神様の願いを叶えて世界最強!! ~職業無職を極めて天下無双する~

波 七海

文字の大きさ
150 / 174
第五章 ドルトムットの闇

5-16 送別

しおりを挟む
 ドルトムットの邸宅に到着すると、執事のジェルマンが出迎えてくれた。
 別に待ち構えていた訳ではなく、たまたま居合わせただけのようだ。

 ジェルマンに、皆は今日何をしていたかをさりげなく聞いてみる。
 ドルトムット卿は執務室で政務を執り行っていたようだ。
 相次ぐ息子の死に動揺していたようだが、少しは吹っ切れたのかも知れない。
 夫人の方は、ほとんど部屋に閉じこもっていたようだ。
 庭園を少し散歩されていたらしいがわずかな時間だけだったとの事である。

 マイセンは出かけたようだが、ウォルターはしっかりと見てくれているだろうか?
 フレンダは、家庭教師のバーバラと短剣での稽古をつけてもらっているようだ。
 今、稽古中であるようなので、顔を出してみる事にした。

 邸宅の広場へ向かうと、カンカンと木をぶつけ合う音が聞こえてくる。
 その音に誘われて、稽古の場に到着する。
 見ると、フレンダと女性が木の短剣で剣と剣をぶつけ合っている。
 女性の方は家庭教師のバーバラだろう。青色のショートカットの髪が動くたびにわずかに揺れている。
 傍らには、二人の女性がいた。オレリアとルビーである。
 二人も剣のようなものを持っているので、稽古を受けているのかも知れない。

 フレンダのこういうところは初めてみるので新鮮だ。
 真剣な表情でバーバラと斬り結んでいる。
 二人の剣のぶつかり合いは、まるで剣舞のように美しく、見ているレヴィンを魅了した。魔法が使えないフレンダの事だから、短剣の稽古に長い時間を割いてきたのだろう。
 かなり無駄のない動きのように見えた。
 それでも、流石のバーバラと言ったところか、軍配はバーバラの方に上がった。
 木の短剣をフレンダの喉元に突きつけながら彼女は言った。

「強くなったわね。私も、うかうかしてられないわ」

「先生、ありがとうございました」

 ペコリと頭を下げながらお礼を言うフレンダは、頭を上げたところでようやく少し離れたところでにいるレヴィンに気づいたようだ。
 慌てて、わたわたし始める彼女は、いつも通りの表情を見せている。
 レヴィンが手を振ると、やっと自然な笑顔を見せてくれるフレンダ。
 やはり、彼女は笑っていた方が良い。レヴィンはそう考えながら広場を後にした。向かうは蔵書室だ。昨晩、ドルトムット卿に閲覧許可をもらっておいたのである。
 アウステリアにある全ての書籍の閲覧権をもらったレヴィンであるが、それを行使しなくても許可してもらえた事は僥倖である。
 強権を発動する事になんとなく抵抗のあるレヴィンであった。

 蔵書室につくと片っ端から本を漁り始める。
 夕食までまだ時間はあるので、心置きなく魔法の本を探す事ができる。
 それからレヴィンは、本探しに没頭した。



 夕食の時間になった。
 一応、ジェルマンに蔵書室にいると伝えておいたので、使用人が迎えに来てくれた。
 結論から言うと、魔導書は見つかった。
 何冊か有用な本が見つかったので、レヴィンの心はほくほくしている。

 部屋に入ると、ドルトムット卿以外のメンバーが揃っていた。
 ただ、今日の夕食は、いつものメンバーに追加してバーバラも参加する事になったようだ。レヴィンは何故だか解らなかったが、特に異論もないし、口を出せる立場でもないので何も言わない。
 しばらくして、ドルトムット卿が入ってきて、席に着くと料理が運ばれてくる。
 彼は、食べ始める前に、話し始めた。

「明日には、フレンダがドルトムットを発って王都へ行く事になる。今日は、お礼の意味も込めて、長年フレンダの家庭教師を務めてくれたバーバラ殿にも夕食に参加してもらった。喪中のため、大したものも出せないが楽しんで欲しい」

 送別の意味も込めて夕食に招待したのか、と納得するレヴィン。
 まだ肝心の本人から返事を聞いていないのだがいいのだろうか。

「バーバラ殿、長い間、フレンダがお世話になった。感謝している」

「いえ、剣の稽古ばかりで、その他の事はあまり教えてあげる事ができませんでした。申し訳なく思っております」

「そんな……先生には、多くの事を教えて頂きましたわ。本当に感謝しておりますわ」

「フレンダ嬢……王都へ行っても元気でやるのだぞ?」

「……はい」

 そんなこんなで夕食が始まった。
 レヴィンもバーバラに話しかけてみた。
 彼女は海賊戦鬼ヴァイキングで冒険者のランクはBだと言う話だ。
 こんなところに有能な人材が……とレヴィンは彼女も連れて帰りたくなった。
 ちなみに海賊戦鬼ヴァイキングは魔法も使える。ただ、使用可能なのは水魔法に限られる。

「フレンダ嬢は魔法は一つも覚えていないんでしたよね?」

「そうですね。闇魔法なんて誰も知りませんもの」

「私に魔法の知識がもっとあればよかったんだけど……」

 バーバラは申し訳なさそうにしている。質問にそんな意図はなかったので、レヴィンは慌てて謝った。
 その後、フレンダはバーバラに明日、王都へ出発するから来てほしいと伝えていた。

 レヴィンは、ここらで襲撃の話を出してみるかと、話題を変えてみる。

「そう言えば、今日、怪しいヤツらに襲われちゃいましたよ……しかも2回も」

「何ッ!? それは本当かね?」

 すかさず反応するドルトムット卿。
 レヴィンはマイセンの方を窺うも、何も聞かなかったかのように振る舞っている。
 しかし、少し顔が強張っているように見える。

「返り討ちにして、誰が背後にいるか聞き出して警備隊に突き出してやりました」

「いったい誰が黒幕なのかね?」

「神殿ですよ。まぁそれ以外の者も関わっているようですが」

 レヴィンは少しハッタリをかましてみる。
 ドルトムット卿は驚きを隠せないようだ。何故、神殿勢力がレヴィンを襲うのか理解できないでいる。
 他の者も驚いた表情をしている。

「それ以外?」

「まぁ、それは追々解るでしょう」

 レヴィンは言葉を濁した。
 彼の考えが当たっているならば、今夜もう一度襲撃があるはずだ。
 しかし、それはレヴィンではなく、ドルトムット卿を狙うものであろう。

「追々ね……」

 レヴィンはそう言うと、冷めた料理にフォークを突き刺した。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~

うみ
ファンタジー
 恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。  いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。  モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。  そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。  モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。  その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。  稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。 『箱を開けるモ』 「餌は待てと言ってるだろうに」  とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。

前世で薬漬けだったおっさん、エルフに転生して自由を得る

がい
ファンタジー
ある日突然世界的に流行した病気。 その治療薬『メシア』の副作用により薬漬けになってしまった森野宏人(35)は、療養として母方の祖父の家で暮らしいた。 爺ちゃんと山に狩りの手伝いに行く事が楽しみになった宏人だったが、田舎のコミュニティは狭く、宏人の良くない噂が広まってしまった。 爺ちゃんとの狩りに行けなくなった宏人は、勢いでピルケースに入っているメシアを全て口に放り込み、そのまま意識を失ってしまう。 『私の名前は女神メシア。貴方には二つ選択肢がございます。』 人として輪廻の輪に戻るか、別の世界に行くか悩む宏人だったが、女神様にエルフになれると言われ、新たな人生、いや、エルフ生を楽しむ事を決める宏人。 『せっかくエルフになれたんだ!自由に冒険や旅を楽しむぞ!』 諸事情により不定期更新になります。 完結まで頑張る!

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

クラスの陰キャボッチは現代最強の陰陽師!?~長らく継承者のいなかった神器を継承出来た僕はお姉ちゃんを治すために陰陽師界の頂点を目指していたら

リヒト
ファンタジー
 現代日本。人々が平和な日常を享受するその世界の裏側では、常に陰陽師と人類の敵である妖魔による激しい戦いが繰り広げられていた。  そんな世界において、クラスで友達のいない冴えない陰キャの少年である有馬優斗は、その陰陽師としての絶大な才能を持っていた。陰陽師としてのセンスはもちろん。特別な神具を振るう適性まであり、彼は現代最強の陰陽師に成れるだけの才能を有していた。  その少年が願うのはただ一つ。病気で寝たきりのお姉ちゃんを回復させること。  お姉ちゃんを病気から救うのに必要なのは陰陽師の中でも本当にトップにならなくては扱えない特別な道具を使うこと。    ならば、有馬優斗は望む。己が最強になることを。    お姉ちゃんの為に最強を目指す有馬優斗の周りには気づけば、何故か各名門の陰陽師家のご令嬢の姿があって……っ!?

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~

榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。 彼はその日から探索者――シーカーを目指した。 そして遂に訪れた覚醒の日。 「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」 スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。 「幸運の強化って……」 幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。 そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。 そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。 だが彼は知らない。 ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。 しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。 これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。

処理中です...