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2話 憎恋刀身編
3.パラダイス・ロスト
しおりを挟むチャイムの音で目を覚ました。
それが午前の授業が終わり昼休憩を知らせるチャイムだと東武仁は知らない。
そして午後の部、最初の授業が体育であることも勿論しらない。
知るよしもなかった。
時間割表も驚くほど東武仁は時間割を見ない。時計しか見ていないのだ。
それほどまでに授業内容はどうでもいいのだ。東武仁が眠っていても問題はない。
最小限の問題は無意識にクリアされる。
危機的状況に陥れば体が反応する仕組みだ。
しかし、それは基本的な場合である。
不意に不意を足したようなものには機能しない。これは特殊能力ではないからだ。
これは東武仁本人の潜在能力でしかない。
つまり通常よりは高性能の動作が可能だが、
東史上…の中での高性能というわけだ。
ドス。
首の後ろに大型トラックが衝突したのかと思った。
東は声にもならない声で真っ二つに割れる机と共に床に寝そべった。
否、寝そべっただなんて軽い衝撃ではない
それは渾身の空手チョップだ。
人知を超えうる力を持つ怪力によって生み出されたその一撃に唾を吐き出して必死に新しい空気を欲し口をパクパク開く東。
目が覚めた。
夢うつつだった意識がしっかりと覚醒した
メリットとはそれのみだ。
痛みが襲ってきてそのほかは全てデメリット…のはずだった。
『い、、てえけど眼福…』
目の前には駆け寄る一人女子がいた。
谷間だ。
中学三年女子の谷間が目に入った。
それもクラスで三番目くらいに顔が良いと
柴谷が言っていた雷電火(イカズチ・デンカ)が目の前にいた。その距離およそ30センチメートル。
下着姿の雷がどういうわけか東の前にいた。
『え、、ごちそうさまです』
とっさの一言。東自身言った後に後悔した
つい本音が出たと。
しかしよくわからない攻撃のあと目を覚まし慣れない光景、いや絶景に目が眩めば言葉もうまく出てこないのは納得だ。
なにかがおかしい。雷とは中学三年に上がり同じクラスになって4日が立つが一度も喋ったことがない。というより今がファーストコンタクトだ。ファーストコンタクトが彼女の耽美な双丘なのは『ありがてえな』と言わざるおえないのが男子の性だが。
それでも東には思い当たる節がなかった。
なぜ彼女が目の前にいるのか、なぜ下着姿なのか。しかし理由は明白。
昼休憩中に次の体育に備えジャージに着替えなくてはならないからである。
まあ時間割も糞もない、なにも見てないなにも認識してないヒガシにはわかるはずがないのではあるが…、
だんだんわかってきた。今日初めて知った。
雷の一言でそれは判明した
『次体育だから着替えてたら東くん寝てて、あまりの自然さにみんな着替え始めて気づいたら机と一体化してたから驚いたの…そしたら紫香楽が…』
察した。東武仁はその痛みの正体に気づいた。
後ろから現実逃避を求めたくなる程の強烈な殺気を感じた。
首の痛みがその殺気と同調して痛み始める。
『てめえ、計りやがったな変態道化師』
その声は聞き覚えがあるが少し知らない気もした。
紫香楽 宵音だ。怒声のためいつもより地を這うような声にしあがっているが間違いなく彼女の声だ。
東は目視したくなかった。
たとえ彼女が着替え中で下着姿であっても今日だけは見ない代わりにここから脱出したかった。
それもそのはず、次の攻撃が整列して発射準備完了の合図を送っている事実が殺意に乗ってきてるからだ。
東にはわかった。彼女の中の刀が東の中にも入っているから通じ合うものがあるのだ。
だか今は嬉しくない通じ合いだ。
喜ばしくない同調だ。
とっさに踝に力を込めた。
東は紫香楽宵音の怒りの理由がわかった。
過去に犯した過ちのせいだ。
その過ちと被ったのだろう。
今この現状が。
『ちっちがうんだ覗きとかあわよくば眺めてようとかそんな願望はないっ、本当だ。
もうお前にフルボッコにされたくないからな』
とっさの言い訳に意味がないとは知っていた。クラスの女子の目線が痛いくらい刺さるのを感じたが誰も男が着替えてる最中紛れ込んでることを知って悲鳴をあげない。
それはこれから制裁が下るのを悟っているようだ。
『歯をくいしばってそのつまらねえイチモツを献上しろ早く』
紫香楽 宵音の怒声が教室のタイルを割るかのように響く。
東は全集中力を足に込め、踝にエンジンなるものを搭載するよう体の中にある特殊な刀に命じた。
給食の残り物早い者勝ち選手権で揚げパンを奪取するよりも早くこの教室が逃走することに全力注ぐと、肝に銘じ、
大地を蹴った。
タイル粉砕ッッ。
地を蹴る東の上履きからスモークと若干の火花が湧き上がり風圧で周りの机を軽く吹っ飛ばした。雷はその風で外してる途中の下着が外れそうになり必死に手で抑えた。
紫香楽宵音はその光景にまた憤怒し、
大地を蹴り上げ拳に熱を込めた。
『逃すか変態道化師ィイイイイイイイイ』
東は机を蹴りながら教室の扉向かって爆走。
その後をジャージに着替えながら紫香楽 宵音がスポーツカーのごとく上履きからを吹き上げながら追尾する。
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