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11話 13歳のもふもふ神 sideユキ
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ちょっとした口論から、黒大生神と大喧嘩に発展した千年ちょっと前。
当時調子に乗っていた我、白大生神は、泥濘に足を取られ黒の技をまともに食らってしまったのだ。
あの時は死んだと思っていたが、さすがは我も神の端くれ。気絶するくらいですんだらしい。
まあ、起きたら千年経っていたわけだが。
我自身の神力は人間に大きな影響を与えるけども、我の治癒には使えなかった。
これも黒のおかしな技のせいだ。
我とは異なる力を取り込まねば衰弱するなどと、戯けた術などかけおって、ぐぬぬ。
その上それを解いてもないとは。
それ程までに、我のこと嫌いであったのだろうか。
我は黒のこと憎からず思っておった故、それはちと、衝撃だった。
まあ、目覚めた時、地中深くにいたことを思えば死にかけの小さな我を見つけられなかったのやもしれんがな、うん。
しかし、せっかく目覚めてもこのままでは衰弱する一方ではないか。
黒を見つけて解除させねば。
解除してくれる程度には嫌われておらぬと良いなあ。
そのせいか眷属である人間は脆弱になっていたし、魔力の使い方も下手くそになっていた。
それに待てども待てども酒も肴も寄越さないとは。
神に奉納を忘れるとは何事か!
と憤ってみたものの。
千年の間、彼らを助けたりもしてやらなかったわけで、信仰も薄れるわな、と思い直した。
このままでは元の我には到底戻れまい。
衰弱しきればまた眠りにつくのか、それとも消滅するのであろうか。
石ころサイズのコロコロした身体で満足な神力も無いし、仕方ないかとふわふわと浮かんでいたら、見つけてしまったのだ。
魔力満々の美味しそうな人間を。
しかも、なんだか懐かしい風体の男だった。
あれほどの魔力を有しておりながら、使うこともしないとか、何という宝の持ち腐れ。
しょうがないのお。
我がその魔力をちゃんと使ってやらねばな。
我はその人間の頭を覗き込み、希望に添えるような形で我の望むモノを奉納させようと魂に干渉したのだ。きちんと褒美も用意したのだから、存分に働いてもらわねば困る。
何しろ自分の神力は自分のためには使えぬのだから、どうせならあの人間に使ってやろうとだな……なんという名案!!
我、頭いいのお。
しかし、この人間。実に面白い人間だった。
この世界とは違う価値観で動くこの人間を、もっと観察したいと思わせるほどに。
人間が寄越す酒は実に美味で、歴代の者たちが奉納していた調理法にない変わった酒も作り出すし、いい拾い物だった。
何しろなぜか奉納の意味をきちんと理解しておるのか、美味いモノしか奉納しない。
この人間、いくつかできた失敗作を奉納したりしないのだ。
罰当たりにも失敗作などを奉納した時には懲らしめてやろうと思っていたが、それは杞憂であった。
人間のおかげでようやく外に出てもすぐ消滅などしない程度まで神力が戻ると、人間の魔力が溢れまくっている土地に飛び込んだ。
そして出会ったのだ、リースと。
リースは変わり者ではあるが、実にいい人間だった。
側におるだけで漏れ出る魔力を貰えるし、出される食事にも充分魔力が混ざっていてその上美味だ。
奉納酒も日に日に魔力が濃くなるし、そのおかげで我は我として生きていくことができた。
故にリースが死ぬまで、我はリースの傍らにてユキとして生きようと決意した。
なんだか懐かしい感じのするリースと、束の間の生を楽しめばよい。
リースが死んだ後は、我の消滅も止むをえまいな。
黒は我の顔も見たくないのであろう。
黒の口から直接、嫌いだと聞くのは怖い。
最近では、黒とはこのまま会わずに、ひっそりと消滅するのが1番良いような気がしている。
そんな風にひと月もすると我は大きくなった。
「ユキ、大きくなったなあ。これで成犬なのかな」
我は犬ではない。大生神という種の神であるぞ!
故に
『ふふふ馬鹿め。我の成体はリースを背に乗せて駆けられるほどまで大きくなるのだ』
思わず自慢げに威張った途端、獣態が解けて人化してしまっていた。
人化できるほど神力が戻っておったとは。
驚く、我と、リース。
もしや化け物などと思われ嫌われるかもしれん。
嫌われるのは、もう嫌だ。
変な焦りが我を襲った。
だがそんな我の心配は簡単に払拭されることとなった。
「ユキって獣人だったんだ。道理で頭がいいはずだよな」
獣人とはなんだ?
リースの前世とやらでは変身するのが普通であったのかもしれぬな。
この世界ではいろいろな形態を持つのは神に連なる者だけであるが。
それならそれでよかったというべきか。
リースは我が出会うべくして出会った人間であったのかもしれん。
懐かしき彼の者もそうであった気がする。
もう、あまり覚えてもいないが。
まあ何にせよ、リースの勘違いのおかげで、我はまだリースの近くにいてよくなったらしい。
しばらくすると、隣の住人という男がやってきた。
我はその時獣型であったのだが、リースに構われる我を睨みつけたりする。
この男、黒と同じ臭いがするぞ。
腹黒で意地悪な臭いだ。
なぜかリースはコヤツの本性に気づかぬようだが、神たる我にはわかる。
我が他人の力を分けてもらわねば弱ってしまうような術を、躊躇いもなくかけてくるあの意地悪黒助と同じくらい、卑怯で汚い魂の持ち主だとな!
そうやって考えると、なぜ我が黒を好いておったのか不思議な気がしてきたわ!
この男も嫌いだし、黒も嫌いだ!
もう知らん!
この少し危険察知能力の足りないリースを、この男から守ってやらねば。
当時調子に乗っていた我、白大生神は、泥濘に足を取られ黒の技をまともに食らってしまったのだ。
あの時は死んだと思っていたが、さすがは我も神の端くれ。気絶するくらいですんだらしい。
まあ、起きたら千年経っていたわけだが。
我自身の神力は人間に大きな影響を与えるけども、我の治癒には使えなかった。
これも黒のおかしな技のせいだ。
我とは異なる力を取り込まねば衰弱するなどと、戯けた術などかけおって、ぐぬぬ。
その上それを解いてもないとは。
それ程までに、我のこと嫌いであったのだろうか。
我は黒のこと憎からず思っておった故、それはちと、衝撃だった。
まあ、目覚めた時、地中深くにいたことを思えば死にかけの小さな我を見つけられなかったのやもしれんがな、うん。
しかし、せっかく目覚めてもこのままでは衰弱する一方ではないか。
黒を見つけて解除させねば。
解除してくれる程度には嫌われておらぬと良いなあ。
そのせいか眷属である人間は脆弱になっていたし、魔力の使い方も下手くそになっていた。
それに待てども待てども酒も肴も寄越さないとは。
神に奉納を忘れるとは何事か!
と憤ってみたものの。
千年の間、彼らを助けたりもしてやらなかったわけで、信仰も薄れるわな、と思い直した。
このままでは元の我には到底戻れまい。
衰弱しきればまた眠りにつくのか、それとも消滅するのであろうか。
石ころサイズのコロコロした身体で満足な神力も無いし、仕方ないかとふわふわと浮かんでいたら、見つけてしまったのだ。
魔力満々の美味しそうな人間を。
しかも、なんだか懐かしい風体の男だった。
あれほどの魔力を有しておりながら、使うこともしないとか、何という宝の持ち腐れ。
しょうがないのお。
我がその魔力をちゃんと使ってやらねばな。
我はその人間の頭を覗き込み、希望に添えるような形で我の望むモノを奉納させようと魂に干渉したのだ。きちんと褒美も用意したのだから、存分に働いてもらわねば困る。
何しろ自分の神力は自分のためには使えぬのだから、どうせならあの人間に使ってやろうとだな……なんという名案!!
我、頭いいのお。
しかし、この人間。実に面白い人間だった。
この世界とは違う価値観で動くこの人間を、もっと観察したいと思わせるほどに。
人間が寄越す酒は実に美味で、歴代の者たちが奉納していた調理法にない変わった酒も作り出すし、いい拾い物だった。
何しろなぜか奉納の意味をきちんと理解しておるのか、美味いモノしか奉納しない。
この人間、いくつかできた失敗作を奉納したりしないのだ。
罰当たりにも失敗作などを奉納した時には懲らしめてやろうと思っていたが、それは杞憂であった。
人間のおかげでようやく外に出てもすぐ消滅などしない程度まで神力が戻ると、人間の魔力が溢れまくっている土地に飛び込んだ。
そして出会ったのだ、リースと。
リースは変わり者ではあるが、実にいい人間だった。
側におるだけで漏れ出る魔力を貰えるし、出される食事にも充分魔力が混ざっていてその上美味だ。
奉納酒も日に日に魔力が濃くなるし、そのおかげで我は我として生きていくことができた。
故にリースが死ぬまで、我はリースの傍らにてユキとして生きようと決意した。
なんだか懐かしい感じのするリースと、束の間の生を楽しめばよい。
リースが死んだ後は、我の消滅も止むをえまいな。
黒は我の顔も見たくないのであろう。
黒の口から直接、嫌いだと聞くのは怖い。
最近では、黒とはこのまま会わずに、ひっそりと消滅するのが1番良いような気がしている。
そんな風にひと月もすると我は大きくなった。
「ユキ、大きくなったなあ。これで成犬なのかな」
我は犬ではない。大生神という種の神であるぞ!
故に
『ふふふ馬鹿め。我の成体はリースを背に乗せて駆けられるほどまで大きくなるのだ』
思わず自慢げに威張った途端、獣態が解けて人化してしまっていた。
人化できるほど神力が戻っておったとは。
驚く、我と、リース。
もしや化け物などと思われ嫌われるかもしれん。
嫌われるのは、もう嫌だ。
変な焦りが我を襲った。
だがそんな我の心配は簡単に払拭されることとなった。
「ユキって獣人だったんだ。道理で頭がいいはずだよな」
獣人とはなんだ?
リースの前世とやらでは変身するのが普通であったのかもしれぬな。
この世界ではいろいろな形態を持つのは神に連なる者だけであるが。
それならそれでよかったというべきか。
リースは我が出会うべくして出会った人間であったのかもしれん。
懐かしき彼の者もそうであった気がする。
もう、あまり覚えてもいないが。
まあ何にせよ、リースの勘違いのおかげで、我はまだリースの近くにいてよくなったらしい。
しばらくすると、隣の住人という男がやってきた。
我はその時獣型であったのだが、リースに構われる我を睨みつけたりする。
この男、黒と同じ臭いがするぞ。
腹黒で意地悪な臭いだ。
なぜかリースはコヤツの本性に気づかぬようだが、神たる我にはわかる。
我が他人の力を分けてもらわねば弱ってしまうような術を、躊躇いもなくかけてくるあの意地悪黒助と同じくらい、卑怯で汚い魂の持ち主だとな!
そうやって考えると、なぜ我が黒を好いておったのか不思議な気がしてきたわ!
この男も嫌いだし、黒も嫌いだ!
もう知らん!
この少し危険察知能力の足りないリースを、この男から守ってやらねば。
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