”その破片は君を貫いて僕に突き刺さった”

飲杉田楽

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1話 刀片帰還編

7.不撓不屈の精神なんかではない。

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目に見えないはずの障壁を具現化することは容易ではない。というより容易などという言葉が吐き出せる状況など存在しない。
勝手に俺の体を危険から守ろうとする見えない壁は元々俺の命令に従う気はない。

俺が障壁が無くてもいいと考え込んだり叫んだりしてもそれに答えてはくれない
そこで思ったのはこの、力の持ち主が俺であって俺ではない説。
俺の中に誰かがいて、利害が一致することによってこの壁が展開されるのではないか、、、、

いつの間にか使えるようになったこの能力。 だんだん時が経過していくごとに体に馴染んでいきようやく、俺の命令を聞くようになった。
ただしそれはたった一つだけだ。
その一言しか聞いちゃあくれない
面倒なことはすべてスルーする。
都合のいいやつだ。まったく役に立たない。  とは言えないけれど
もう少し融通が聞くようになってくれた方が楽に暮らせるはずだと思う。








『戦え』。








その命令には従う。
その壁にとって、それが命令と思っているのかはわからない。願いやつぶやきだとしか思っていないのかもしれない。 むしろたまたま気分がいいからその命令に従ってくれたのかもしれない。


『戦え』


俺はその言葉を口にした。

隣町の彼奴に会いたくて学校なんて家族なんて知り合いなんて、どうでもよくて、よくなって
俺は、単純に会いたくて、心細くてその醜い奴を力を呼び出した。







その時だった。
俺の耳元で生暖かい声が流れた
それは確かにこう言った








『むりだ。にげろ』と。


空巻ニバナがいきなり体勢を崩した。
何事かと凝視する
するとこちらになにかが飛んでくる
障壁が展開されるのがわかった
感覚で壁が出現するのは解るわけなのだが、妙に分厚い壁が形成されていく感覚があった。

戦え の命令を無視して 守れ を遂行し始めているようだ、
何をやっているんだ 本当に使い物にならない能力だ。

と思っていた

が 俺はその言葉を取り消した。

衝撃が2度3度繰り返しやってきた
もちろん障壁によって俺は無傷。

しかし、よく見ると飛んできたものは空巻ニバナの頭だった。

ふと空巻ニバナをみる。
しかしそこにいたのは彼女では無く、熊のようにでかい男一人。
その下には彼女のスカートやパンツと思われるものと生肉のようなものと、黒々しい沼が形成されていた。


『海堂だ。   ニバナが世話になったな。 退屈していたんだろう?
刀使い。』


男が喋り、ようやく理解した。
ニバナは男によってなぜか瞬殺されて、そのニバナを殺した男こそ、先ほどからニバナがぼそぼそ話に挟んでいた海堂という男らしい。 そして、海堂という男は俺の力を知っていて、海堂自身も何か力を持っているらしい。

面白くなってきた。
能力使い同士の真っ向勝負。
アニメや漫画で憧れた局面。
けれど 奴は今、”刀使い ”といった
ニバナが持っていた刀は煙と化していく。

どうやら この特殊な能力と刀はなんらかの因果関係でつながっているらしい。
そして、俺も刀を持っているらしい。


もしかすると俺の中にいる誰かが刀をもっているのかもしれない
とりあえず質問をしたかったが
今もなお ニバナのものと思われる体の一部を弾丸のようにして
サイコキネシスか何かで浮かしてはこっちへぶっ飛ばしてくる能力を使っている海堂という男が俺の質問にすんなり答えてくれるはずがなかったし、
壁自体が厚くなっていなかったら今頃俺は死んでいたことだろう。

だから
俺はおとなしくこの場から逃げることを決意した。
たまには逃走という手段も悪くはない。

おれは階段の方へ障壁を展開しながらダッシュした…
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