37 / 41
第37話 ザルツ海海戦 ①
しおりを挟む
――ユースティア・シルム空防基地
政府からの命令は直ちに前線基地に伝えられた。
「これは厳しいことになってしまったな……」
ホムスター空将はじっとりと背中に汗が流れるのを感じていた。
国土を直接攻撃されるかも知れない中で、先制攻撃は禁じられた。
その上、敵艦隊は空母を保有しており多数の航空機が来襲する可能性が濃厚であり爆撃されることも有り得る。
「魔導戦艦2隻、魔導巡洋艦2隻に通信。領海ぎりぎりまで前進し待機。射程に入ったら警告射撃を行え! Y-15戦闘機6機は対艦ミサイル各4発を装備。残りは対空ミサイルを積んでいつでも発進できるよう待機せよ!」
魔導戦艦の魔導砲の射程は約35kmである。
これはどうしても拡散・減衰してしまうため仕方ないと言える。
ノーツ本島に配備されている最新鋭の魔導戦艦なら閉塞封鎖型魔導砲により射程は80km近くまで延伸する。これは魔導砲の周囲に磁場を利用した力場を発生させることにより砲の拡散・減衰を防ぐことができるためだ。
敵艦隊に空母がある以上、間もなく制空型と爆撃型の戦闘機が差し向けられることは疑いようがない。
こちらの魔導戦艦を押し出しておけば、艦隊決戦になる前に制空戦になる可能性が高い。本土攻撃よりも魔導艦の撃破を優先させるだろうと言う読みがホムスター空将にはあった。これで先制攻撃を受けたと言う状況を作り出すことができるはずである。
「本当なら一気呵成に飽和攻撃で決着をつけたいんだがな……」
先程の偵察機の件から考えると敵戦闘機の武装では魔導艦に有効打撃を与えることはできないと思われるが、爆撃されるとなると油断はできない。
それに攻撃が効かないとなると攻撃目標を変えてユースティア・ザルツ本島に向かう可能性も考えられる。
「報告します。第8護衛艦隊群が間もなくザルツ海海域に到着する模様です」
その報告にホムスター空将は少しばかり安堵する。
対空誘導弾や対艦誘導弾、魚雷などを搭載する護衛艦隊群が来援すれば優位に戦える。その威力を知る彼は頼もしい味方が来てくれることに緊張が和らぐのを感じていた。
「敵艦隊との距離50kmを切ります!」
「レーダーに感あり。敵戦闘機来ます。数200」
本当はロングレンジから対空ミサイルを撃ちたいところだが先制攻撃ができない以上諦めざるを得ない。味方の魔導艦を巻き込む可能性があるため最悪、有視界戦闘になってしまう恐れすらある。パイロットたちの緊張も相当なものになるだろうことは想像に難くない。
「敵は魔導艦を狙ってくるぞ。攻撃を受けたら全砲門で撃ち落としてやれ!」
基地内にホムスター空将の叱咤激励が飛んだ。
―――
――ガラベルム帝國・北伐艦隊
空にドでかい空中艦が浮いている。
その数4隻。
そこへ空母から発艦した戦闘機『64式ガルマキラ』と『61式ガルベース』爆撃機が綺麗な編隊を見せて距離を詰めていく。
「何もしてこんな。何のつもりだ?」
あちらにも戦闘機が見えているはずだ。
まさかレーダーすらないのだろうか。そろそろ目視でも確認できると思うのだが。
魔法文明国家は魔力レーダーと言うものを使うらしいが、それは魔力のないものは非常に探知しにくいらしい。
その時、キラッと淡い緑色の光が煌めいたかと思うと戦艦〈ゼルビー〉から数km離れた場所に大きな水柱が上がる。
「何ッ!? 砲撃か!?」
「恐らく砲撃と思われます。あれが魔法文明の砲撃なのでしょう」
グレイモスの疑問に副長が答える。
「意外と威力は高そうだな。だが射程は短いようだ……」
「とは言え空飛ぶ戦艦に砲が当たりますかな?」
「向こうの動きはどうだ?」
空中の艦隊は動いていないように見える。
魔法の印象からか高速だと言う可能性を考えていたのだが思ったより低速なのかも知れない
「敵、空中艦隊に動きはありません」
レーダーに動きはないようだ。
間もなく戦闘機が接敵する頃である。
「まぁ『64式ガルマキラ』と『61式ガルベース』が沈めるだろう」
すぐに結果が分かる。
艦船が浮くなどと言う馬鹿げた話を最初に聞いた時は信じられなかったものだが、実際見てみるとどんな原理で飛んでいるのか不思議に思う。
「空中艦隊に接敵します」
「さて、お手並み拝見といこうか。魔法文明よ」
グレイモスは勝利を疑うこともなく不敵な笑みを浮かべるのだった。
―――
――ガラベルム帝國・北伐航空編隊
『我々は旧世界において無敵だった。我々に負けはない。だが敵は魔法を使うらしい。油断は禁物だ。全機、攻撃を開始せよ。繰り返す攻撃を開始せよ』
北伐航空中隊長モスラーは無線で全機に攻撃命令を下した。
本来なら敵の戦闘機が出てきてもおかしくないのだが一向にその気配がない。
偵察機が敵機を確認したと言う話は聞いているので訝しげに思う。
「これなら爆装機を増やした方が良かったか……?」
先頭を行く『64式ガルマキラ』の12.7mm機関銃が火を吹く。
しかし無情にもカンカンと甲高い音と共に敵艦の装甲により跳ね返される。
モスラーも攻撃するが効果はないようだ。
「流石に紙装甲ではないようだな。魔法で強化でもしているのか? となると爆撃機に期待するか。しかし敵艦からの反撃がないのは何故だ?」
疑問に思いながらもモスラーは再度指示を出した。
『敵に動きはない! 急降下爆撃で確実に当てろ!』
指示に従って『61式ガルベース』爆撃機が高空からの急降下爆撃の体制に入る。
モスラーは一度離脱して様子を見ることにした。
他の『64式ガルマキラ』も散開している。
敵艦の真上から300kg爆弾を投下するべく急降下を始める。
そこへゆっくりと側面砲と高射砲が上に向きを変えていく。
淡い緑色の光が灯ったかと思うが速いか一斉に掃射された。
凄まじい弾幕が次々と雨霰と放射され爆撃機が連鎖的に爆発していく。
「何ッ!? 装填が速い! 一体どんな原理だ?」
モスラーはその速射性と命中度の高さに驚愕する。
しかし全機は撃ち落とせなかったようで複数の300kg爆弾が敵艦に直撃する。
煙が晴れると機体を旋回させて爆撃の効果を確認する。
期待が失望に変わる。全くと言っていいほど船体に傷がついていなかったのだ。
と同時に疑問が湧き起る。
何故突然攻撃してきたのか。
『装甲は抜けない! 艦橋の構造物を破壊しろッ! 主砲、副砲、側面砲もだッ!』
焦りがじんわりと広がる中、敵艦隊の主砲が淡い緑色に煌めく。
主砲などが戦闘機に当たるはずがない。
空中艦隊の側面を飛んでいたモスラーも側面砲に照準を合わせると機関銃のトリガーを引いた。
瞬間――
主砲から放たれた光が周囲一帯を薙ぎ払う。
直線的にではなく横一線に。
敵艦隊の前を飛んでいた『64式ガルマキラ』がその光の奔流に飲み込まれたかと思うと連鎖的に爆発し空に綺麗な華を咲かせた。
モスラーは思わず目を剥いて叫んでいた。
「何が起きたぁぁぁ!!」
拡散魔導砲。
横一線に放射される魔導砲でその砲は直撃せずとも近づいたもの全てにダメージを与える。
彼はその攻撃が何であるか分からない。
栄えある帝國戦闘機の攻撃は効果がなく敵による攻撃は圧倒的だ。
確かに強力な砲なのかも知れないがそれが我が国の大艦隊に通じるとは思えない。
特に戦艦の装甲は抜けない。抜けるはずがない。
『こちらモスラー。敵空中艦隊に有効打は認められず。繰り返す。有効打は認められず』
信じられないことが立て続けに起こり彼は返って冷静になっていた。
既に50機以上は落とされているようだ。
現状を報告するとすぐに無線が入る。
『空中艦隊は無視せよ。北から海上艦隊が接近中。そちらを攻撃されたし』
了解の返事を送り進路を大陸の方向へ向ける。
帝國航空隊のプライドはズタズタだ。
必ず報復してやると意気込んだモスラーは空中艦隊を無視して少し高度を落とすと編隊を組み直す。
すると大気を震わすほどの振動と共に轟音を響かせた何かが凄まじい速度で味方艦隊の方角へ消えていった。
今、確かに何かが見えた。
あれは何だ?
混乱しつつ命令を遂行しようとモスラーは前を向いて操縦桿を強く握る。
背後の大艦隊にひたひたと破壊の使者が近づいているとも知らずに。
―――
――ユースティア・シルム空防基地
「魔導戦艦〈テリウス〉から入電。我、攻撃を受けり。自衛権により反撃を開始す」
「よし殲滅しろ。被害確認」
取り敢えず想定通り初撃は魔導戦艦に対するものであったことに安堵する。
「敵の攻撃は機銃によるものと思われる。損害を認めず」
「爆撃が来るぞ。注意しろ。戦闘機は出撃せよ。敵艦を沈めてやれ。それと本土に敵戦闘機が来るぞ! 対空誘導弾を積んだ戦闘機は上空を護れ! 地対空ミサイルの用意も忘れるな!」
基地内部の地下戦闘指揮所にある大型モニターを見ながらホムスター空将はテキパキと指示を出していた。敵戦闘機の攻撃力が読めなかったので心配だったが、味方魔導艦隊に通じなかったことで高まっていた緊張が解けて皆一様に安堵した表情をしている。
「敵による急降下爆撃による損害は軽微。魔導戦艦〈テリウス〉が拡散魔導砲を使用するとのこと」
「敵戦闘機、密集しています」
魔導電波レーダーをを注視していたオペレーターからも報告が上がる。
魔導戦艦〈テリウス〉の艦長も好機と見たのだろう。
この攻撃が決まれば密集した戦闘機なら連鎖的に爆発するのは間違いないように思えた。
「拡散魔導砲準備。チャージ開始……完了。発射カウントダウン……5、4、3、2、1、ファイア!」
「効果はどうだ?」
「魔導戦艦〈テリウス〉の前方にいた敵戦闘機の消滅を確認。約50機を撃墜」
今回の敵は科学立国のようである。
ホムスター空将はユースティアの魔導技術が敵の科学技術に通用するか心配していたが杞憂に終わりそうでホッとする。後は魔導砲が敵艦隊の装甲を抜けるかが見所だ。
「敵戦闘機、北へ針路をとりました。護衛艦隊群へ向かう模様」
「海防隊も察知しているだろう。護衛艦隊からの攻撃に巻き込まれないように高度を上げつつ敵艦隊の右側に回り込め。魔導砲により攻撃せよ」
この戦いのデータは貴重になるなものになるだろう。
もし列強国と呼ばれている国家と戦争になった場合大いに役立つはずである。
「取り敢えず、敵戦闘機が本土ではなく護衛艦隊の方へ向かってくれて助かったな……」
少しは緊張が解けたとは言え、まだまだ状況は予断を許さない。
敵艦隊の性能如何ではどう転ぶか分からないのだ。
ホムスターはギュッと口を硬く結ぶと気合を入れ直すのであった。
政府からの命令は直ちに前線基地に伝えられた。
「これは厳しいことになってしまったな……」
ホムスター空将はじっとりと背中に汗が流れるのを感じていた。
国土を直接攻撃されるかも知れない中で、先制攻撃は禁じられた。
その上、敵艦隊は空母を保有しており多数の航空機が来襲する可能性が濃厚であり爆撃されることも有り得る。
「魔導戦艦2隻、魔導巡洋艦2隻に通信。領海ぎりぎりまで前進し待機。射程に入ったら警告射撃を行え! Y-15戦闘機6機は対艦ミサイル各4発を装備。残りは対空ミサイルを積んでいつでも発進できるよう待機せよ!」
魔導戦艦の魔導砲の射程は約35kmである。
これはどうしても拡散・減衰してしまうため仕方ないと言える。
ノーツ本島に配備されている最新鋭の魔導戦艦なら閉塞封鎖型魔導砲により射程は80km近くまで延伸する。これは魔導砲の周囲に磁場を利用した力場を発生させることにより砲の拡散・減衰を防ぐことができるためだ。
敵艦隊に空母がある以上、間もなく制空型と爆撃型の戦闘機が差し向けられることは疑いようがない。
こちらの魔導戦艦を押し出しておけば、艦隊決戦になる前に制空戦になる可能性が高い。本土攻撃よりも魔導艦の撃破を優先させるだろうと言う読みがホムスター空将にはあった。これで先制攻撃を受けたと言う状況を作り出すことができるはずである。
「本当なら一気呵成に飽和攻撃で決着をつけたいんだがな……」
先程の偵察機の件から考えると敵戦闘機の武装では魔導艦に有効打撃を与えることはできないと思われるが、爆撃されるとなると油断はできない。
それに攻撃が効かないとなると攻撃目標を変えてユースティア・ザルツ本島に向かう可能性も考えられる。
「報告します。第8護衛艦隊群が間もなくザルツ海海域に到着する模様です」
その報告にホムスター空将は少しばかり安堵する。
対空誘導弾や対艦誘導弾、魚雷などを搭載する護衛艦隊群が来援すれば優位に戦える。その威力を知る彼は頼もしい味方が来てくれることに緊張が和らぐのを感じていた。
「敵艦隊との距離50kmを切ります!」
「レーダーに感あり。敵戦闘機来ます。数200」
本当はロングレンジから対空ミサイルを撃ちたいところだが先制攻撃ができない以上諦めざるを得ない。味方の魔導艦を巻き込む可能性があるため最悪、有視界戦闘になってしまう恐れすらある。パイロットたちの緊張も相当なものになるだろうことは想像に難くない。
「敵は魔導艦を狙ってくるぞ。攻撃を受けたら全砲門で撃ち落としてやれ!」
基地内にホムスター空将の叱咤激励が飛んだ。
―――
――ガラベルム帝國・北伐艦隊
空にドでかい空中艦が浮いている。
その数4隻。
そこへ空母から発艦した戦闘機『64式ガルマキラ』と『61式ガルベース』爆撃機が綺麗な編隊を見せて距離を詰めていく。
「何もしてこんな。何のつもりだ?」
あちらにも戦闘機が見えているはずだ。
まさかレーダーすらないのだろうか。そろそろ目視でも確認できると思うのだが。
魔法文明国家は魔力レーダーと言うものを使うらしいが、それは魔力のないものは非常に探知しにくいらしい。
その時、キラッと淡い緑色の光が煌めいたかと思うと戦艦〈ゼルビー〉から数km離れた場所に大きな水柱が上がる。
「何ッ!? 砲撃か!?」
「恐らく砲撃と思われます。あれが魔法文明の砲撃なのでしょう」
グレイモスの疑問に副長が答える。
「意外と威力は高そうだな。だが射程は短いようだ……」
「とは言え空飛ぶ戦艦に砲が当たりますかな?」
「向こうの動きはどうだ?」
空中の艦隊は動いていないように見える。
魔法の印象からか高速だと言う可能性を考えていたのだが思ったより低速なのかも知れない
「敵、空中艦隊に動きはありません」
レーダーに動きはないようだ。
間もなく戦闘機が接敵する頃である。
「まぁ『64式ガルマキラ』と『61式ガルベース』が沈めるだろう」
すぐに結果が分かる。
艦船が浮くなどと言う馬鹿げた話を最初に聞いた時は信じられなかったものだが、実際見てみるとどんな原理で飛んでいるのか不思議に思う。
「空中艦隊に接敵します」
「さて、お手並み拝見といこうか。魔法文明よ」
グレイモスは勝利を疑うこともなく不敵な笑みを浮かべるのだった。
―――
――ガラベルム帝國・北伐航空編隊
『我々は旧世界において無敵だった。我々に負けはない。だが敵は魔法を使うらしい。油断は禁物だ。全機、攻撃を開始せよ。繰り返す攻撃を開始せよ』
北伐航空中隊長モスラーは無線で全機に攻撃命令を下した。
本来なら敵の戦闘機が出てきてもおかしくないのだが一向にその気配がない。
偵察機が敵機を確認したと言う話は聞いているので訝しげに思う。
「これなら爆装機を増やした方が良かったか……?」
先頭を行く『64式ガルマキラ』の12.7mm機関銃が火を吹く。
しかし無情にもカンカンと甲高い音と共に敵艦の装甲により跳ね返される。
モスラーも攻撃するが効果はないようだ。
「流石に紙装甲ではないようだな。魔法で強化でもしているのか? となると爆撃機に期待するか。しかし敵艦からの反撃がないのは何故だ?」
疑問に思いながらもモスラーは再度指示を出した。
『敵に動きはない! 急降下爆撃で確実に当てろ!』
指示に従って『61式ガルベース』爆撃機が高空からの急降下爆撃の体制に入る。
モスラーは一度離脱して様子を見ることにした。
他の『64式ガルマキラ』も散開している。
敵艦の真上から300kg爆弾を投下するべく急降下を始める。
そこへゆっくりと側面砲と高射砲が上に向きを変えていく。
淡い緑色の光が灯ったかと思うが速いか一斉に掃射された。
凄まじい弾幕が次々と雨霰と放射され爆撃機が連鎖的に爆発していく。
「何ッ!? 装填が速い! 一体どんな原理だ?」
モスラーはその速射性と命中度の高さに驚愕する。
しかし全機は撃ち落とせなかったようで複数の300kg爆弾が敵艦に直撃する。
煙が晴れると機体を旋回させて爆撃の効果を確認する。
期待が失望に変わる。全くと言っていいほど船体に傷がついていなかったのだ。
と同時に疑問が湧き起る。
何故突然攻撃してきたのか。
『装甲は抜けない! 艦橋の構造物を破壊しろッ! 主砲、副砲、側面砲もだッ!』
焦りがじんわりと広がる中、敵艦隊の主砲が淡い緑色に煌めく。
主砲などが戦闘機に当たるはずがない。
空中艦隊の側面を飛んでいたモスラーも側面砲に照準を合わせると機関銃のトリガーを引いた。
瞬間――
主砲から放たれた光が周囲一帯を薙ぎ払う。
直線的にではなく横一線に。
敵艦隊の前を飛んでいた『64式ガルマキラ』がその光の奔流に飲み込まれたかと思うと連鎖的に爆発し空に綺麗な華を咲かせた。
モスラーは思わず目を剥いて叫んでいた。
「何が起きたぁぁぁ!!」
拡散魔導砲。
横一線に放射される魔導砲でその砲は直撃せずとも近づいたもの全てにダメージを与える。
彼はその攻撃が何であるか分からない。
栄えある帝國戦闘機の攻撃は効果がなく敵による攻撃は圧倒的だ。
確かに強力な砲なのかも知れないがそれが我が国の大艦隊に通じるとは思えない。
特に戦艦の装甲は抜けない。抜けるはずがない。
『こちらモスラー。敵空中艦隊に有効打は認められず。繰り返す。有効打は認められず』
信じられないことが立て続けに起こり彼は返って冷静になっていた。
既に50機以上は落とされているようだ。
現状を報告するとすぐに無線が入る。
『空中艦隊は無視せよ。北から海上艦隊が接近中。そちらを攻撃されたし』
了解の返事を送り進路を大陸の方向へ向ける。
帝國航空隊のプライドはズタズタだ。
必ず報復してやると意気込んだモスラーは空中艦隊を無視して少し高度を落とすと編隊を組み直す。
すると大気を震わすほどの振動と共に轟音を響かせた何かが凄まじい速度で味方艦隊の方角へ消えていった。
今、確かに何かが見えた。
あれは何だ?
混乱しつつ命令を遂行しようとモスラーは前を向いて操縦桿を強く握る。
背後の大艦隊にひたひたと破壊の使者が近づいているとも知らずに。
―――
――ユースティア・シルム空防基地
「魔導戦艦〈テリウス〉から入電。我、攻撃を受けり。自衛権により反撃を開始す」
「よし殲滅しろ。被害確認」
取り敢えず想定通り初撃は魔導戦艦に対するものであったことに安堵する。
「敵の攻撃は機銃によるものと思われる。損害を認めず」
「爆撃が来るぞ。注意しろ。戦闘機は出撃せよ。敵艦を沈めてやれ。それと本土に敵戦闘機が来るぞ! 対空誘導弾を積んだ戦闘機は上空を護れ! 地対空ミサイルの用意も忘れるな!」
基地内部の地下戦闘指揮所にある大型モニターを見ながらホムスター空将はテキパキと指示を出していた。敵戦闘機の攻撃力が読めなかったので心配だったが、味方魔導艦隊に通じなかったことで高まっていた緊張が解けて皆一様に安堵した表情をしている。
「敵による急降下爆撃による損害は軽微。魔導戦艦〈テリウス〉が拡散魔導砲を使用するとのこと」
「敵戦闘機、密集しています」
魔導電波レーダーをを注視していたオペレーターからも報告が上がる。
魔導戦艦〈テリウス〉の艦長も好機と見たのだろう。
この攻撃が決まれば密集した戦闘機なら連鎖的に爆発するのは間違いないように思えた。
「拡散魔導砲準備。チャージ開始……完了。発射カウントダウン……5、4、3、2、1、ファイア!」
「効果はどうだ?」
「魔導戦艦〈テリウス〉の前方にいた敵戦闘機の消滅を確認。約50機を撃墜」
今回の敵は科学立国のようである。
ホムスター空将はユースティアの魔導技術が敵の科学技術に通用するか心配していたが杞憂に終わりそうでホッとする。後は魔導砲が敵艦隊の装甲を抜けるかが見所だ。
「敵戦闘機、北へ針路をとりました。護衛艦隊群へ向かう模様」
「海防隊も察知しているだろう。護衛艦隊からの攻撃に巻き込まれないように高度を上げつつ敵艦隊の右側に回り込め。魔導砲により攻撃せよ」
この戦いのデータは貴重になるなものになるだろう。
もし列強国と呼ばれている国家と戦争になった場合大いに役立つはずである。
「取り敢えず、敵戦闘機が本土ではなく護衛艦隊の方へ向かってくれて助かったな……」
少しは緊張が解けたとは言え、まだまだ状況は予断を許さない。
敵艦隊の性能如何ではどう転ぶか分からないのだ。
ホムスターはギュッと口を硬く結ぶと気合を入れ直すのであった。
0
あなたにおすすめの小説
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
裏スキルで最強異世界攻略~異世界召喚されたのだが、勇者じゃないと追い出されたので新しい国を造りました~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
いつものようにヤンキーに絡まれて逃げていたら、いつの間にか異世界召喚されてました。でも、スキルが『農民』しかなかったから、いらないと追放されました。
エブリスタ、カクヨム、ノベリズム、ノベルアップ、小説家になろうにも掲載しています。
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話
ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。
異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。
「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」
異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる