乙女ゲーの世界に聖女様として召喚されたけど興味がないので妹に譲ります

ゆずぽんず

文字の大きさ
7 / 10

まだ監視は続く

「やあ、どう?牢屋の感想は」
「最悪」
「相変わらず俺のこと嫌いだねえ」


ひょこ、と現れたアレンに姉は毒吐いた。こいつ嫌いと脳が信号を送っている。
妹はさっと姉の背中に隠れる。


「王様には君たちのことを報告したよ。まあ様子見かな」
「でしょうね。フィルから色々聞いたから」
「そうなんだ。フィルとも話し合ったんだけど片方が聖女様の可能性も捨てきれないから暫くは君たちを城で飼うことになったんだ」


脳裏に浮かぶフィルの顔。フォローしてくれたのだろうか、あの人にそんな力があるとは驚きだ、と思っていたら妹がこそ、と教えてくれた。


「フィルは聖女様の研究をしてるの。研究者的な」
「なるほど」


聖女様の何の研究をしてるんだろ、というのは今は放っておいて。
後でお礼を言っておこう。
アレンが鍵を開けるとおいで、と手を差し伸べてきた。それを姉はじっと見て…


「さ、行こ。チカ」
「う、うん…」
「えー無視?」





「今からどこに行くの?」
「君たちの部屋。牢屋にいて疲れたでしょ?暫く部屋でゆっくりしてなよ」


牢屋が部屋に移っただけでどっちにしろ捕まってることには変わりないのか…と姉は冷たく思う。
それプラス彼の監視も入っているわけで。

どうにかして元の世界に戻る方法を考えないといけない。

するとふと視線を感じた。ここで働く侍女だろう。侍女たちがこちらを見てひそひそと話している。「…」と姉は気にも止めず歩き進めた。


「ここが君たちの部屋だよ」


アレンがとある部屋の扉を開けようとすると「聖女様ーー!!」と後ろから大きな声が聞こえた。へ?と後ろを振り向こうとするとがばっと抱きつかれて視界が真っ暗になった。


「ぎゃっ、」
「お姉ちゃん!」


ごっと後頭部をドアにぶつけて床に倒れた。
「聖女様ーー!会いたかったー!」と青年に抱きつかれているが姉は口から魂が出て気絶している。「あれ?聖女様?」と青年が彼女の様子に気づくと後ろの襟をアレンに掴まれた。


「なーにしてるの、リオ」
「アレン!聖女様が召喚されたなら言ってよ!俺、ちょー会いたかったんだから!」
「だとしても急に抱きしめたら駄目でしょ。相手は女の子だよ」


離してー!とジタバタする白髪が跳ねた髪型にして水色と白のパーカーを着たラフな格好のリオと呼ばれた青年。アレンよりも背が低い。


「お姉ちゃん!大丈夫!?」
「いたた…大丈夫…」
「あれ?そっちの子は?」


リオの目が妹を捕える。じっと見つめられて、妹はぱっと顔を明るくして、すぐに目を泳がせて俯いた。攻略対象だ!と一瞬思ったけど自分の立場を思い出して騒げずにいる。
代わりにアレンが答える。


「聖女様かもしれない子だよ。さっきリオが抱きついた子も」
「かもしれない?」
「今回、召喚されたのがこの二人だからだよ。いつもなら聖女様は一人だけ召喚されるでしょ。リオ、どうして姉の方に抱きついたの?」
「あ!緑の髪の子しか見てなかった!なんだー、二人いたのか~」
「はあ…」


あははと笑うリオにアレンは呆れつつ座り込んでいる姉の方に話しかけた。


「大丈夫?ほら、立てる?」
「あ、うん」


アレンの差し伸べた手に自分の手を重ねようとして…姉は手を引っ込めた。そして、彼の手を借りずに部屋に入ると「うわー、凄く広ーい」と棒読みで喜んだ。
その様子を見たリオはアレンに聞いた。


「アレン、嫌われてる?」
「あはは、そうみたい」
感想 0

あなたにおすすめの小説

宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです

ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」 宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。 聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。 しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。 冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

聖女じゃないと追い出されたので、敵対国で錬金術師として生きていきます!

ぽっちゃりおっさん
恋愛
『お前は聖女ではない』と家族共々追い出された私達一家。 ほうほうの体で追い出され、逃げるようにして敵対していた国家に辿り着いた。 そこで私は重要な事に気が付いた。 私は聖女ではなく、錬金術師であった。 悔しさにまみれた、私は敵対国で力をつけ、私を追い出した国家に復讐を誓う!

妹に裏切られた聖女は娼館で競りにかけられてハーレムに迎えられる~あれ? ハーレムの主人って妹が執心してた相手じゃね?~

サイコちゃん
恋愛
妹に裏切られたアナベルは聖女として娼館で競りにかけられていた。聖女に恨みがある男達は殺気立った様子で競り続ける。そんな中、謎の美青年が驚くべき値段でアナベルを身請けした。彼はアナベルをハーレムへ迎えると言い、船に乗せて隣国へと運んだ。そこで出会ったのは妹が執心してた隣国の王子――彼がこのハーレムの主人だったのだ。外交と称して、隣国の王子を落とそうとやってきた妹は彼の寵姫となった姉を見て、気も狂わんばかりに怒り散らす……それを見詰める王子の目に軽蔑の色が浮かんでいることに気付かぬまま――

聖女のはじめてのおつかい~ちょっとくらいなら国が滅んだりしないよね?~

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女メリルは7つ。加護の権化である聖女は、ほんとうは国を離れてはいけない。 「メリル、あんたももう7つなんだから、お使いのひとつやふたつ、できるようにならなきゃね」 と、聖女の力をあまり信じていない母親により、ひとりでお使いに出されることになってしまった。

虚弱体質で偽聖女だと追放された私は、隣国でモフモフ守護獣様の白き聖女になりました

・めぐめぐ・
恋愛
平民孤児であるセレスティアルは、守護獣シィに力を捧げる【聖女】の一人。しかし他の聖女たちとは違い、儀式後に疲れ果ててしまうため「虚弱すぎる」と、本当に聖女なのか神殿内で疑われていた。 育ての親である神官長が拘束され、味方と居場所を失った彼女は、他の聖女たちにこき使われる日々を過ごす。そしてとうとう、平民が聖女であることを許せなかった王太子オズベルトによって、聖女を騙った罪で追放されてしまった。 命からがら隣国に辿り着いたセレスティアルは、そこで衰弱した白き獣――守護獣ラメンテと、彼と共に国を守ってきた国王レイと出会う。祖国とは違い、守護獣ラメンテに力を捧げても一切疲れず、セレスティアルは本来の力を発揮し、滅びかけていた隣国を再生していく。 「いやいや! レイ、僕の方がセレスティアルのこと、大好きだしっ!!」 「いーーや! 俺の方が大好きだ!!」 モフモフ守護獣と馬鹿正直ヒーローに全力で愛されながら―― ※頭からっぽで

追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている

潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。