9 / 28
1話 刀片帰還編
9.反撃開始
しおりを挟む『明日になれば見つかるよ、今日は帰ろう』
彼女が時計柱に寄っ掛かりながら、退屈そうに言った
『待ってくれ、もう少しで見つかりそうなんだよお、あと少しでいいから』
東は砂場を素手で掘りすすめる。
それを見た彼女は呆れた顔で東とその砂場に遠くから手をかざすかのようにして
一言つぶやいた
『屠れ』
かまいたちと表現するべきだろうか、
風神と表現するべきか。
砂場を超え、はるか遠くにある滑り台が
重苦しい金属音を上げながら切り刻まれ四方八方にその破片が飛散していく。
突然の崩壊。
その後。砂場とその周辺の地面から砂煙が一メートル程直線上に巻き上がったかと思うと割れた。
ゴゴゴゴゴ…と聞きなれない地鳴りのようでそうでないような不気味な音が此処、
トバリ公園に響き渡る。
風だ。
強靭な風で作られた無数の鎌や斧や短刀が
縦横無尽に彼女の命じた場所を屠ったのだ。
どんな仕組みなのかは知らないが
彼女は東に言った
『 2年前ある男から引き抜いた刀が私の中に入った』と。
その後、東も怪しげな刀を抜いてしまう。
しかし、この刀を抜いたことによる異能なる力は刀だけが原因ではない。
彼女と東はある事件が発端で呼び寄せてしまうようになったのだ。
刃を。
砂煙が舞い、ひどく荒れた地面と遊具たちが
キイキイと音を立てながら彼女の前に現れた。
『なんだよ。あるじゃんか』
平然とした顔でその斬撃から無地生還した東。
その姿を見てほくそ笑む彼女。
『やっぱりあんた強いねえ、私のアレ食らっても無傷とか、あんたの刀?絶対盾でしょ?いや壁?なによその桁違いな防御』
東は軽口を叩く彼女を前にして顎に手を当てて少し考えた
『いや、たしかにお前の風を切ったんだけど、なんつーか、俺の体の中から出てきた刀が、俺を包むかのようにしてお前の風をなぎ倒したっていう表現の方がしっくり来るんだよなあ…』
『は?』
『いや、俺の方が、は?なんだけどさ、、』
あたりが段々暗くなっていく、
東は目を開けているのに、
目を閉じている化のような感覚に陥った
そして段々、暗さになれたその目は
今見るべきものを投映し始めた。
『思い出した。そういえばあの時から徐々におれはこの刀を鎧として使っていたんだった』
血みどろな階段で見えないはずの障壁を体に纏った東の体には重厚かつ生命体のような異形なるもので構築、生成された鎧のようなものが全身を覆っていた。
『知っている。噂には聞いていたし、この目でその姿を見たことだってある。
まあこの私の姿で見るのは初めてに等しいがな』
海堂がゆっくりと階段を降りながら東に接近する。
しかしその足取りは先程とは異なりなにやら、慎重にさえ思える
東は左と右の手を交差して両肩にその手を添えた。
そして歯を食いしばった。
『さあて、こっから鬼退治して昔の武勇伝を復活させようかなぁぁぁあ!』
2つの禍々しい刀が東の両肩から引き抜かれた。
体から刀を抜いたのだ。
しかし東の顔に痛みのようなものはなく、
どちらかというとようやく取り出せてスッキリしているとでもいいそうな爽快な表情をしていた。
まるでマラソンランナーがゴールして
満身創痍のまま仲間に抱き抱えられて水を飲み自分の戦いは終わったのだと満足そうに笑っている時の表情そのものにさえ思えてしまうほどの爽快さを放っていた
『空巻の仇、討たせてもらうぜおっさん』
東は双刀を構えて鋭い眼光で階段を降り終えた海堂へ今突撃する。
0
あなたにおすすめの小説
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
夫から「用済み」と言われ追い出されましたけれども
神々廻
恋愛
2人でいつも通り朝食をとっていたら、「お前はもう用済みだ。門の前に最低限の荷物をまとめさせた。朝食をとったら出ていけ」
と言われてしまいました。夫とは恋愛結婚だと思っていたのですが違ったようです。
大人しく出ていきますが、後悔しないで下さいね。
文字数が少ないのでサクッと読めます。お気に入り登録、コメントください!
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる