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第三章 死霊都市レムレース
3-13 酒宴
しおりを挟む「ふははは。マッドゴーレムを圧倒した人間の英雄に乾杯!」
首領の蜥蜴人――ドドーマと言う――は、上機嫌でそう言うと、酒を一気にあおった。
レヴィン達が連れて来られたのは、造りかけの集落であった。
規模は小さいようだ。蜥蜴人の人数は五十人くらいである。
この場にいるのは十人程度だ。
屋根とそれを支える柱のみの造りの小屋にお邪魔している。
簡単なテーブルが中央に置かれており、皆、草の繊維を編んだ座布団のようなものに座っている。
レヴィン達は水出しハーブティのようなものを飲んでいた。
限りなく水に近い飲み物であった。
「これ、お腹壊さないかな?」
アリシアがシーンに問いかけている。
確かに心配だ。どこの水を使っているのだろうか。
「それにしても、最近この沼地に来たようですが、何かあったんですか?」
その質問にドドーマはよくぞ聞いてくれたとばかりに膝を叩くと顛末を話し始めた。
「我等はゲルダ沼に住んでいたのだが、度々沼地にやってくる人間の冒険者と事あるごとにもめごとになってな。人間と敵対するか否かでもめた結果、融和派の我々が部族を追い出されたという訳だ。しかしこの沼地は狭くてな。非常に困っている。どうだレヴィン殿、我等に協力して沼地を奪還してもらえぬか?」
こいつはアホなのかな?とレヴィンは困惑していた。
初めから面倒事になりそうな予感はしていたのだが、レヴィンは初めての蜥蜴人との交流イベントを楽しむ事を優先させてしまったのだ。
ちょっと早まったかな?と思うレヴィンである。
周囲を見渡すと、ダライアスとヴァイスが蜥蜴人と話している以外は、下を向いてお茶をちびちび飲んでいる。
「あなた方の権力争いに人間が手を貸したら、ますます強硬派が調子づくのでは? 下手をすれば、魔の森全ての蜥蜴人族から敵対視されると思うのですが……」
「ははッ心配には及ばぬよ。人間の力を思い知らせてやればヤツ等も意見を変えざるを得ないだろう」
(コイツ話聞いてねぇ)
「まぁ当分は沼地を広げるとかしてみたらどうですか? 冒険者ギルドにはこの沼の蜥蜴人は、友好的だから敵対するなと進言しておきますよ」
すると、ドドーマの隣りにいた、ジェイクという蜥蜴人が会話に入ってくる。
「それはありがたい。人間が本気になれば我々などひとたまりもないからな。是非お頼み申す」
「いえいえ、ここら辺は森の中でも浅い方ですから、人間との接触はかなり増えると思いますし」
「そうか、それで人間の協力者を増やしていけという事ですな? 今は我慢して戦力を温存しておき、次節到来のおりに一気呵成に敵を打ち滅ぼすのですな?」
ドドーマは都合のいい解釈しかできない頭の持ち主のようだ。
そんな彼にジェイクが諫言する。
「いえ、違います。ドドーマ様。我等はここで新しい部族として、出発すれば良いのです。無理に戦を仕掛ける必要などないのですぞ。人間と共存し、繁栄していけば、他の部族の中にも我等に賛同する者が出てくるやも知れませぬ」
もうジェイクが首領になればいいのでは?と思うレヴィンであった。
「むむむ……」
なにがむむむだと心の中で突っ込みを入れつつ、レヴィンは自分が役に立たない事を伝えておく。
「それに僕らはもうすぐ王都に帰らなければならないので、しばらくここに来れなくなりますよ?」
「なんとッ!? 話が違うではないかッ!?」
いや違わないと思います。
「それは残念ですな。我々はこの沼地で頑張って行きますので、またいつでも来て下され。冒険者ギルドへの進言の件、よろしくお願い申す」
そう言うと、ジェイクはペコリと頭を下げたのであった。
カルマの街に戻った一行は冒険者ギルドへ行くと報酬もらい、魔石を売ってお金に変えた後、ギルドマスターへの面会を求めた。
一時間ほど待たされた後、ギルドマスターの部屋へと案内される。
「失礼します」
「どうぞかけてくれ」
サディアスがそう言うと、用件を聞いてきた。
「実は、今回マッドゴーレム討伐で赴いた沼地に、蜥蜴人が移住してきたようなんです」
ふむふむと相槌を打ちながら先を促すサディアスにレヴィンは話を続ける。
「その蜥蜴人は、どうやら人間と仲良くしようとする融和派のようで、強硬派との争いに敗れてその沼地にやって来たという話です。なので、その沼の蜥蜴人とは仲良くするよう、ギルドから通達を出して頂きたくて」
サディアスは森の地図を持ってくると、どの沼地かと尋ねる。
レヴィンは一応地図は作成されているのかと思いつつ、その沼地を指差して教える。
「ふーん。なるほどね。蜥蜴人とは争う理由がないからね。通達を出しておこう」
蜥蜴人は、今までは人間に対して好戦的ではなかったし、人語も解し、素材にもならないので討伐依頼が出る事はほぼない。
なので人間側からすれば敵対する理由がないのだ。
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
お礼を言って立ち去ろうとすると、サディアスが話かけてきた。
まだ、話を続けたいようだ。
「それはいいんだけど、前に言っていた件、考え直してくれないかな?」
すると、そこにノックなしで扉が開き、ある人物が入ってきた。
驚きの表情を見せるのは、ルフィナである。
「なッ!? あなた達、今日は何の用があってきたっていうの?」
「もう終わったので帰るところですよ」
そう言って立ち上がろうとするレヴィン達にサディアスが待ったをかける。
「いや、待ってくれないか。レムレースの件がまだだ」
「なんでそこまで固執するんですか?」
今まで黙っていたベネディクトが理解できないといった表情で尋ねる。
「これはアウステリア王国からの強い要望なんだ。今、王国には英雄が必要なんだよ。高ランクの冒険者がね」
「しかし、冒険者ギルドは国家から完全に独立した組織だと聞いています」
「確かに冒険者ギルドは国家から独立した組織だ。だけど完全に分かれている訳じゃない。どうしてもつながりっていうのは出てくるものなんだ。それに君達が名指しで指名された訳じゃない。将来有望な冒険者に声がかかっているんだ」
「そういう国家の横暴から冒険者を護るのもギルドの役割なのでは?」
ダライアスも不満気に反論する。
「まぁどっちにしろ、僕達は学校が再開されるので無理ですよ。もう王都に戻らなければなりません」
そう言うと、レヴィンは腰を上げる。
「解った。でも王都でも同じように勧誘を受けると思うよ……」
サディアスは力なく言うと執務用の椅子の方へ向かい、腰を下ろした。
ルフィナは出て行くレヴィン達の背中を睨み続けていた。
そして、レヴィン達は王都へと戻るのであった。
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