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人工物の森
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1号「資材調達の依頼ですが、新たに18件ほど入っています。今日も宜しくお願いしますね。」
2号「りょーかい!」
とある街の近くには、人工物の森と呼ばれる森があった。
その森には昔の街の名残りか、コンクリートみたいな物や鉄筋のような物が沢山落ちていた。
また、点々とある人工物らしき物はどれも妙なことに、劣化している物は殆ど無かった。
更に食材も多々あり、生活するに当たって必要なものは十分なほどあった。
そのため、とある街の住人達は、生活するために必要な物資を全てその森で収集していた。
しかし、その森には1つ問題点があった。
それは、一度でも森に入ってしまった街の住人は誰一人として帰って来ない、というものだった。
そのため、必要物資は全て探索隊に依頼するよう義務付けられていた。
その森は住人達の間では死の森と言う風に噂されていた。
今日も依頼を受けた探索隊はいつものように森へ入っていった。
数時間後──
探索隊が大慌てで帰還した。
何故か依頼の物資を何一つ持たずに。
一部の住人達が騒ぎを聞きつけて集まり、探索隊にこう聞いた。
「依頼の物資を持たずに帰還なんて初めてじゃないか、何があった?」
探索隊は皆、口を揃えてこう言った。
「化け物がいた」
その出来事の内容は瞬く間に街中へ広まった。
その話を聞いたとある好奇心旺盛な青年が、
「へ~、面白そうだね、俺ちょっと行ってくる!」
と言い、住人達や親達の制止も聞かずに方位磁針だけを持ち、さっさと行ってしまった。
その青年は元々探索隊や森に非常に興味を持っており、自ら森について研究しているほどで、こっそり探索隊に紛れ込んで森に入ろうとしたこともある問題児だった。
しかし、彼は頭が良かったため、住人達も親達も皆、
「将来有望な、いずれ森の謎を解いてくれる人物」
という風に認知していた。親も含めた一部の人々は、そのうち探索隊に入隊させようか、とさえ考えていた。
青年は暫く森の中を探索していた。
彼の心の内は、「化け物を見たい」という好奇心と、「森の研究材料を見つけたい」という探究心だけだった。
しかし依然として化け物の姿は見えない。
青年は
「化け物なんて居ないじゃん、探索隊の嘘つき……」と一人呟き、街へ引き返そうとした。
数分程歩いただろうか、突然目線の先、少し進んだあたりに何かが見える。謎の肌色の物が。青年は興味本位で近づいて行ったが謎の物体はすぐに上へ昇ってしまった。
「あ、行っちゃった…もう少し近くで見たかったけど、仕方ないか…」と青年は呟き、再び方位磁針の示す街の方角へと歩き始めた。
数歩進んだ時。
青年は突然身体が軽くなるのを感じた。下を見ると体が浮いていた。
青年はつままれていたのだ、先程見た肌色の物体に。抵抗しようと暴れるが、意味は無い。
青年はそのまま持ち上げられていった。
青年はもうどうしようも無いことを悟った
しかし彼は、
『まず冷静になろう、状況を把握するんだ…』
と、自分自身に言い聞かせ、彼は元々自分自身がいたであろう地面を見渡す。
すると、あることに気づいた。それは、
"今まで青年がいた場所全体は小さな箱の中にある"ということに。
後に元々彼がいた街が見えたが、街は周りが全て深い森で囲まれていた。
──まるで街の住人を逃がさないかのように。
青年は少し震えた声で、
「……、箱庭みたい……。」
と小さく一人呟いた。
『……この状況では、何も出来ない、とりあえず箱庭の周囲も見てみよう…』
と青年は考え、周りを見渡した。すると、箱の外には大量の瓶が置かれていた。
鉄みたいな物が入った瓶
木材のような物が入った瓶
小さな人形みたいなモノが入った瓶
人の"贓物"みたいな形をしたモノが入った瓶
ふと自分自身の連れていかれる先が気になった彼は、今向かっていると思われる方向を見た。
その先には、小さな空っぽの蓋が開けられた瓶があった。
嫌な予感がした。
再び抵抗を試みたがその抵抗も虚しく、彼はそのまま瓶に入れられた。
「ちょっと、出して!出してよ!」
と叫ぶ青年。
しかし声は届かず、蓋をされた。
青年は理解した。
"もう逃げられない" と。
蓋をされた際、一瞬だけ白衣を着た少女の姿が青年の目に映った。
一方、街では。
1号「資材調達の依頼ですが、新たに17件ほど入っています。今日も宜しくお願いしますね。」
2号「りょーかい!」
いつも通りの街の日常がそこにあった。
ついさっきの出来事が無かったかのように。
街の住人達がこう言った。
A「今日もあの女の子は森の研究に没頭してるのかな、ずっと引きこもって……。」
B「そうかもね……。あ、ねえ、またいつもと全く同じ、灰色の入道雲が見えるよ、毎回この時間の同じ場所に見えるけど、"人の形"みたいで、少し不気味だよね。」
A「そう…だね…。」
白衣を着た少女がとある物を見ながら言った。
「さて、次は何して遊ぼうかな、そろそろこの遊びも飽きてきたんだよね…。作り直そうかな?新しい実験体なんて簡単に作れるし…。」
少女の近くには
鉄みたいな物が入った瓶
木材のような物が入った瓶
小さな人形みたいなモノが入った瓶
人の"贓物"みたいな形をしたモノが入った瓶
未だに動く小さな人が入った瓶。
そして、中心だけ開けた、森だらけの四角い小さな箱。
箱の中には、忙しなく動く小さな人々がいた。
中の小人は全部で17人。
少女は今日も、その箱庭を眺めている。
2号「りょーかい!」
とある街の近くには、人工物の森と呼ばれる森があった。
その森には昔の街の名残りか、コンクリートみたいな物や鉄筋のような物が沢山落ちていた。
また、点々とある人工物らしき物はどれも妙なことに、劣化している物は殆ど無かった。
更に食材も多々あり、生活するに当たって必要なものは十分なほどあった。
そのため、とある街の住人達は、生活するために必要な物資を全てその森で収集していた。
しかし、その森には1つ問題点があった。
それは、一度でも森に入ってしまった街の住人は誰一人として帰って来ない、というものだった。
そのため、必要物資は全て探索隊に依頼するよう義務付けられていた。
その森は住人達の間では死の森と言う風に噂されていた。
今日も依頼を受けた探索隊はいつものように森へ入っていった。
数時間後──
探索隊が大慌てで帰還した。
何故か依頼の物資を何一つ持たずに。
一部の住人達が騒ぎを聞きつけて集まり、探索隊にこう聞いた。
「依頼の物資を持たずに帰還なんて初めてじゃないか、何があった?」
探索隊は皆、口を揃えてこう言った。
「化け物がいた」
その出来事の内容は瞬く間に街中へ広まった。
その話を聞いたとある好奇心旺盛な青年が、
「へ~、面白そうだね、俺ちょっと行ってくる!」
と言い、住人達や親達の制止も聞かずに方位磁針だけを持ち、さっさと行ってしまった。
その青年は元々探索隊や森に非常に興味を持っており、自ら森について研究しているほどで、こっそり探索隊に紛れ込んで森に入ろうとしたこともある問題児だった。
しかし、彼は頭が良かったため、住人達も親達も皆、
「将来有望な、いずれ森の謎を解いてくれる人物」
という風に認知していた。親も含めた一部の人々は、そのうち探索隊に入隊させようか、とさえ考えていた。
青年は暫く森の中を探索していた。
彼の心の内は、「化け物を見たい」という好奇心と、「森の研究材料を見つけたい」という探究心だけだった。
しかし依然として化け物の姿は見えない。
青年は
「化け物なんて居ないじゃん、探索隊の嘘つき……」と一人呟き、街へ引き返そうとした。
数分程歩いただろうか、突然目線の先、少し進んだあたりに何かが見える。謎の肌色の物が。青年は興味本位で近づいて行ったが謎の物体はすぐに上へ昇ってしまった。
「あ、行っちゃった…もう少し近くで見たかったけど、仕方ないか…」と青年は呟き、再び方位磁針の示す街の方角へと歩き始めた。
数歩進んだ時。
青年は突然身体が軽くなるのを感じた。下を見ると体が浮いていた。
青年はつままれていたのだ、先程見た肌色の物体に。抵抗しようと暴れるが、意味は無い。
青年はそのまま持ち上げられていった。
青年はもうどうしようも無いことを悟った
しかし彼は、
『まず冷静になろう、状況を把握するんだ…』
と、自分自身に言い聞かせ、彼は元々自分自身がいたであろう地面を見渡す。
すると、あることに気づいた。それは、
"今まで青年がいた場所全体は小さな箱の中にある"ということに。
後に元々彼がいた街が見えたが、街は周りが全て深い森で囲まれていた。
──まるで街の住人を逃がさないかのように。
青年は少し震えた声で、
「……、箱庭みたい……。」
と小さく一人呟いた。
『……この状況では、何も出来ない、とりあえず箱庭の周囲も見てみよう…』
と青年は考え、周りを見渡した。すると、箱の外には大量の瓶が置かれていた。
鉄みたいな物が入った瓶
木材のような物が入った瓶
小さな人形みたいなモノが入った瓶
人の"贓物"みたいな形をしたモノが入った瓶
ふと自分自身の連れていかれる先が気になった彼は、今向かっていると思われる方向を見た。
その先には、小さな空っぽの蓋が開けられた瓶があった。
嫌な予感がした。
再び抵抗を試みたがその抵抗も虚しく、彼はそのまま瓶に入れられた。
「ちょっと、出して!出してよ!」
と叫ぶ青年。
しかし声は届かず、蓋をされた。
青年は理解した。
"もう逃げられない" と。
蓋をされた際、一瞬だけ白衣を着た少女の姿が青年の目に映った。
一方、街では。
1号「資材調達の依頼ですが、新たに17件ほど入っています。今日も宜しくお願いしますね。」
2号「りょーかい!」
いつも通りの街の日常がそこにあった。
ついさっきの出来事が無かったかのように。
街の住人達がこう言った。
A「今日もあの女の子は森の研究に没頭してるのかな、ずっと引きこもって……。」
B「そうかもね……。あ、ねえ、またいつもと全く同じ、灰色の入道雲が見えるよ、毎回この時間の同じ場所に見えるけど、"人の形"みたいで、少し不気味だよね。」
A「そう…だね…。」
白衣を着た少女がとある物を見ながら言った。
「さて、次は何して遊ぼうかな、そろそろこの遊びも飽きてきたんだよね…。作り直そうかな?新しい実験体なんて簡単に作れるし…。」
少女の近くには
鉄みたいな物が入った瓶
木材のような物が入った瓶
小さな人形みたいなモノが入った瓶
人の"贓物"みたいな形をしたモノが入った瓶
未だに動く小さな人が入った瓶。
そして、中心だけ開けた、森だらけの四角い小さな箱。
箱の中には、忙しなく動く小さな人々がいた。
中の小人は全部で17人。
少女は今日も、その箱庭を眺めている。
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