剣が無ければ女の子を持てばいいじゃないか?

竹野こきのこ

文字の大きさ
4 / 6

04 信頼関係

しおりを挟む
「わかってるっすよ!」

 ロランはそう言うと、気遣う様にラニの手を引きリビングの方に歩いて来た。

「だから……」
「陛下にたのまれたんすよ。師匠の家の周りに小さい子がいるはずだって」
「アレクの奴……」

 ロランは慣れた様子でマティスの向かいに座ると、ラニを隣にちょこんと座らせた。

「ロラン、そいつは危ないぞ……」
「何言ってんすか、こんなに小さくて可愛らしいじゃないっすか?」
「お前はそいつの怖さを知らないだけなんだ……」

「なるほど……そしたら、自分にもこの子の事情聞かせてもらえないっすか?」

 ロランは落ち着いた様子で、マティスの方を見た。多分彼はアレクに頼まれた際に、ある程度話を聞いていたのだろう。

 マティスはロランにアレクからラニを貰い受けた事、そこからタロトとの交戦までの事を細かく話した。彼は相槌をうつように頷き、話が終わると口を開いた。

「それ、ラニちゃん何も悪く無いっすよね?」
「は? タロトを喰ったんだぞ? お前話聞いてたのか?」

 マティスの勢いにラニは肩を竦め下を向く。

「だって、食べたのも自分を守る為か師匠を助けるためっすよね?」
「そうだけど……剣の無い今、こいつがいきなり襲いかかって来たらどうするんだよ……」

 するとロランはスッと立ち上がり、自らの剣を抜くと鋭い剣線でマティスに突き付けた。

「うぉっ! いきなり何すんだよ!」
「チェックメイト……それを言うなら、自分も丸腰の師匠なら勝てますよ? 怖いっすか?」

 ロランのいきなりの行動に、言葉をつまらせた。
 するとステラは割り込む様に野菜のスープをロランの前に置いて言った。

「マティスさんはまだその子の事を信頼して無いだけなんじゃ無いかい?」
「……はい」
「それを言うなら、持ち主を傷付けないっていう盟約のある【大罪武器】の方が自分より信頼できるっすよ?」
「そうは言ってもだな……」

 頭を抱えるマティスに、座り直したロランは追い討ちをかけるように言う。

「師匠らしく無いっす……」
「らしく無いって、俺は……」
「隠してるつもりかも知れないっすけど、怖がりなのは知ってるっす」


「はぁ!? うそだろ!!」


 マティスは驚いて席をたつ。それを見て驚いたのか、猫のクロは離れる様に玄関に向かい走って行った。

「弟子になって4年……その事に気づかない方が変すよ。それでも自分の力を過信ぜず、冷静かつ合理的にどうすれば安全かを求めて乗り越えて来たのが師匠っす……」

「ちょっと待て、いつ頃から気付いてたんだ?」
「野営してるゴブリンキングを討伐しに行った時っすかね?」
「いやいやいや……それ、初めて一緒に行った依頼じゃねーか」

 ――まさかそんなに早くからロランは気付いていたのか……。

「でも、あの時っすよ。師匠に付いて行こうと思ったのは……この人のレベルでも怖いんだ、それでもちゃんと自分の事を助けようとしてくれる人なんだって……」
「あの時はロランが考えなしに突っ込んで行ったからだろ?」

「いや、足震えて目が泳いでいる人に行かせられないでしょ! でも、ちゃんとやられそうになったら自分の前に立ってくれましたよね?」
「いや……まぁ……」
「そこから、ゴブリンキングを瞬殺した時は殴ろうかと思ったっすけどね。そんな簡単に倒せるなら早く行けよと……」
「あの……上げるか下げるかはっきりしてもらっていいかな?」

 ロランは笑うとラニの頭をやさしく撫でる。ラニも嫌がる様子も無く目を細めて笑った。

「あの時の自分より、ラニちゃん可愛いっすよ? 大人しいし、いい子じゃ無いっすか~。ほらほっぺたもプニプニで~!」

 ガブッ!

「痛っ! 噛んだ!」
「ははは、今のはロランが悪いだろー」

 マティスが笑うと、ロランはニヤリと笑う。

「ほら、大丈夫っすよね?」
「……まぁ……な」
「はい、ラニちゃん師匠の隣に座るっす!」

 彼がそう言うと、ラニはオドオドしながら上目遣いになる。それから、マティスを見ながら小さい声を出して言った。

あるじ……座ってもいいの?」

 その可愛らしい姿にマティスは少し照れながら頷くと、彼女は嬉しそうにマティスの膝に乗って笑顔になった。

「えっ! 膝にすわるのか!?」
「いいじゃないっすか~! なんか親子みたいっすねー!」
「あら本当、どことなくマティスさんに似てるんじゃないかい?」

「そんな事は……無い。そして、身に覚えもない」

 ニコニコとマティスを見上げるラニを見てマティスは小さい声で囁いた。

「変な事言ってごめんな……」
「ラニも怖がらせてごめんなさい」

 ロランのおかげで、少しだけラニとの距離が近くなった様に感じた。ラニは心の無い武器なわけじゃ無い……ちゃんと意志のある一人の女の子なのかもしれないとマティスは思い始めていた。


「なんかいい雰囲気の中悪いんすけど……師匠はとりあえず騎士団解雇なんで!」

「……えー!?」
「いやいや、自分で陛下に剣が持てない以上無理だって言ったんすよね?」
「言ったけど……こいつ飯めちゃくちゃ食いそうなんだけど……お金大丈夫かな……」

 ラニを見ると緊張が解けたのかテーブルのパンをこれでもかと言わんばかりに頬張っている。どう考えても大食いなのは間違い無いだろう。

「まあまあ、剣にする事が出来るように陛下からのアドバイスをもらってるっす!」
「アドバイス……?」


「陛下ほ使えるようになる為に、大罪武器を自由に使いこなす【精霊王ルノワール】の所に行けって言ってたっす!」

 【5つの災】の一つ、精霊族。人族とも友好関係にあるそこの長であれは【大罪武器】を持っていてもおかしくはない。

アレクが【大罪武器】を自由に使いこなすと言っているから、ルノワールが詳しいという裏付けが有るのは間違い無いだろう。

だが……。

「……精霊族の国って何処にあるんだ?」
「いや、それは知らないっすよ……」
「……それは無理じゃないか?」
「探すのも試練っすよ! 精霊教会とか、それっぽい所から当たってみるっす!」
「それなら、ロランもくるんだよな?」
「いや自分は、師匠の引き継ぎと騎士団の仕事があるんで行けないっすね……」
 ――ロランとアレクの薄情者ー!


 こうしてマティスは、翌日からラニを連れて【精霊王】を探す為に精霊教会に行ってみる事にした。


 ──精霊だから精霊教会って安直過ぎないか?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。 - - - - - - - - - - - - - ただいま後日談の加筆を計画中です。 2025/06/22

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

二度目の勇者は救わない

銀猫
ファンタジー
 異世界に呼び出された勇者星谷瞬は死闘の果てに世界を救い、召喚した王国に裏切られ殺された。  しかし、殺されたはずの殺されたはずの星谷瞬は、何故か元の世界の自室で目が覚める。  それから一年。人を信じられなくなり、クラスから浮いていた瞬はクラスメイトごと異世界に飛ばされる。飛ばされた先は、かつて瞬が救った200年後の世界だった。  復讐相手もいない世界で思わぬ二度目を得た瞬は、この世界で何を見て何を成すのか?  昔なろうで投稿していたものになります。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

処理中です...