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2話 憎恋刀身編
6. I feel myself go under
しおりを挟むカレーのルーをそっとライスへ注いでスプーンで迎える予定だったからだ。
それを、謎の音のせいで止めてしまったのだ。リズムよく食べていたのにその音によって邪魔されたと男、枯曇野亜瑠汰は怒りで小刻みに震えはじめた。決して怒りやすい性格というわけではない。しかし食事の時間を邪魔されるのだけは許せなかった。
それだけなのだ。たったそれだけ、その怒りによってスプーンはいとも簡単にひしゃげた。ひしゃげたスプーンは次に真っ赤に光り、黒く染まりながら煙を上げて消えた。
『何者だ?』
個室の中で枯曇野亜瑠汰は自問自答をした。
今の音は明らかに人がドアを開けたか閉めた音…だった。
確信があった。
この旧校舎には枯曇野亜瑠汰の結界が張ってあるからだ。
人が入った瞬間瞬時にセンサーたるものが反応して枯曇野亜瑠汰の脳内に通知が来る。
しかし異変なのだ。救急事態だった。
センサーは音がしてから来たからだ、
しかも音のした場所は気配からして100メートルにも満たない旧校舎の三階に位置するトイレ。そこから100メートル先は非常扉。
それもしまって鍵までかかっておりたとえ鍵を持って来てとしても開けることはできない。そういう結界なのだ。それほどにまで外部からの侵入は不可能な結界を通過した者がいる。それも
3階まで枯曇野のセンサーにさえ感知されることなく、接近したのだ。
むしろ100メートル先ではない。
もうトイレのドアの向こう側に侵入者はいる。ここまでの考察から導き出せるのはただ者ではないという一点。
結果的に導き出される答えは枯曇野亜瑠汰と同等の結界を使うものかそれ以上、結界無効や問答無用でありとあらゆる場所を通過する異能の者であることは確実だった。
枯曇野亜瑠汰はカレーの入った道中の弁当箱を後ろと物置スペースへ置いた。
そして個室の扉を開けた。
結界の糸を瞬時に張り巡らせ迎撃準備をし、個室から勢いよく飛び出た。
しかし、ソレは枯曇野の動きさえを無効にした。
『なっ…』
目の前には弁当。
カレーライスの弁当と便器があった。
便器の蓋はしまっておりその上にカレーライス弁当が置かれていた。
気づけば今さっき出たはずの個室の中だった。
『まてよ俺は出たはず…』
一瞬の出来事だ。異変も糞もない。
それは当たり前のように平然の行われた犯行だった。
枯曇野亜瑠汰はトイレの個室の扉を背に立っている状況なのだが枯曇野亜瑠汰の視界には腹部から黒い長いものが映っていた。
鉄のような長い棒だ。
それは紛れもなく貫いていた。
トイレの個室の扉を
枯曇野亜瑠汰の腰から腹へかけて
貫いていた。
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