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第2章 花精霊族解放編
第30話 救出
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「ああッ! 違う国だから言語が違うのは当たり前かよッ!」
当然と言えば当然の事実にアスターゼは思わず頭を抱えてうずくまる。
少女はひたすら何か分からないことを叫びながら、アスターゼに縋り付いてくる。取り敢えず、彼女を何とかしようと慌てるアスターゼであったが、状況がそれを許してはくれなかった。
三つの首を持った蛇のような魔物がこちらを睨みつけていたのだ。
生い茂る木々が邪魔をして見えにくいが、アスターゼの方に注意を向けているのは間違いない。
「ヒュドラか!?」
アスターゼに大したファンタジーの知識はないが、そんな怪物もいた気がする。
多少、首の数が少ないような気もするが。
取り敢えず、アスターゼは状況を打開すべく黒魔術を使用した。
【アイス】
虚空から現れた氷がヒュドラを包み込み、長く伸びた首をその中に閉じ込める。
しかしそれは一瞬のことであった。
ヒュドラは口からブレスのようなものを吐きだすと氷はあっと言う間に砕け散った。
「威力も何も足りないかッ!」
アスターゼはすぐにそう判断すると、鑑定を行った。
【看過】
名前:ガ・ジェ
種族:水蛇族(ヒュドラ)
性別:男性
年齢:302歳
職業:水蛇
職能1:水蛇
職能2:ブレス
加護:-
耐性:火魔術Lv4、水魔術Lv8、氷魔術Lv7
職位:水蛇Lv3、ブレスLv5
特性:【変化Lv8】【威圧Lv5】【覇気Lv3】【再生Lv2】【火ブレスLv5】
【氷ブレスLv3】
体長は5、6メートルはある。
剣で勝負するか魔術で勝負するか一瞬の逡巡。
「はッ! 両方でいいじゃねーか」
アスターゼは職業を騎士に転職し、職能には〈黒魔術〉をセットし、腰から剣をスラリと抜く。相変わらず少女が何を言っているのか分からないが、どうせ助けてとかそんなところだろう。アスターゼとしては初めて戦う魔物だが、やることは変わらない。
魔物は倒す。
アスターゼは一気にヒュドラとの間合いを詰めると挨拶代りの剣撃をお見舞いした。しかし、虚しくも剣が弾き返される。思ったよりも硬い皮膚だなと冷静に考えつつ、一つの首から吐かれたブレスをかわす。そして他の首の攻撃を何とか見切って騎士剣技を発動した。
【斬空閃】
斬撃がソニックブームのように虚空に出現し見えない攻撃がヒュドラを襲う。
ヒュドラはそれをかわすことができずまともに喰らっている。
首が斬れ、血がほとばしる。
同時に斬られた首の頭部から苦痛に満ちた叫びが漏れた。
【ライトニング】
そこへアスターゼの黒魔術がヒュドラに直撃した。
雷の力が轟音と共に天空から落ちてきて魔物へと突き刺さる。
またもや絶叫のような雄叫びを上げるヒュドラ。
しかし、ヒュドラもただでは沈まない。
周りの木々に邪魔されながらも三つの首からブレスを吐きかける。
アスターゼに向かって。
もちろんそれを喰らうつもりなどない。
アスターゼは少女を抱えて足場の悪い斜面を転がってブレスをかわした。
ここで攻撃の手を休める訳にはいかない。
少女をから手を放すと、アスターゼは大きく飛んでヒュドラの巨躯に剣を突き立てた。
少女は地面をころころと転がって行く。
「グルァァァァァァァ!!」
先程までとは比べものにならない程の苦痛に満ちた声がヒュドラの口からついて出る。ヒュドラは必死に体を振ってアスターゼを振り落とそうとしている。
それはさながら、ロデオにおけるカウボーイの如く。
しかしその手に持った剣が深々とヒュドラの体内に突き刺さっているため、中々そうすることができない。
焦れたヒュドラの3つの首を使った攻撃がアスターゼに迫る。
その瞬間をアスターゼは狙っていた。
すぐに剣を引き抜くと先程傷つけた首の一本をぶった斬る。
鮮血とともにヒュドラの頭部が宙を舞った。
他の2本の頭部も苦痛からか狂ったように暴れまわっている。
そして、再びその口からブレスが吐きだされる。
それに木々がなぎ倒され、地面が抉られる。
火属性のブレスのようだが、大した威力であることは確かなようだ。
アスターゼは少女の方を窺いながらヒュドラの攻撃に備えて剣を構えていたが、ヒュドラは既に戦意を失っていた。
ブレスは逃げるための牽制であったのだ。
見た目からは想像できない程、俊敏な動きでヒュドラはその場から姿を消した。
アスターゼも追撃するつもりはない。
何も情報のない状況で、手負いの魔物を刺激して痛い目に遭いたくはなかったのだ。
取り敢えず、難敵を撃退できたことにアスターゼは安堵する。
「ふーッ……。やっぱり初見の魔物は要注意だな」
そう大きく息を吐き出して剣を鞘に収めたところで、アスターゼは少女の存在を思い出す。後ろを振り返ると、そこには着物に似た感じの白装束を着た少女が震えながら尻もちをついていた。
「大丈夫?」
「縺ゅj縺後→縺?#縺悶>縺セ縺」
それを聞いてアスターゼは思い出した。
言語が違うことを。
とにかくこの状況を打開したいところなので、アスターゼは転職できる職業の一覧を頭の中に表示させた。
何度も目を通したことはあったが、流石に全部覚えている訳ではない。
アスターゼは時間をかけて見直し始める。
少女には身振り手振りで少し待つように伝えた。
伝わっているかは不明だが、彼女は腐葉土のようになっている地面に正座すると大人しくなった。せっかくの綺麗な白装束が汚れそうで気になったが、彼女にそれを気にする様子はない。
震えも止まっていることから、怯えていたのは、アスターゼに対してではなく、ヒュドラに対してであったようだ。
自分に対してだったらと思うとハートブレイクを起こしていたかも知れない。
「あッそうだそうだ。通訳とかあるかな?」
そう考えると、頭にすぐに職業が浮かんでくる。
こんな職業まで存在するんだなと感心しながら、アスターゼは通訳へと転職した。
「あー。こんにちは。僕はアスターゼと言う名前なんだけど、ちょっと話を聞かせてもらってもいいかな?」
「えッ? あッありがとうございますぅぅ! 助かりました」
言葉が理解できるって素晴らしい。
アスターゼはそう思い、改めて転職士と言う職業に感謝した。
「ここはどこか教えてもらってもいいかな?」
「場所? ここですか? ヤツマガ村の近くにある沼地の祠ですけど」
当然、村の名前を聞いてもアスターゼには分からない。
取り敢えず、夜も近いし彼女の村へ案内してもらおうかと考えていると、少女が首を傾げながらポツリとこぼした。
薄い空色の髪がシャナリと揺れる。
「でも何で急に言ってることが理解できるようになったんだろ」
「ああ、そう言う職業なんだよ。あまり気にしないで」
「はぁ……。職業ですか」
彼女は何やら分かったような分からないような微妙な表情をしている。
「と、取り敢えず、そのヤツマガ村?に案内してもらってもいいかな?」
「……それが無理なんです。私としては命の恩人をもてなしたい気持ちでいっぱいなんですが……」
彼女は何やら顔を赤く染めてもじもじしている。
何か事情があるようだがアスターゼとしては何としても村へ行きたいところであった。
「私は村には帰ってはいけないんです……」
「どうしてですか? 何か重大な理由でも?」
「はい……。私は人身御供にされたんです」
思ってもみなかった理由にアスターゼは頭を抱えた。
村人からすれば、助けてはいけない者を助けた単なるお節介……どころか村に災いをもたらす邪魔者と取られても仕方がないだろう。
しかし、アスターゼにはこの少女を見殺しにすると言う選択肢は存在しなかった。
少し考えてからアスターゼが口を開く。
「分かった。君の事情を含めて情報が欲しい。色々教えてもらえるかな?」
「はい! 私に出来ることなら喜んで!」
助かったのがよっぽど嬉しかったのか、少女は魅力的な笑みを浮かべる。
アスターゼには、これで少しはこの地のことが分かるだろうとホッとするのであった。
当然と言えば当然の事実にアスターゼは思わず頭を抱えてうずくまる。
少女はひたすら何か分からないことを叫びながら、アスターゼに縋り付いてくる。取り敢えず、彼女を何とかしようと慌てるアスターゼであったが、状況がそれを許してはくれなかった。
三つの首を持った蛇のような魔物がこちらを睨みつけていたのだ。
生い茂る木々が邪魔をして見えにくいが、アスターゼの方に注意を向けているのは間違いない。
「ヒュドラか!?」
アスターゼに大したファンタジーの知識はないが、そんな怪物もいた気がする。
多少、首の数が少ないような気もするが。
取り敢えず、アスターゼは状況を打開すべく黒魔術を使用した。
【アイス】
虚空から現れた氷がヒュドラを包み込み、長く伸びた首をその中に閉じ込める。
しかしそれは一瞬のことであった。
ヒュドラは口からブレスのようなものを吐きだすと氷はあっと言う間に砕け散った。
「威力も何も足りないかッ!」
アスターゼはすぐにそう判断すると、鑑定を行った。
【看過】
名前:ガ・ジェ
種族:水蛇族(ヒュドラ)
性別:男性
年齢:302歳
職業:水蛇
職能1:水蛇
職能2:ブレス
加護:-
耐性:火魔術Lv4、水魔術Lv8、氷魔術Lv7
職位:水蛇Lv3、ブレスLv5
特性:【変化Lv8】【威圧Lv5】【覇気Lv3】【再生Lv2】【火ブレスLv5】
【氷ブレスLv3】
体長は5、6メートルはある。
剣で勝負するか魔術で勝負するか一瞬の逡巡。
「はッ! 両方でいいじゃねーか」
アスターゼは職業を騎士に転職し、職能には〈黒魔術〉をセットし、腰から剣をスラリと抜く。相変わらず少女が何を言っているのか分からないが、どうせ助けてとかそんなところだろう。アスターゼとしては初めて戦う魔物だが、やることは変わらない。
魔物は倒す。
アスターゼは一気にヒュドラとの間合いを詰めると挨拶代りの剣撃をお見舞いした。しかし、虚しくも剣が弾き返される。思ったよりも硬い皮膚だなと冷静に考えつつ、一つの首から吐かれたブレスをかわす。そして他の首の攻撃を何とか見切って騎士剣技を発動した。
【斬空閃】
斬撃がソニックブームのように虚空に出現し見えない攻撃がヒュドラを襲う。
ヒュドラはそれをかわすことができずまともに喰らっている。
首が斬れ、血がほとばしる。
同時に斬られた首の頭部から苦痛に満ちた叫びが漏れた。
【ライトニング】
そこへアスターゼの黒魔術がヒュドラに直撃した。
雷の力が轟音と共に天空から落ちてきて魔物へと突き刺さる。
またもや絶叫のような雄叫びを上げるヒュドラ。
しかし、ヒュドラもただでは沈まない。
周りの木々に邪魔されながらも三つの首からブレスを吐きかける。
アスターゼに向かって。
もちろんそれを喰らうつもりなどない。
アスターゼは少女を抱えて足場の悪い斜面を転がってブレスをかわした。
ここで攻撃の手を休める訳にはいかない。
少女をから手を放すと、アスターゼは大きく飛んでヒュドラの巨躯に剣を突き立てた。
少女は地面をころころと転がって行く。
「グルァァァァァァァ!!」
先程までとは比べものにならない程の苦痛に満ちた声がヒュドラの口からついて出る。ヒュドラは必死に体を振ってアスターゼを振り落とそうとしている。
それはさながら、ロデオにおけるカウボーイの如く。
しかしその手に持った剣が深々とヒュドラの体内に突き刺さっているため、中々そうすることができない。
焦れたヒュドラの3つの首を使った攻撃がアスターゼに迫る。
その瞬間をアスターゼは狙っていた。
すぐに剣を引き抜くと先程傷つけた首の一本をぶった斬る。
鮮血とともにヒュドラの頭部が宙を舞った。
他の2本の頭部も苦痛からか狂ったように暴れまわっている。
そして、再びその口からブレスが吐きだされる。
それに木々がなぎ倒され、地面が抉られる。
火属性のブレスのようだが、大した威力であることは確かなようだ。
アスターゼは少女の方を窺いながらヒュドラの攻撃に備えて剣を構えていたが、ヒュドラは既に戦意を失っていた。
ブレスは逃げるための牽制であったのだ。
見た目からは想像できない程、俊敏な動きでヒュドラはその場から姿を消した。
アスターゼも追撃するつもりはない。
何も情報のない状況で、手負いの魔物を刺激して痛い目に遭いたくはなかったのだ。
取り敢えず、難敵を撃退できたことにアスターゼは安堵する。
「ふーッ……。やっぱり初見の魔物は要注意だな」
そう大きく息を吐き出して剣を鞘に収めたところで、アスターゼは少女の存在を思い出す。後ろを振り返ると、そこには着物に似た感じの白装束を着た少女が震えながら尻もちをついていた。
「大丈夫?」
「縺ゅj縺後→縺?#縺悶>縺セ縺」
それを聞いてアスターゼは思い出した。
言語が違うことを。
とにかくこの状況を打開したいところなので、アスターゼは転職できる職業の一覧を頭の中に表示させた。
何度も目を通したことはあったが、流石に全部覚えている訳ではない。
アスターゼは時間をかけて見直し始める。
少女には身振り手振りで少し待つように伝えた。
伝わっているかは不明だが、彼女は腐葉土のようになっている地面に正座すると大人しくなった。せっかくの綺麗な白装束が汚れそうで気になったが、彼女にそれを気にする様子はない。
震えも止まっていることから、怯えていたのは、アスターゼに対してではなく、ヒュドラに対してであったようだ。
自分に対してだったらと思うとハートブレイクを起こしていたかも知れない。
「あッそうだそうだ。通訳とかあるかな?」
そう考えると、頭にすぐに職業が浮かんでくる。
こんな職業まで存在するんだなと感心しながら、アスターゼは通訳へと転職した。
「あー。こんにちは。僕はアスターゼと言う名前なんだけど、ちょっと話を聞かせてもらってもいいかな?」
「えッ? あッありがとうございますぅぅ! 助かりました」
言葉が理解できるって素晴らしい。
アスターゼはそう思い、改めて転職士と言う職業に感謝した。
「ここはどこか教えてもらってもいいかな?」
「場所? ここですか? ヤツマガ村の近くにある沼地の祠ですけど」
当然、村の名前を聞いてもアスターゼには分からない。
取り敢えず、夜も近いし彼女の村へ案内してもらおうかと考えていると、少女が首を傾げながらポツリとこぼした。
薄い空色の髪がシャナリと揺れる。
「でも何で急に言ってることが理解できるようになったんだろ」
「ああ、そう言う職業なんだよ。あまり気にしないで」
「はぁ……。職業ですか」
彼女は何やら分かったような分からないような微妙な表情をしている。
「と、取り敢えず、そのヤツマガ村?に案内してもらってもいいかな?」
「……それが無理なんです。私としては命の恩人をもてなしたい気持ちでいっぱいなんですが……」
彼女は何やら顔を赤く染めてもじもじしている。
何か事情があるようだがアスターゼとしては何としても村へ行きたいところであった。
「私は村には帰ってはいけないんです……」
「どうしてですか? 何か重大な理由でも?」
「はい……。私は人身御供にされたんです」
思ってもみなかった理由にアスターゼは頭を抱えた。
村人からすれば、助けてはいけない者を助けた単なるお節介……どころか村に災いをもたらす邪魔者と取られても仕方がないだろう。
しかし、アスターゼにはこの少女を見殺しにすると言う選択肢は存在しなかった。
少し考えてからアスターゼが口を開く。
「分かった。君の事情を含めて情報が欲しい。色々教えてもらえるかな?」
「はい! 私に出来ることなら喜んで!」
助かったのがよっぽど嬉しかったのか、少女は魅力的な笑みを浮かべる。
アスターゼには、これで少しはこの地のことが分かるだろうとホッとするのであった。
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