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第2章 花精霊族解放編
第43話 決戦
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先に仕掛けたのはサナトスであった。
重心を低くしてアスターゼの正面から鋭い突きを放つ。
確かに他の兵士たちとはレベルが違うのが分かる。
アスターゼは右足を引いて半身になり余裕でこれを交わす。
サナトスもかわされることを予期していたようでピタリと槍を静止させると、今度は横薙ぎに払ってくる。
――甘い
その程度の攻撃など読み切っていたアスターゼは右側面でガードしつつ、まずは武器を奪いにかかる。
足と肘で槍の柄を挟み込み圧し折ろうと力を籠めた。
しかし、サナトスもそうはさせじと槍を鋭く引いて折られるのを防ぐ。
その際、槍の刃の部分がアスターゼの体を少しだけ傷つけた。
「大口を叩くだけあって他の兵士とは違うようだな」
「お前こそどこの蛮族かは知らんが多少は戦るようだ」
アスターゼの賞賛の言葉に、どこか嬉しそうな表情で応えるサナトス。
もしかしたら彼をまともに相手取ることのできる兵士がいなかったのかも知れない。サナトスの情報は既に特性【看過】により分かっている。
名前:サナトス
種族:人間族
性別:男性
年齢:28歳
職業:槍使い
職能1:槍術
職能2:-
加護:太陽の加護Lv3
耐性:恐慌Lv5、威圧Lv4、毒物Lv6
職位:槍術Lv6
特性:【石突Lv5】【三段突きLv5】【薙ぎ払いLv4】【連撃Lv3】
今のところ押されてはいないが、特性の名前からどんな攻撃がくるのかは大体想像できる。
アスターゼに油断などない。
周囲の兵士たちは二人の戦いに見入っていて乱入してくる者はいない。
ここはジワジワと追い詰めて仕留めるつもりでアスターゼは円を描くかのように動き出した。
サナトスも動きを追って槍の穂先で牽制してくる。
時々飛んでくる突きを手でいなしつつ、横の動きから一気に間合いを詰めるアスターゼ。
あまりにも速いその足捌きに、再び間合いを開けることを諦めたサナトスは、アスターゼを迎え討つかのように前へ出る。
そして槍の石突の部分で急所を狙ってくる。
「チッ!」
「ハァッ!」
二人の口から相反した心情が混じった声が漏れる。
アスターゼは石突の攻撃を防ぐと、左の鉤突きをサナトスの右脇腹へ捻じ込んだ。
「がぁッ!」
連撃に移りたいアスターゼはブーツでサナトスの足を踏みつぶした後、そのまま金的を入れる。
サナトスは反射的に股を閉じてそれを防ぐが表情は優れない。
彼の実力を見切ったアスターゼは批難を込めて叫んだ。
「何故、そんな腕がありながらこんな奴らに味方するッ!?」
「こんな奴らだと!? 俺は小さな頃に救われたのだッ!」
アスターゼはなおも攻撃の手を緩めない。
一度守勢に回れば中々反撃には移れない。
サナトスは何とか耐えてカウンターを狙っているようだ。
「救われた!? こんな蛮族が善意で助けると思うかッ? お前は体良く利用されているんだよッ!」
「お前に何が分かるッ! 一騎当千の戦士だった母が殺されて1人になった俺を保護してくれたのがヤツマガ村の長だッ! 俺はいずれ仇を取るッ!」
サナトスの槍の一閃が空を切る。
「自分の肌を見て分からないのか? お前の母を殺したのはもしかしたらこの村の者かも知れないぞ?」
「なんだと……?」
アスターゼが動揺を誘うつもりで言った言葉から予期せぬ方向へ話が進んでいる。サナトスは潰された足を引きずりながらアスターゼから距離を取った。
「お前は明らかにここの奴らと人種が違うだろ。聞いたがここから北へ行くと砂漠の国家があるんだってな。お前はそこの出身じゃないのか?」
「だとしても恩がない訳ではないだろう」
「俺が言いたいのはこの村の奴らがお前の仇なんじゃないかってことだ」
サナトスの敵意むき出しだった表情が困惑に変わる。
もしかすると何か思い当たる節があるのかも知れない。
「サナトスッ! 何をしておるッ! 早く始末しろッ!」
どこか焦ったような声を上げるのは副酋長の男だ。
その時、すぐ近くで喊声が上がる。
アスターゼがそちらへ目を転じれば、花精霊族の有志たちが広間へと乱入してくるところであった。
「何事だぁ!?」
見れば花精霊族が武器を振るう手に戸惑いなど感じられない。
恐らく自らを奮い立たせて独立を勝ち取ろうと戦っているのだろう。
シャルルも月光騎士として剣を振るっている。そこに怯えはない。
心配が杞憂に終わり、アスターゼはホッとしていた。
あっと言う間に広間は大混乱に陥る。
武装していなかった者は次々と討ち取られていき、既に戦意を失いかけていた兵士たちは我先にと逃亡を開始した。
副酋長の姿は既にない。逃げ足は速いようだ。
「くそッ!」
サナトスも足を引きずりながら逃亡を開始した。
広間から人間が駆逐されるのにそれ程時間は掛からなかった。
花精霊族たちは社を制圧すべく、あちこちに散らばっている。
「どうやら成功ですね」
「ああ、アスターゼ殿、ご助力感謝する」
「大変なのはこれからですよ」
アスターゼに礼を言うトラットスに言った。
重心を低くしてアスターゼの正面から鋭い突きを放つ。
確かに他の兵士たちとはレベルが違うのが分かる。
アスターゼは右足を引いて半身になり余裕でこれを交わす。
サナトスもかわされることを予期していたようでピタリと槍を静止させると、今度は横薙ぎに払ってくる。
――甘い
その程度の攻撃など読み切っていたアスターゼは右側面でガードしつつ、まずは武器を奪いにかかる。
足と肘で槍の柄を挟み込み圧し折ろうと力を籠めた。
しかし、サナトスもそうはさせじと槍を鋭く引いて折られるのを防ぐ。
その際、槍の刃の部分がアスターゼの体を少しだけ傷つけた。
「大口を叩くだけあって他の兵士とは違うようだな」
「お前こそどこの蛮族かは知らんが多少は戦るようだ」
アスターゼの賞賛の言葉に、どこか嬉しそうな表情で応えるサナトス。
もしかしたら彼をまともに相手取ることのできる兵士がいなかったのかも知れない。サナトスの情報は既に特性【看過】により分かっている。
名前:サナトス
種族:人間族
性別:男性
年齢:28歳
職業:槍使い
職能1:槍術
職能2:-
加護:太陽の加護Lv3
耐性:恐慌Lv5、威圧Lv4、毒物Lv6
職位:槍術Lv6
特性:【石突Lv5】【三段突きLv5】【薙ぎ払いLv4】【連撃Lv3】
今のところ押されてはいないが、特性の名前からどんな攻撃がくるのかは大体想像できる。
アスターゼに油断などない。
周囲の兵士たちは二人の戦いに見入っていて乱入してくる者はいない。
ここはジワジワと追い詰めて仕留めるつもりでアスターゼは円を描くかのように動き出した。
サナトスも動きを追って槍の穂先で牽制してくる。
時々飛んでくる突きを手でいなしつつ、横の動きから一気に間合いを詰めるアスターゼ。
あまりにも速いその足捌きに、再び間合いを開けることを諦めたサナトスは、アスターゼを迎え討つかのように前へ出る。
そして槍の石突の部分で急所を狙ってくる。
「チッ!」
「ハァッ!」
二人の口から相反した心情が混じった声が漏れる。
アスターゼは石突の攻撃を防ぐと、左の鉤突きをサナトスの右脇腹へ捻じ込んだ。
「がぁッ!」
連撃に移りたいアスターゼはブーツでサナトスの足を踏みつぶした後、そのまま金的を入れる。
サナトスは反射的に股を閉じてそれを防ぐが表情は優れない。
彼の実力を見切ったアスターゼは批難を込めて叫んだ。
「何故、そんな腕がありながらこんな奴らに味方するッ!?」
「こんな奴らだと!? 俺は小さな頃に救われたのだッ!」
アスターゼはなおも攻撃の手を緩めない。
一度守勢に回れば中々反撃には移れない。
サナトスは何とか耐えてカウンターを狙っているようだ。
「救われた!? こんな蛮族が善意で助けると思うかッ? お前は体良く利用されているんだよッ!」
「お前に何が分かるッ! 一騎当千の戦士だった母が殺されて1人になった俺を保護してくれたのがヤツマガ村の長だッ! 俺はいずれ仇を取るッ!」
サナトスの槍の一閃が空を切る。
「自分の肌を見て分からないのか? お前の母を殺したのはもしかしたらこの村の者かも知れないぞ?」
「なんだと……?」
アスターゼが動揺を誘うつもりで言った言葉から予期せぬ方向へ話が進んでいる。サナトスは潰された足を引きずりながらアスターゼから距離を取った。
「お前は明らかにここの奴らと人種が違うだろ。聞いたがここから北へ行くと砂漠の国家があるんだってな。お前はそこの出身じゃないのか?」
「だとしても恩がない訳ではないだろう」
「俺が言いたいのはこの村の奴らがお前の仇なんじゃないかってことだ」
サナトスの敵意むき出しだった表情が困惑に変わる。
もしかすると何か思い当たる節があるのかも知れない。
「サナトスッ! 何をしておるッ! 早く始末しろッ!」
どこか焦ったような声を上げるのは副酋長の男だ。
その時、すぐ近くで喊声が上がる。
アスターゼがそちらへ目を転じれば、花精霊族の有志たちが広間へと乱入してくるところであった。
「何事だぁ!?」
見れば花精霊族が武器を振るう手に戸惑いなど感じられない。
恐らく自らを奮い立たせて独立を勝ち取ろうと戦っているのだろう。
シャルルも月光騎士として剣を振るっている。そこに怯えはない。
心配が杞憂に終わり、アスターゼはホッとしていた。
あっと言う間に広間は大混乱に陥る。
武装していなかった者は次々と討ち取られていき、既に戦意を失いかけていた兵士たちは我先にと逃亡を開始した。
副酋長の姿は既にない。逃げ足は速いようだ。
「くそッ!」
サナトスも足を引きずりながら逃亡を開始した。
広間から人間が駆逐されるのにそれ程時間は掛からなかった。
花精霊族たちは社を制圧すべく、あちこちに散らばっている。
「どうやら成功ですね」
「ああ、アスターゼ殿、ご助力感謝する」
「大変なのはこれからですよ」
アスターゼに礼を言うトラットスに言った。
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