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「お…おい!」
「ギャー!やっぱり気付きますよねぇ!すみませんすみません」ハルヴァは背後から掛けられた声に怯えながら土下座した。
「……そ、そんなことはしなくていい。昨日いつ帰った?」ディオスは土下座するハルヴァに触れようとした手を引っ込めて代わりに腕を組んでそっぽを向いた。
「へー?じゅ、18時位?ですかね…あ、あの」ハルヴァは顔を上げると目を泳がせた。怒られるかなぁ…と思ったからだ。
「……なに?く、くそ…おい…いいか…これから買い物に行くからちょっと待っていろ。そこから動くなよ?勝手に帰るな…いいか?す、座っていろ…椅子に!必ず俺は戻ってくるから!」
「へ?……わ、私も行きます?」
「あ、当たり前だろ…」ハルヴァはディオスが顔を真っ赤にして怒っているので(帰りたい…)と思いながら立ち上がり椅子に座った。
「…ま、待たせたな、では行こうか」
ディオスはハンカチで手を拭いながら歩いて来るとハルヴァの隣に立ちそう言った。
「あ、いえ、はい」
ハルヴァが立ち上がってもディオスは歩き出さないので「あのー…」とハルヴァは声を掛けた。
どこに行けば良いのかもわからない…
ディオスは硬く握った拳を開きズボンに擦りつけるようにすると「……手でも…つ、繋ぐか」と息も絶え絶えな様子で言ってきたのでハルヴァは笑った。
「え!?あははは!それはいけませんよー!」
「な?そ、そうか?」
「はい!あははは!面白い!私と手を繋ぐなんて!そんなバカな!見られたら困るじゃないですかー!」
「……そうだよな。そんなことは…してはならんよな。俺は…そうだった…すまん」ディオスはそう言うと再び軽く拳を握り手を身体の横に下ろした。
(ディオス様ったら面白い冗談を言うものだわ)
「…………」
「…………」
気まずい沈黙の中、ハルヴァが胃をキリキリさせていると頭に挿した花に視線を感じたので触れる。
「あ、これですか?これは患者さんが」
「……野草じゃないか、俺だったら店で買った高い花をプレゼントする」
「…あ、そうですよね。あはは、私はこれで嬉しいので…」
「……そんなもの…なぜつけてる?外したらどうだ」
「え?仲が良い患者さんからいただいたので…」ハルヴァはディオスの言葉にショックを受けた。(似合ってないのかなぁ…ジョンさん優しいから素敵だ、と言ってくれたのね)
立ち上がるディオスについて行く。
馬車に乗ると向かい側で仏頂面をしているディオスが脚を組みながら「……仕事辞めてはどうだ?」と不機嫌そうに言った。
(あ、この前余計なこと言ったからかな?)
「大丈夫です」ハルヴァはディオスが心配してくれているのか、とにっこり微笑んだ。
それに仕事を辞めたとしてどうなるのだ…また、新しい職場を探す必要があるしトラブルは自分が仕事ができないのが原因なのだからどこに行っても同じだし変わらない、とハルヴァは思った。
(それならサラがいる所がいいし)
「……」
「……」
(気まずいなぁ…)
「お…女はどんな店がいいんだ」
「どんな店?服ですか?宝石ですか?それとも食事?」
馬車から降りるとすぐそこで待っていたディオスが腕を組みながらそう言った。
「わからん…何が欲しい?服と宝石が欲しいのか?花は?腹が減ったのか?」
「え?ひ、人によるかと…お花はすぐに会うのなら買っていかれて大丈夫ではないでしょうか?ごはん時なら食事に行かれてもいいかもしれませんね」
「じゃ、じゃあ花は?花を買ってやる!それを挿したらどうだ!?」
「え!?萎れてしまうのではないですか?挿したら?頭にですか?それは素敵ですが…お花は今は買われない方がいいかと…」
「……む…難しいな…今は飯時か?」
ハルヴァはディオスからそう尋ねられて広場にある時計を見上げた。時刻は18時だ。
「あー、確かに夕飯時かもしれませんね」
「……」
「……」
「じゃ、じゃあっ!飯だな!飯!何が食いたい?」ディオスは顔を真っ赤にするとパチンと手を叩いた。
「え?わ、私?私ですか?えっと…えとえと…」ハルヴァはなんだか緊張して食欲がなかったので何も考えつかなかった。
「あ、あの…!ディオス様の行きたい所を提案してみてはどうですか?何か食べたいものとか…」
「お、俺?俺か?………………」ディオスは腕を組むと熟考しているのか眉にシワを寄せて目を閉じた。
「……に、肉と酒だな…」(海賊みたい!)
「あ、あの!まあ、今日は!お店に行ってみてはいかがでしょうか?えーと…あの、大体の女性は宝石は嬉しいと思います!服だとサイズがあるから…一緒に来ないと難しいですよね」このままではディオスと恋人の食事が海賊の晩餐になってしまう!と感じたハルヴァは慌ててそう提案した。
「……?そ、そうか…腹は減ってないか」
「……?わ、私?そうですね、今は特に…あの、あそこら辺りが宝石店なはずなので!行きましょう」ハルヴァとディオスは互いに首を傾げながら次は宝石店に向かうことにした。
週末だからか、街は人で溢れている。
ハルヴァはディオスを案内するように前を歩いた。
人混みの中、背の高いディオスは頭一つ出ているのできっと相手の女性も探しやすいだろうなぁとハルヴァは思っていた。
(私も背の高い人とお付き合いしたい!……便利だから…ディオス様…私のためにも女性兵士様とのデート…頑張ってくださいね!うん、……応援しよう!)
ハルヴァは心の中でそうエールを送ると宝石店のドアをそっと開けた。
「ギャー!やっぱり気付きますよねぇ!すみませんすみません」ハルヴァは背後から掛けられた声に怯えながら土下座した。
「……そ、そんなことはしなくていい。昨日いつ帰った?」ディオスは土下座するハルヴァに触れようとした手を引っ込めて代わりに腕を組んでそっぽを向いた。
「へー?じゅ、18時位?ですかね…あ、あの」ハルヴァは顔を上げると目を泳がせた。怒られるかなぁ…と思ったからだ。
「……なに?く、くそ…おい…いいか…これから買い物に行くからちょっと待っていろ。そこから動くなよ?勝手に帰るな…いいか?す、座っていろ…椅子に!必ず俺は戻ってくるから!」
「へ?……わ、私も行きます?」
「あ、当たり前だろ…」ハルヴァはディオスが顔を真っ赤にして怒っているので(帰りたい…)と思いながら立ち上がり椅子に座った。
「…ま、待たせたな、では行こうか」
ディオスはハンカチで手を拭いながら歩いて来るとハルヴァの隣に立ちそう言った。
「あ、いえ、はい」
ハルヴァが立ち上がってもディオスは歩き出さないので「あのー…」とハルヴァは声を掛けた。
どこに行けば良いのかもわからない…
ディオスは硬く握った拳を開きズボンに擦りつけるようにすると「……手でも…つ、繋ぐか」と息も絶え絶えな様子で言ってきたのでハルヴァは笑った。
「え!?あははは!それはいけませんよー!」
「な?そ、そうか?」
「はい!あははは!面白い!私と手を繋ぐなんて!そんなバカな!見られたら困るじゃないですかー!」
「……そうだよな。そんなことは…してはならんよな。俺は…そうだった…すまん」ディオスはそう言うと再び軽く拳を握り手を身体の横に下ろした。
(ディオス様ったら面白い冗談を言うものだわ)
「…………」
「…………」
気まずい沈黙の中、ハルヴァが胃をキリキリさせていると頭に挿した花に視線を感じたので触れる。
「あ、これですか?これは患者さんが」
「……野草じゃないか、俺だったら店で買った高い花をプレゼントする」
「…あ、そうですよね。あはは、私はこれで嬉しいので…」
「……そんなもの…なぜつけてる?外したらどうだ」
「え?仲が良い患者さんからいただいたので…」ハルヴァはディオスの言葉にショックを受けた。(似合ってないのかなぁ…ジョンさん優しいから素敵だ、と言ってくれたのね)
立ち上がるディオスについて行く。
馬車に乗ると向かい側で仏頂面をしているディオスが脚を組みながら「……仕事辞めてはどうだ?」と不機嫌そうに言った。
(あ、この前余計なこと言ったからかな?)
「大丈夫です」ハルヴァはディオスが心配してくれているのか、とにっこり微笑んだ。
それに仕事を辞めたとしてどうなるのだ…また、新しい職場を探す必要があるしトラブルは自分が仕事ができないのが原因なのだからどこに行っても同じだし変わらない、とハルヴァは思った。
(それならサラがいる所がいいし)
「……」
「……」
(気まずいなぁ…)
「お…女はどんな店がいいんだ」
「どんな店?服ですか?宝石ですか?それとも食事?」
馬車から降りるとすぐそこで待っていたディオスが腕を組みながらそう言った。
「わからん…何が欲しい?服と宝石が欲しいのか?花は?腹が減ったのか?」
「え?ひ、人によるかと…お花はすぐに会うのなら買っていかれて大丈夫ではないでしょうか?ごはん時なら食事に行かれてもいいかもしれませんね」
「じゃ、じゃあ花は?花を買ってやる!それを挿したらどうだ!?」
「え!?萎れてしまうのではないですか?挿したら?頭にですか?それは素敵ですが…お花は今は買われない方がいいかと…」
「……む…難しいな…今は飯時か?」
ハルヴァはディオスからそう尋ねられて広場にある時計を見上げた。時刻は18時だ。
「あー、確かに夕飯時かもしれませんね」
「……」
「……」
「じゃ、じゃあっ!飯だな!飯!何が食いたい?」ディオスは顔を真っ赤にするとパチンと手を叩いた。
「え?わ、私?私ですか?えっと…えとえと…」ハルヴァはなんだか緊張して食欲がなかったので何も考えつかなかった。
「あ、あの…!ディオス様の行きたい所を提案してみてはどうですか?何か食べたいものとか…」
「お、俺?俺か?………………」ディオスは腕を組むと熟考しているのか眉にシワを寄せて目を閉じた。
「……に、肉と酒だな…」(海賊みたい!)
「あ、あの!まあ、今日は!お店に行ってみてはいかがでしょうか?えーと…あの、大体の女性は宝石は嬉しいと思います!服だとサイズがあるから…一緒に来ないと難しいですよね」このままではディオスと恋人の食事が海賊の晩餐になってしまう!と感じたハルヴァは慌ててそう提案した。
「……?そ、そうか…腹は減ってないか」
「……?わ、私?そうですね、今は特に…あの、あそこら辺りが宝石店なはずなので!行きましょう」ハルヴァとディオスは互いに首を傾げながら次は宝石店に向かうことにした。
週末だからか、街は人で溢れている。
ハルヴァはディオスを案内するように前を歩いた。
人混みの中、背の高いディオスは頭一つ出ているのできっと相手の女性も探しやすいだろうなぁとハルヴァは思っていた。
(私も背の高い人とお付き合いしたい!……便利だから…ディオス様…私のためにも女性兵士様とのデート…頑張ってくださいね!うん、……応援しよう!)
ハルヴァは心の中でそうエールを送ると宝石店のドアをそっと開けた。
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