった。

「サブローさん、ちょっといいかな?」
「わかった、わかった。もう、ワシもはらくくったわ」

 近づいてきたサブローに、作戦を説明する。

「はーん! なんやそういうことかいな! それやったらまかしとき!」

 サブローはそう言ってビルの中に入って行った。
うまくやってくれるといいんだけど……。

 事務所の方は彼に任せるとして、俺は再び歩き出した。そう、これはサブローさんにだけ任せる訳には行かない。こっちはこっちで、別のする事があった。

 俺はまず、開運グッズ屋さんに向かう。神様が開運グッズを買うなんて変なはなしなのだが、一番それっぽいものが売っているからだ。

 いくつかのグッズを買うと、俺はあのおじさんのところに向かう。お店を経由してもお客さんとして来ていたのもあって意外と近い場所におじさんの家はある。

 あ、そっか……このままじゃ見えないんだったっけ?

 少し物陰に隠れ、姿を見えるようにすると、おじさんの家のインターホンを鳴らした。

「すいませーん!」

 しばらくして、アパートの奥から物音が聞こえる。多分警戒しているのだろう。

 再びインターホンを押すと、チェーンをかけたままドアが開いた。

「あの……どちら様でしょうか?」

 そう言われ、一瞬焦る。まさかこないだ願いを受けた神様ですという訳には行かない。俺は元々の本名で名乗る事にした。

「神代と言う者なんですけど……」
「はい……」

 おじさんは、チェーンを開けてくれる様子は無く、そのまま話を進めようとした。

「あの……おふだ入りませんか?」
「ちょっとそう言うのは……」

 当たり前だ、今のままではお札を売りつけようとしている悪徳業者にしか見えない。おじさんがドアを閉めようとしたので慌てて叫ぶ。

「あのっ、自殺とか考えてますよね?」
「えっ……い、いや……」

 動揺したのか、閉めようとしたドアが止まる。俺はそのまま追うように言った。

「それに……殺したい人がいる……」
「ど、どうしてそれを……」

 このまま私は神ですとか言ってしまおうかとも思ったが、話をするのが優先だ。俺は少し怪しい宗教の人の様に、おじさんのそれまでを当てた。

「なんでそこまで……」

 少し当て過ぎたかなとも思いつつ、おかげで占いなんかを絶対に信じなさそうなおじさんも、次第に俺のはなしを聞き始めた。

「そこまで分かっておられるのでしたら、私はこれからどうすれば良いのでしょうか?」

 そう言って、未だに悲壮感漂う彼に開運グッズ屋さんで購入した紙袋を渡した。

「これを持ってその人の所にいきましょう!」

 雑な決め台詞と、怪しさ満点の"開運"と書かれた紙袋なのだけど、教祖様と化した俺の言葉を信じ付いてきてくれる事になった。

 よし、これで反撃開始!
 あとはサブローさんが上手くやってくれていれば……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

処理中です...