43 / 44
第2章 花精霊族解放編
第43話 決戦
しおりを挟む
先に仕掛けたのはサナトスであった。
重心を低くしてアスターゼの正面から鋭い突きを放つ。
確かに他の兵士たちとはレベルが違うのが分かる。
アスターゼは右足を引いて半身になり余裕でこれを交わす。
サナトスもかわされることを予期していたようでピタリと槍を静止させると、今度は横薙ぎに払ってくる。
――甘い
その程度の攻撃など読み切っていたアスターゼは右側面でガードしつつ、まずは武器を奪いにかかる。
足と肘で槍の柄を挟み込み圧し折ろうと力を籠めた。
しかし、サナトスもそうはさせじと槍を鋭く引いて折られるのを防ぐ。
その際、槍の刃の部分がアスターゼの体を少しだけ傷つけた。
「大口を叩くだけあって他の兵士とは違うようだな」
「お前こそどこの蛮族かは知らんが多少は戦るようだ」
アスターゼの賞賛の言葉に、どこか嬉しそうな表情で応えるサナトス。
もしかしたら彼をまともに相手取ることのできる兵士がいなかったのかも知れない。サナトスの情報は既に特性【看過】により分かっている。
名前:サナトス
種族:人間族
性別:男性
年齢:28歳
職業:槍使い
職能1:槍術
職能2:-
加護:太陽の加護Lv3
耐性:恐慌Lv5、威圧Lv4、毒物Lv6
職位:槍術Lv6
特性:【石突Lv5】【三段突きLv5】【薙ぎ払いLv4】【連撃Lv3】
今のところ押されてはいないが、特性の名前からどんな攻撃がくるのかは大体想像できる。
アスターゼに油断などない。
周囲の兵士たちは二人の戦いに見入っていて乱入してくる者はいない。
ここはジワジワと追い詰めて仕留めるつもりでアスターゼは円を描くかのように動き出した。
サナトスも動きを追って槍の穂先で牽制してくる。
時々飛んでくる突きを手でいなしつつ、横の動きから一気に間合いを詰めるアスターゼ。
あまりにも速いその足捌きに、再び間合いを開けることを諦めたサナトスは、アスターゼを迎え討つかのように前へ出る。
そして槍の石突の部分で急所を狙ってくる。
「チッ!」
「ハァッ!」
二人の口から相反した心情が混じった声が漏れる。
アスターゼは石突の攻撃を防ぐと、左の鉤突きをサナトスの右脇腹へ捻じ込んだ。
「がぁッ!」
連撃に移りたいアスターゼはブーツでサナトスの足を踏みつぶした後、そのまま金的を入れる。
サナトスは反射的に股を閉じてそれを防ぐが表情は優れない。
彼の実力を見切ったアスターゼは批難を込めて叫んだ。
「何故、そんな腕がありながらこんな奴らに味方するッ!?」
「こんな奴らだと!? 俺は小さな頃に救われたのだッ!」
アスターゼはなおも攻撃の手を緩めない。
一度守勢に回れば中々反撃には移れない。
サナトスは何とか耐えてカウンターを狙っているようだ。
「救われた!? こんな蛮族が善意で助けると思うかッ? お前は体良く利用されているんだよッ!」
「お前に何が分かるッ! 一騎当千の戦士だった母が殺されて1人になった俺を保護してくれたのがヤツマガ村の長だッ! 俺はいずれ仇を取るッ!」
サナトスの槍の一閃が空を切る。
「自分の肌を見て分からないのか? お前の母を殺したのはもしかしたらこの村の者かも知れないぞ?」
「なんだと……?」
アスターゼが動揺を誘うつもりで言った言葉から予期せぬ方向へ話が進んでいる。サナトスは潰された足を引きずりながらアスターゼから距離を取った。
「お前は明らかにここの奴らと人種が違うだろ。聞いたがここから北へ行くと砂漠の国家があるんだってな。お前はそこの出身じゃないのか?」
「だとしても恩がない訳ではないだろう」
「俺が言いたいのはこの村の奴らがお前の仇なんじゃないかってことだ」
サナトスの敵意むき出しだった表情が困惑に変わる。
もしかすると何か思い当たる節があるのかも知れない。
「サナトスッ! 何をしておるッ! 早く始末しろッ!」
どこか焦ったような声を上げるのは副酋長の男だ。
その時、すぐ近くで喊声が上がる。
アスターゼがそちらへ目を転じれば、花精霊族の有志たちが広間へと乱入してくるところであった。
「何事だぁ!?」
見れば花精霊族が武器を振るう手に戸惑いなど感じられない。
恐らく自らを奮い立たせて独立を勝ち取ろうと戦っているのだろう。
シャルルも月光騎士として剣を振るっている。そこに怯えはない。
心配が杞憂に終わり、アスターゼはホッとしていた。
あっと言う間に広間は大混乱に陥る。
武装していなかった者は次々と討ち取られていき、既に戦意を失いかけていた兵士たちは我先にと逃亡を開始した。
副酋長の姿は既にない。逃げ足は速いようだ。
「くそッ!」
サナトスも足を引きずりながら逃亡を開始した。
広間から人間が駆逐されるのにそれ程時間は掛からなかった。
花精霊族たちは社を制圧すべく、あちこちに散らばっている。
「どうやら成功ですね」
「ああ、アスターゼ殿、ご助力感謝する」
「大変なのはこれからですよ」
アスターゼに礼を言うトラットスに言った。
重心を低くしてアスターゼの正面から鋭い突きを放つ。
確かに他の兵士たちとはレベルが違うのが分かる。
アスターゼは右足を引いて半身になり余裕でこれを交わす。
サナトスもかわされることを予期していたようでピタリと槍を静止させると、今度は横薙ぎに払ってくる。
――甘い
その程度の攻撃など読み切っていたアスターゼは右側面でガードしつつ、まずは武器を奪いにかかる。
足と肘で槍の柄を挟み込み圧し折ろうと力を籠めた。
しかし、サナトスもそうはさせじと槍を鋭く引いて折られるのを防ぐ。
その際、槍の刃の部分がアスターゼの体を少しだけ傷つけた。
「大口を叩くだけあって他の兵士とは違うようだな」
「お前こそどこの蛮族かは知らんが多少は戦るようだ」
アスターゼの賞賛の言葉に、どこか嬉しそうな表情で応えるサナトス。
もしかしたら彼をまともに相手取ることのできる兵士がいなかったのかも知れない。サナトスの情報は既に特性【看過】により分かっている。
名前:サナトス
種族:人間族
性別:男性
年齢:28歳
職業:槍使い
職能1:槍術
職能2:-
加護:太陽の加護Lv3
耐性:恐慌Lv5、威圧Lv4、毒物Lv6
職位:槍術Lv6
特性:【石突Lv5】【三段突きLv5】【薙ぎ払いLv4】【連撃Lv3】
今のところ押されてはいないが、特性の名前からどんな攻撃がくるのかは大体想像できる。
アスターゼに油断などない。
周囲の兵士たちは二人の戦いに見入っていて乱入してくる者はいない。
ここはジワジワと追い詰めて仕留めるつもりでアスターゼは円を描くかのように動き出した。
サナトスも動きを追って槍の穂先で牽制してくる。
時々飛んでくる突きを手でいなしつつ、横の動きから一気に間合いを詰めるアスターゼ。
あまりにも速いその足捌きに、再び間合いを開けることを諦めたサナトスは、アスターゼを迎え討つかのように前へ出る。
そして槍の石突の部分で急所を狙ってくる。
「チッ!」
「ハァッ!」
二人の口から相反した心情が混じった声が漏れる。
アスターゼは石突の攻撃を防ぐと、左の鉤突きをサナトスの右脇腹へ捻じ込んだ。
「がぁッ!」
連撃に移りたいアスターゼはブーツでサナトスの足を踏みつぶした後、そのまま金的を入れる。
サナトスは反射的に股を閉じてそれを防ぐが表情は優れない。
彼の実力を見切ったアスターゼは批難を込めて叫んだ。
「何故、そんな腕がありながらこんな奴らに味方するッ!?」
「こんな奴らだと!? 俺は小さな頃に救われたのだッ!」
アスターゼはなおも攻撃の手を緩めない。
一度守勢に回れば中々反撃には移れない。
サナトスは何とか耐えてカウンターを狙っているようだ。
「救われた!? こんな蛮族が善意で助けると思うかッ? お前は体良く利用されているんだよッ!」
「お前に何が分かるッ! 一騎当千の戦士だった母が殺されて1人になった俺を保護してくれたのがヤツマガ村の長だッ! 俺はいずれ仇を取るッ!」
サナトスの槍の一閃が空を切る。
「自分の肌を見て分からないのか? お前の母を殺したのはもしかしたらこの村の者かも知れないぞ?」
「なんだと……?」
アスターゼが動揺を誘うつもりで言った言葉から予期せぬ方向へ話が進んでいる。サナトスは潰された足を引きずりながらアスターゼから距離を取った。
「お前は明らかにここの奴らと人種が違うだろ。聞いたがここから北へ行くと砂漠の国家があるんだってな。お前はそこの出身じゃないのか?」
「だとしても恩がない訳ではないだろう」
「俺が言いたいのはこの村の奴らがお前の仇なんじゃないかってことだ」
サナトスの敵意むき出しだった表情が困惑に変わる。
もしかすると何か思い当たる節があるのかも知れない。
「サナトスッ! 何をしておるッ! 早く始末しろッ!」
どこか焦ったような声を上げるのは副酋長の男だ。
その時、すぐ近くで喊声が上がる。
アスターゼがそちらへ目を転じれば、花精霊族の有志たちが広間へと乱入してくるところであった。
「何事だぁ!?」
見れば花精霊族が武器を振るう手に戸惑いなど感じられない。
恐らく自らを奮い立たせて独立を勝ち取ろうと戦っているのだろう。
シャルルも月光騎士として剣を振るっている。そこに怯えはない。
心配が杞憂に終わり、アスターゼはホッとしていた。
あっと言う間に広間は大混乱に陥る。
武装していなかった者は次々と討ち取られていき、既に戦意を失いかけていた兵士たちは我先にと逃亡を開始した。
副酋長の姿は既にない。逃げ足は速いようだ。
「くそッ!」
サナトスも足を引きずりながら逃亡を開始した。
広間から人間が駆逐されるのにそれ程時間は掛からなかった。
花精霊族たちは社を制圧すべく、あちこちに散らばっている。
「どうやら成功ですね」
「ああ、アスターゼ殿、ご助力感謝する」
「大変なのはこれからですよ」
アスターゼに礼を言うトラットスに言った。
10
あなたにおすすめの小説
ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります
はぶさん
ファンタジー
ブラック企業で心をすり減らし過労死した俺が、異世界で手にしたのは『ポイント』を貯めてあらゆるものと交換できるスキルだった。
「今度こそ、誰にも搾取されないスローライフを送る!」
そう誓い、辺境の村で農業を始めたはずが、飢饉に苦しむ人々を見過ごせない。前世の知識とポイントで交換した現代の調味料で「奇跡のプリン」を生み出し、村を救った功績は、やがて王都の知るところとなる。
これは、ポイント稼ぎに執着する元社畜が、温かい食卓を夢見るうちに、うっかり世界の謎と巨大な悪意に立ち向かってしまう物語。最強農民の異世界改革、ここに開幕!
毎日二話更新できるよう頑張ります!
【第2章完結】最強な精霊王に転生しました。のんびりライフを送りたかったのに、問題にばかり巻き込まれるのはなんで?
山咲莉亜
ファンタジー
ある日、高校二年生だった桜井渚は魔法を扱うことができ、世界最強とされる精霊王に転生した。家族で海に遊びに行ったが遊んでいる最中に溺れた幼い弟を助け、代わりに自分が死んでしまったのだ。
だけど正直、俺は精霊王の立場に興味はない。精霊らしく、のんびり気楽に生きてみせるよ。
趣味の寝ることと読書だけをしてマイペースに生きるつもりだったナギサだが、優しく仲間思いな性格が災いして次々とトラブルに巻き込まれていく。果たしてナギサはそれらを乗り越えていくことができるのか。そして彼の行動原理とは……?
ロマンス、コメディ、シリアス───これは物語が進むにつれて露わになるナギサの闇やトラブルを共に乗り越えていく仲間達の物語。
※HOT男性ランキング最高6位でした。ありがとうございました!
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで
六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。
乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。
ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。
有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。
前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
1歳児天使の異世界生活!
春爛漫
ファンタジー
夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。
※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる