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第103話 フケン要塞攻略戦 ②
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――中央ゴレムス暦1583年6月21日
フケン要塞 おっさん
1日目の攻撃は跳ね返され続けた。
アルタイナの捕虜の攻撃を中心にベアトリスの部隊も違う方向から攻めたのだが、抵抗が激しかったのだ。
それでも督戦の効果があったのかアウレア軍の損失は少ない。
流石の要塞と言ったところだろう。
しかしここで手をこまねいているようならアルタイナ軍の増援が来る可能性がある。多少強引にでも攻めるべきなのかも知れないとおっさんは覚悟した。
今日の攻撃もまずは捕虜たちに攻めさせた。
なるべく敵に休息を与えないために間断なくだ。
朝一番での攻撃は苛烈を極めた。
アルタイナ兵同士の怒号が飛び交い両者の本気が窺える。
「お前ら降伏しやがれ!」
「何だとこの敵に降伏したクソ野郎共がッ!」
「俺は死にたくないんだ! 降伏してくれッ!」
「負け犬がぁ! アルタイナの誇りを胸に死ぬのがお前らの役割だッ!」
同時に北東側からアチソン男爵とアーネット子爵、キングストン伯爵のこちらも間断ない攻撃でかなりの被害を与えていた。
しかし、流石に要塞に一二○○○近くの兵がいればそう簡単に攻め落とせるはずがなかった。
「チッ……中に入れさえすれば……」
おっさんも自覚なく悪態をついてしまう程に戦況は均衡していた。
銃声が戦場に木霊し、人々の悲鳴が空間を支配する。
さらに要塞璧からだけでなく東門への直接攻撃も同時に行うようおっさんは支持を出した。近くの森から切り出した木を使って破城槌を作らせたのだ。こちらの攻撃にも捕虜を使っている。
こうして果てなき攻防が永遠の如く繰り返され時ばかりが過ぎていく。
◆ ◆ ◆
アウレアのエレギス連合王国大使館ではレオーネとサネトス中佐が難しい顔で話し合っていた。
「マズイですね……」
「そうですな。早期決着が求められます」
「ここに来てガーレ帝國が介入の動きを見せるなど……」
何の話かと言うと、レオーネの下にガーレ帝國が水面下でアルタイナと交渉しているとの情報が入ってきたのだ。アルタイナに革新派があるように、現在の皇帝は守旧派として大勢を占めていた。アウレアも何もしていなかった訳ではないが、アルタイナの革新派があまりにも小勢であったため有効な策を取れないでいたのである。
「ガーレ帝國の介入があるとすれば、軍事行動か? それとも仲介か?」
「まぁ軍事行動でしょうな」
「どうしても東ディッサニア大陸の覇権を取りたいと見えますね」
「ガーレ帝國が本格参戦すればアウレアの被害は大きくなり、アルタイナにおける帝國の発言力も増します。周辺のパワーバランスも崩れることでしょうな」
いつも泰然としているレオーネであったが、今は焦りの交じった声でデスクを叩いて悔しそうな表情を見せている。
「アルタイナに駐留しているヴァルムド帝國やガヴァリム帝國と話を付けたのでしょうか?」
「現在、本国を通して確認中です」
「私が直接言ってきてやろうかしら」
「時間がございませんな」
「分かっているわ。冗談よ」
こうして安定していた列強による国際秩序にもわずかながらズレが生じていた。
しかし、蟻の穴から堤も崩れるもの。
これが新世界秩序の開幕の序章であることを知る者はまだいない。
◆ ◆ ◆
フケン要塞の西側から南にかけては峡谷のような断崖になっている。
そのためこちらからは攻められないし、アルタイナ軍も攻められることはないと考えていた。
おっさんはここで危険な方法でフケン要塞への侵入を試みることにした。
もちろん、普通に攻めるのだって危険なことには変わりないのだが。
おっさんは本陣にベアトリスとドーガを呼び出した。
間もなく彼らが到着するとおっさんは神妙な顔で話し始める。
「まだ2日目だが、あまり時間を掛ける訳にもいかん。そこでやって欲しいことがある」
「御意」
「分かりましてございます」
普段のおっさんからは感じられないのっぴきならない雰囲気にドーガとベアトリスも真剣な表情を作り返事する。
「貴君らには西の断崖から要塞を攻撃してほしい」
「は……と言われましても」
「分かりかねますが……」
「うん。まず貴君らには峡谷の下に降りてもらう。そして再び崖を登ってもらい要塞内に侵入してほしい」
『!?』
ドーガとベアトリスが驚愕の表情をつくる。
体は硬直し、言われたことを懸命に咀嚼しているように見える。
「閣下、それは無茶と言うものでは……」
「流石に閣下の配下の方々でもあの断崖をよじ登るのは無理ですぞ!」
貴族諸侯から反対の声が上がるがおっさんは取り合わない。
「西側は断崖だが絶壁ではない。敵の考慮していないところからの奇襲しか早期の勝利はあり得ない。ここに鉄の杭とロープがある。それを使って侵入してくれ」
「分かりました。その大役このベアトリスが引き受けましょう」
「すまんなベアトリス。期待している」
「しかし、これだけはお聞き入れ頂きたい! 我らがそれで勝利した暁には2度と督戦のような外道の戦法を使わないと!」
ベアトリスは仁義あふれる英雄の末裔だ。
あのような鬼畜の所業は例えおっさんの命令と言えど許せなかったのである。
「……!? 分かった。約束しよう」
おっさんとてそれが人の道を外れている行為だと理解していた。
その時、思っても見なかった方からおっさんに意見具申がなされた。
「元帥閣下、その任務を私にもご命じください」
「君が? レスター少尉、これは非常に危険な任務だよ?」
「分かっております。私は新参……このような危険な任務は私の仕事だと愚考します!」
おっさんも考えの埒外であったため少しだけ逡巡してしまう。
アイル・レスターまさかの発言であった。
「問題ございません。閣下に頂いた力、存分に奮ってみせましょう!」
「力……?」
「はて?」
おっさんはあまり能力に関することは言うなよと思いつつ、ここはレスターの試し所だと考える。このような場で自分の意見を通そうとする胆力は分かった。あとはそれを実行できるかどうかだ。
「よかろう。ではベアトリスとレスターに頼む。ドーガは陣に戻れ」
「あー閣下、ここで退いては男が廃ります。私も参加致しますので」
「命令だぞ?」
「理解しております」
これまでいつも従順だったドーガのまさかの反抗におっさんは思わず舌打ちをする。しかし彼の気持ちも分からんではないおっさんである。
「分かった。気付かれるなよ」
「御意」
こうしておっさん直属の部下3人による一世一代の大博打が始まろうとしていた。
フケン要塞 おっさん
1日目の攻撃は跳ね返され続けた。
アルタイナの捕虜の攻撃を中心にベアトリスの部隊も違う方向から攻めたのだが、抵抗が激しかったのだ。
それでも督戦の効果があったのかアウレア軍の損失は少ない。
流石の要塞と言ったところだろう。
しかしここで手をこまねいているようならアルタイナ軍の増援が来る可能性がある。多少強引にでも攻めるべきなのかも知れないとおっさんは覚悟した。
今日の攻撃もまずは捕虜たちに攻めさせた。
なるべく敵に休息を与えないために間断なくだ。
朝一番での攻撃は苛烈を極めた。
アルタイナ兵同士の怒号が飛び交い両者の本気が窺える。
「お前ら降伏しやがれ!」
「何だとこの敵に降伏したクソ野郎共がッ!」
「俺は死にたくないんだ! 降伏してくれッ!」
「負け犬がぁ! アルタイナの誇りを胸に死ぬのがお前らの役割だッ!」
同時に北東側からアチソン男爵とアーネット子爵、キングストン伯爵のこちらも間断ない攻撃でかなりの被害を与えていた。
しかし、流石に要塞に一二○○○近くの兵がいればそう簡単に攻め落とせるはずがなかった。
「チッ……中に入れさえすれば……」
おっさんも自覚なく悪態をついてしまう程に戦況は均衡していた。
銃声が戦場に木霊し、人々の悲鳴が空間を支配する。
さらに要塞璧からだけでなく東門への直接攻撃も同時に行うようおっさんは支持を出した。近くの森から切り出した木を使って破城槌を作らせたのだ。こちらの攻撃にも捕虜を使っている。
こうして果てなき攻防が永遠の如く繰り返され時ばかりが過ぎていく。
◆ ◆ ◆
アウレアのエレギス連合王国大使館ではレオーネとサネトス中佐が難しい顔で話し合っていた。
「マズイですね……」
「そうですな。早期決着が求められます」
「ここに来てガーレ帝國が介入の動きを見せるなど……」
何の話かと言うと、レオーネの下にガーレ帝國が水面下でアルタイナと交渉しているとの情報が入ってきたのだ。アルタイナに革新派があるように、現在の皇帝は守旧派として大勢を占めていた。アウレアも何もしていなかった訳ではないが、アルタイナの革新派があまりにも小勢であったため有効な策を取れないでいたのである。
「ガーレ帝國の介入があるとすれば、軍事行動か? それとも仲介か?」
「まぁ軍事行動でしょうな」
「どうしても東ディッサニア大陸の覇権を取りたいと見えますね」
「ガーレ帝國が本格参戦すればアウレアの被害は大きくなり、アルタイナにおける帝國の発言力も増します。周辺のパワーバランスも崩れることでしょうな」
いつも泰然としているレオーネであったが、今は焦りの交じった声でデスクを叩いて悔しそうな表情を見せている。
「アルタイナに駐留しているヴァルムド帝國やガヴァリム帝國と話を付けたのでしょうか?」
「現在、本国を通して確認中です」
「私が直接言ってきてやろうかしら」
「時間がございませんな」
「分かっているわ。冗談よ」
こうして安定していた列強による国際秩序にもわずかながらズレが生じていた。
しかし、蟻の穴から堤も崩れるもの。
これが新世界秩序の開幕の序章であることを知る者はまだいない。
◆ ◆ ◆
フケン要塞の西側から南にかけては峡谷のような断崖になっている。
そのためこちらからは攻められないし、アルタイナ軍も攻められることはないと考えていた。
おっさんはここで危険な方法でフケン要塞への侵入を試みることにした。
もちろん、普通に攻めるのだって危険なことには変わりないのだが。
おっさんは本陣にベアトリスとドーガを呼び出した。
間もなく彼らが到着するとおっさんは神妙な顔で話し始める。
「まだ2日目だが、あまり時間を掛ける訳にもいかん。そこでやって欲しいことがある」
「御意」
「分かりましてございます」
普段のおっさんからは感じられないのっぴきならない雰囲気にドーガとベアトリスも真剣な表情を作り返事する。
「貴君らには西の断崖から要塞を攻撃してほしい」
「は……と言われましても」
「分かりかねますが……」
「うん。まず貴君らには峡谷の下に降りてもらう。そして再び崖を登ってもらい要塞内に侵入してほしい」
『!?』
ドーガとベアトリスが驚愕の表情をつくる。
体は硬直し、言われたことを懸命に咀嚼しているように見える。
「閣下、それは無茶と言うものでは……」
「流石に閣下の配下の方々でもあの断崖をよじ登るのは無理ですぞ!」
貴族諸侯から反対の声が上がるがおっさんは取り合わない。
「西側は断崖だが絶壁ではない。敵の考慮していないところからの奇襲しか早期の勝利はあり得ない。ここに鉄の杭とロープがある。それを使って侵入してくれ」
「分かりました。その大役このベアトリスが引き受けましょう」
「すまんなベアトリス。期待している」
「しかし、これだけはお聞き入れ頂きたい! 我らがそれで勝利した暁には2度と督戦のような外道の戦法を使わないと!」
ベアトリスは仁義あふれる英雄の末裔だ。
あのような鬼畜の所業は例えおっさんの命令と言えど許せなかったのである。
「……!? 分かった。約束しよう」
おっさんとてそれが人の道を外れている行為だと理解していた。
その時、思っても見なかった方からおっさんに意見具申がなされた。
「元帥閣下、その任務を私にもご命じください」
「君が? レスター少尉、これは非常に危険な任務だよ?」
「分かっております。私は新参……このような危険な任務は私の仕事だと愚考します!」
おっさんも考えの埒外であったため少しだけ逡巡してしまう。
アイル・レスターまさかの発言であった。
「問題ございません。閣下に頂いた力、存分に奮ってみせましょう!」
「力……?」
「はて?」
おっさんはあまり能力に関することは言うなよと思いつつ、ここはレスターの試し所だと考える。このような場で自分の意見を通そうとする胆力は分かった。あとはそれを実行できるかどうかだ。
「よかろう。ではベアトリスとレスターに頼む。ドーガは陣に戻れ」
「あー閣下、ここで退いては男が廃ります。私も参加致しますので」
「命令だぞ?」
「理解しております」
これまでいつも従順だったドーガのまさかの反抗におっさんは思わず舌打ちをする。しかし彼の気持ちも分からんではないおっさんである。
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