缶蹴りしに異世界転送されました

飲杉田楽

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1話 昆布と11月の縞模様

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巨大乾燥昆布を片手に持ちながら
高校まで通っている男子高校生を見る人々の目は 興味に溺れている目だった。
まず 1メートルはあろうその昆布はどこでうっているのだろうか
そして なぜこの男はそれを片手に持つだけで食べていないのか
なにより
どーして 何かに入れるわけでも
しまうわけでも 包むわけでもなく
直に素手で持っているのか。
まるで野球バットを持つかのごとく堂々としたその姿は
乾燥昆布をもって学校へ登校することこそが男子高校生としてあるべき姿なのだと
気づかせるためなのではないかと思ってしまうほどであった。


檻抗而 開。
カンコウジ・アケル
それが その男の名前。

スニーカーの靴ひもを毎日変えて登校するのが癖だったが
それが原因で遅刻しているという事実に やっと気づき 
最近は靴ひもを変えたい欲求を
抑えている。
11月ということもあって町は冷え込んでいるものの
開にとっては なんの変哲もない
平日の朝でしかなく
多少の寒さは気にならなかった。

なによりも
開にとって  平日とは退屈な
1日でしかない。
そんな退屈な1日に対して
感情を持つこと自体が無駄だとすら思っていた。

太陽の光がビルの壁を通り越して
歩行者通路の真ん中を陣取るようにして 歩行する
酒臭い中年男性の剥げかけた頭に
反射し その光によって
開は ようやく 寝ぼけた目を開けた。

元々目つきがあまりよろしくない
開にとって 寝ぼけ眼は危険だ。
しっかりと目を開けていてもなお
不良から イチャモンをつけられる彼にとって 普通する以外の選択肢は存在しない。
寝ぼけ眼で 学校へ到着したものならその瞬間から 不良にどつき回されることだろう。

そんなことを知ってか知らずか
剥げかけた頭から放出された眩い光を浴びて目をこする開。

いつ間にか周りには 高校生達が
蔓延っていた。
残り五分で 予鈴がなる。
授業開始五分前の合図でもある
予鈴がなるということは遅刻する確率が上がるということだ。
生徒達は急ぎ足で校門を
目指していく。
さすがに進路をそろそろ決めなくてはならない
開にとっても
遅刻はこれ以上したくないものだ

まだ寝ぼけている関節達を
ほぐしながら 開は
走りだす。

寂しそうに俯く木々を超えて校門を見つけた開は
靴をアスファルトに叩きつけながら11月の吐息を浴びた
暖かい紅茶が飲みたくなるくらい
寒さは厳しいが
開は寒い などと口にはしない
季節ごときに屈してたまるかという謎のプライドがあるからだ。

開の前には無数の生徒達の頭があった。
髪が白い。
どうやら霜が降ってきているようだ

そんなに寒かったのかと改めて実感し 片手に乾燥昆布を強く握りしめ 口から出る白い息を
顔に浴びながら 
開は校門を通過した。


『あぶない!避けて』
『え?』
左の方から何かが来る

開は身を翻そうとするが
その声に反応するまでが
遅かった。

その声はとても芯のある女の声だった。
聞いていて初めて心地いいと思った。
開は その声に反応してはみたが
思った以上に自分の可動領域は狭く 目の前にはすでに

何かが迫ってきていた。

『水色と白の  縞模様!?』


ドガッという重く強い音が校庭に鳴り響き。
開は地面に倒れこむ。

開が最後に見たのは
冬にしては涼し過ぎる模様の
パンツだった。
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