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第五章 ドルトムットの闇
5-26 逃避行②
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それからどれくらい経っただろうか。
レヴィンは、床におでこをぶつけて目を覚ました。
どうやら舟をこいでいたようだ。
「ん。俺はどれくらい寝ていた?」
「おそらく2時間程度かと」
「そろそろ他の追手がくるかも知れんね」
「話してるとこ、すまねぇが漏れそうなんだ。少し休憩を入れてもらえねぇか?」
「そっか、皆も馬車に乗りっぱなしじゃ疲れるだろうし休憩とるか」
レヴィンはそう言うと御者に近づいて、前を行く馬車を追い越して止まるように指示を出す。馬車はその指示の通り、前の馬車を抜き去ると、ゆっくりと速度を落とし始めた。やがて、完全に馬車が止まるとレヴィンは、荷台から飛び降りて大きく伸びをした。
「ウォルター、その人達の監視お願いね」
レヴィンが後方の馬車に近づくと、フレンダ達も馬車から降りてきて凝り固まった筋肉を伸ばそうと軽く体操のような動きをしている。
「お疲れ様です。少し休憩にしましょう」
「あ、ナミディア卿。追手はかからなかったようですね!」
無邪気な感じでオレリアがレヴィンに話しかけて来る。
「あ、追手は来ましたよ。だいたい30人くらいいたんじゃないでしょうか」
「え、そうなのですか!? 全然気づきませんでした」
「魔法で撃退したので……でも殺した訳ではありませんから、また来るかも知れません」
最初の追手はマイセンの私設騎士団であった。
あの程度で諦めるマイセンではないだろうとレヴィンは考えている。
次に来るのはマイセンか、はたまた神殿か、どっちにしろ手加減はできない。
フレンダ達を危険にさらす訳にはいかないのだ。
殺すのをためらっていては、こちらが殺されるのである。
レヴィンはとっくに人を殺す覚悟をし終わっていた。
荷馬車が先頭に来てしまったので、後続の馬車に追い抜かせて再び殿を務めるべく最後尾に配置する。
荷馬車に腰かけて、しばらく休憩していると遠くから砂埃を巻き上げて何かが接近してきているのが見えた。
「追手か……」
フレンダ達だけを出発させても追手はそちらへ向かうだろう。
適度な距離感を保っていつでも逃げられるようにしつつ、援護もできるように備えておく事にする。
十中八九、追手だろうが、何かの任務で街道を爆走しているだけかも知れない。
いきなり魔法をぶちかますのは、よくないだろう。
しかし、あの騎馬隊にそのままの勢いで突撃されたらひとたまりもないなと思い、レヴィンは一計を案じる。
「大地陥穽」
魔法を発動させると、レヴィンの手前に大きな穴がぽっかりと姿を現した。
街道にこんな穴を開けるなんて迷惑極まりないが、緊急避難と言う事で許してもらいたいところだ。
「大地障璧」
あとは虚空から現れたこの土の障壁で横手をカバーする。
砂埃は最早、騎馬の集団であると視認する事ができるくらいに近づいてきている。準備をしている間にも、どんどん接近しているのだが一向に速度が落ちない。
(まさか落とし穴に突っ込む気か?)
爆走する騎上からの目線では穴に気づかないのかも知れない。
その間にもレヴィンは、指示を出しつつ魔法をかける。
フレンダとオレリアには馬車の中に入っていてもらい、弓避けに風の結界をウォルターとバーバラにもかける。
後は待ち構えるだけだと、覚悟を決めて前方を睨みつけるレヴィン。
「自動弓でこちらを狙っているようですな」
ウォルターがそう言うので、レヴィンは、念のため回避行動をとるように指示を出す。威力の強い弓だった場合、風の結界が貫かれる場合もあるからだ。
すると、ヒュンと風切り音がして何本もの矢が飛来する。
しかし、馬上からの射撃故か、はたまたこちらが三人だけだったからなのかは解らないが矢がレヴィン達に当たる事はなかった。
馬上の敵が第二射目を弓につがえる準備をしていた、その時、彼らが急な制動をかける。地面に空いた穴にようやく気づいたのだろう。
しかし、馬は急に止まれない。猛スピードで爆走していたのだから尚更である。
結局、止まりきれずに何体もの馬が騎乗者もろとも穴に落ちていった。
かろうじて寸前で止まった者も後ろから押されて敢えなく穴に落ちていく。
地上に踏みとどまったのは、およそ10騎程度であった。
「貴様ッ……やってくれたなッ!」
憎々し気にレヴィンを睨む男。
「知るかよ。そっちが勝手に落ちたんだろ?」
「なんだと……」
男の声に怒気が含まれているのがレヴィンにはよく解った。
「で? お前らは神殿の手の者で間違いないな?」
「てめぇらッ! 全員殺るぞッ!」
レヴィンの言葉を無視してモヒカンの男が残った者に号令をかける。
(チッおしゃべりしてる暇はないかよッ!)
「茨縛鎖」
敵の付与術士が束縛の魔法を発動する。
地面から伸びる茨がレヴィン達に迫る。
しかし、三人ともに素早く身をかわすと既に抜き放っている剣で茨を薙ぎ払う。
その隙に何人かが横手の土壁の方から回り込むのが見える。
「火炎球」
「火炎障壁」
相手の火炎球に炎の障壁を繰り出し無力するレヴィン。
そしてバーバラが未だ残る炎の障壁を避けて魔法陣を展開した。
「水弾丸」
小さな水のつぶてが敵の体に風穴を開ける。
悲鳴が各所から聞こえてくる。
(とどめッ!)
「亜極雷陣」
広範囲雷撃魔法に穴の前にいた全員が戦闘不能に陥った。
後は、回り込もうとしているヤツらだけだが土壁に阻まれてレヴィン達に近寄れない。障壁がどうにもできないので、「出てこい!」だの「ぶっ殺すぞ!」だの物騒な言葉を投げかけている。
そんな彼らにレヴィンは再び、亜極雷陣の魔法を使用する。
辺りを電撃が荒れ狂い、土壁の向こう側は静かになった。
レヴィンは土の障壁を解除すると、五人ほど痺れて動けなくなっていた。
誰がリーダーか解らなかったので、落とし穴を覗き込んでみる。
案の定、意識があり、何とか壁をよじ登ろうとしていた男が三人ほどいる。
「おい、全員片付いたぞ。お前らのリーダーはどいつだ?」
その問いに、穴から這い出ようとしていた男の内の一人が代表して答える。
「阿呆かてめぇはッ! 言う訳ねぇだろッ!」
他の二人は最早、放送コードに引っかかりそうな罵詈雑言を並べ立てている。
「阿呆が。お前らまとめて燃やすぞ」
「やってみろッ! この×××! ×××××!」
「殺していいかな? こいつら」
「そうですな。殺ってしまいましょう」
ウォルターがレヴィンの問いに間髪入れずに同意する。
彼も腹に据えかねていたようだ。
「ちょいちょいちょい!」
ここでバーバラが慌ててとめにはいる。
「無抵抗の者を殺すのもなんですし、ここは穏便に……捕えるくらいにしませんか?」
レヴィンはバーバラの方を向いて彼女の提案を吟味していたが、しばらく経った後、合点がいったとばかりに手をポンと叩く。
「なるほど。流石はバーバラさん。あの三人を突き出して死すらヌルい拷問を味わわせてやろうと言う魂胆ですね?」
「むぅ……それなら仕方がありませんな」
ウォルターもその妙案に唸っている。
「違いますッ!」
彼女は否定しているが、おそらく照れているだけだろうとレヴィンは思いつつ、電撃で麻痺させると、口悪く罵っていた三人をふん縛って荷馬車にぶち込んでおく。そして、地面に倒れているヤツらをまとめて穴に落としておいた。
穴は埋められないが、土壁は消せるので消しておく。
「さーて、出発しますか!」
レヴィン達は各々、馬車に乗り込むとマッカーシー領へと急いだのであった。
レヴィンは、床におでこをぶつけて目を覚ました。
どうやら舟をこいでいたようだ。
「ん。俺はどれくらい寝ていた?」
「おそらく2時間程度かと」
「そろそろ他の追手がくるかも知れんね」
「話してるとこ、すまねぇが漏れそうなんだ。少し休憩を入れてもらえねぇか?」
「そっか、皆も馬車に乗りっぱなしじゃ疲れるだろうし休憩とるか」
レヴィンはそう言うと御者に近づいて、前を行く馬車を追い越して止まるように指示を出す。馬車はその指示の通り、前の馬車を抜き去ると、ゆっくりと速度を落とし始めた。やがて、完全に馬車が止まるとレヴィンは、荷台から飛び降りて大きく伸びをした。
「ウォルター、その人達の監視お願いね」
レヴィンが後方の馬車に近づくと、フレンダ達も馬車から降りてきて凝り固まった筋肉を伸ばそうと軽く体操のような動きをしている。
「お疲れ様です。少し休憩にしましょう」
「あ、ナミディア卿。追手はかからなかったようですね!」
無邪気な感じでオレリアがレヴィンに話しかけて来る。
「あ、追手は来ましたよ。だいたい30人くらいいたんじゃないでしょうか」
「え、そうなのですか!? 全然気づきませんでした」
「魔法で撃退したので……でも殺した訳ではありませんから、また来るかも知れません」
最初の追手はマイセンの私設騎士団であった。
あの程度で諦めるマイセンではないだろうとレヴィンは考えている。
次に来るのはマイセンか、はたまた神殿か、どっちにしろ手加減はできない。
フレンダ達を危険にさらす訳にはいかないのだ。
殺すのをためらっていては、こちらが殺されるのである。
レヴィンはとっくに人を殺す覚悟をし終わっていた。
荷馬車が先頭に来てしまったので、後続の馬車に追い抜かせて再び殿を務めるべく最後尾に配置する。
荷馬車に腰かけて、しばらく休憩していると遠くから砂埃を巻き上げて何かが接近してきているのが見えた。
「追手か……」
フレンダ達だけを出発させても追手はそちらへ向かうだろう。
適度な距離感を保っていつでも逃げられるようにしつつ、援護もできるように備えておく事にする。
十中八九、追手だろうが、何かの任務で街道を爆走しているだけかも知れない。
いきなり魔法をぶちかますのは、よくないだろう。
しかし、あの騎馬隊にそのままの勢いで突撃されたらひとたまりもないなと思い、レヴィンは一計を案じる。
「大地陥穽」
魔法を発動させると、レヴィンの手前に大きな穴がぽっかりと姿を現した。
街道にこんな穴を開けるなんて迷惑極まりないが、緊急避難と言う事で許してもらいたいところだ。
「大地障璧」
あとは虚空から現れたこの土の障壁で横手をカバーする。
砂埃は最早、騎馬の集団であると視認する事ができるくらいに近づいてきている。準備をしている間にも、どんどん接近しているのだが一向に速度が落ちない。
(まさか落とし穴に突っ込む気か?)
爆走する騎上からの目線では穴に気づかないのかも知れない。
その間にもレヴィンは、指示を出しつつ魔法をかける。
フレンダとオレリアには馬車の中に入っていてもらい、弓避けに風の結界をウォルターとバーバラにもかける。
後は待ち構えるだけだと、覚悟を決めて前方を睨みつけるレヴィン。
「自動弓でこちらを狙っているようですな」
ウォルターがそう言うので、レヴィンは、念のため回避行動をとるように指示を出す。威力の強い弓だった場合、風の結界が貫かれる場合もあるからだ。
すると、ヒュンと風切り音がして何本もの矢が飛来する。
しかし、馬上からの射撃故か、はたまたこちらが三人だけだったからなのかは解らないが矢がレヴィン達に当たる事はなかった。
馬上の敵が第二射目を弓につがえる準備をしていた、その時、彼らが急な制動をかける。地面に空いた穴にようやく気づいたのだろう。
しかし、馬は急に止まれない。猛スピードで爆走していたのだから尚更である。
結局、止まりきれずに何体もの馬が騎乗者もろとも穴に落ちていった。
かろうじて寸前で止まった者も後ろから押されて敢えなく穴に落ちていく。
地上に踏みとどまったのは、およそ10騎程度であった。
「貴様ッ……やってくれたなッ!」
憎々し気にレヴィンを睨む男。
「知るかよ。そっちが勝手に落ちたんだろ?」
「なんだと……」
男の声に怒気が含まれているのがレヴィンにはよく解った。
「で? お前らは神殿の手の者で間違いないな?」
「てめぇらッ! 全員殺るぞッ!」
レヴィンの言葉を無視してモヒカンの男が残った者に号令をかける。
(チッおしゃべりしてる暇はないかよッ!)
「茨縛鎖」
敵の付与術士が束縛の魔法を発動する。
地面から伸びる茨がレヴィン達に迫る。
しかし、三人ともに素早く身をかわすと既に抜き放っている剣で茨を薙ぎ払う。
その隙に何人かが横手の土壁の方から回り込むのが見える。
「火炎球」
「火炎障壁」
相手の火炎球に炎の障壁を繰り出し無力するレヴィン。
そしてバーバラが未だ残る炎の障壁を避けて魔法陣を展開した。
「水弾丸」
小さな水のつぶてが敵の体に風穴を開ける。
悲鳴が各所から聞こえてくる。
(とどめッ!)
「亜極雷陣」
広範囲雷撃魔法に穴の前にいた全員が戦闘不能に陥った。
後は、回り込もうとしているヤツらだけだが土壁に阻まれてレヴィン達に近寄れない。障壁がどうにもできないので、「出てこい!」だの「ぶっ殺すぞ!」だの物騒な言葉を投げかけている。
そんな彼らにレヴィンは再び、亜極雷陣の魔法を使用する。
辺りを電撃が荒れ狂い、土壁の向こう側は静かになった。
レヴィンは土の障壁を解除すると、五人ほど痺れて動けなくなっていた。
誰がリーダーか解らなかったので、落とし穴を覗き込んでみる。
案の定、意識があり、何とか壁をよじ登ろうとしていた男が三人ほどいる。
「おい、全員片付いたぞ。お前らのリーダーはどいつだ?」
その問いに、穴から這い出ようとしていた男の内の一人が代表して答える。
「阿呆かてめぇはッ! 言う訳ねぇだろッ!」
他の二人は最早、放送コードに引っかかりそうな罵詈雑言を並べ立てている。
「阿呆が。お前らまとめて燃やすぞ」
「やってみろッ! この×××! ×××××!」
「殺していいかな? こいつら」
「そうですな。殺ってしまいましょう」
ウォルターがレヴィンの問いに間髪入れずに同意する。
彼も腹に据えかねていたようだ。
「ちょいちょいちょい!」
ここでバーバラが慌ててとめにはいる。
「無抵抗の者を殺すのもなんですし、ここは穏便に……捕えるくらいにしませんか?」
レヴィンはバーバラの方を向いて彼女の提案を吟味していたが、しばらく経った後、合点がいったとばかりに手をポンと叩く。
「なるほど。流石はバーバラさん。あの三人を突き出して死すらヌルい拷問を味わわせてやろうと言う魂胆ですね?」
「むぅ……それなら仕方がありませんな」
ウォルターもその妙案に唸っている。
「違いますッ!」
彼女は否定しているが、おそらく照れているだけだろうとレヴィンは思いつつ、電撃で麻痺させると、口悪く罵っていた三人をふん縛って荷馬車にぶち込んでおく。そして、地面に倒れているヤツらをまとめて穴に落としておいた。
穴は埋められないが、土壁は消せるので消しておく。
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