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第2章 久瀬玲華

久瀬玲華

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 学校について凛を一目見て、悟ってしまった。
 凛のクラスメート達と話す笑顔が、作り物である事に。
 というか、どこから情報がもれたのかわからないが、もう教室が映画の舞台になる話題に溢れていた。
 彼女から遠ざけるなんて、もはや無理な状況。
 凛に『大丈夫か?』とLIMEアプリでメッセージを送ると、『大丈夫』と一言返ってきた。
 大丈夫じゃないんだろうな、これは。
 何となくそう思ったものの、その後凛と話す時間をなかなか作れなかった。少し前の彼女なら、俺と時間を作るなんてわけない事だったのだが、今の彼女の周りには常に女の子がいた。
 凛がクラスで人気者になっているのは嬉しい事なのだが、女の子のコミュニティは結束が強すぎて、凛が一人になる時が全くない。ここで呼び出して連れ去ろうものなら冷やかされるし、正直今の彼女にはそういった精神的な負担もかけたくなかった。

 どうしたものかと悩んでいると、放課後の文化祭の準備中、俺は材料の買出しを命じられた。面倒だなと思いつつ、これはある意味ラッキーなのか? と踏んだ俺は、凛をとにかく探す。
 廊下を歩いていると、ちょうどトイレから帰ってきたであろう凛とすれ違ったので、問答無用で腕をさっと取って、階段の渡り廊下まで引っ張っていった。彼女は「はいっ!?」と驚いた声を上げているが、気にしている余裕なんてない。

「び、びっくりした⋯⋯なに? いきなりどうしたの?」

 階段の踊り場で、凛は呆れたように笑って、首を傾げた。少しだけ嬉しそうなのは、気付かなかった事にしておいてやる。

「いや、最近二人になれてなかったからさ⋯⋯その、買い出し頼まれたんだけど、一緒に行かない?」

 そう訊いてみると、凛は困ったように笑って首を横に振った。

「行きたいけど⋯⋯ほら、私、衣装作りのデザイン任されてるからさ」

 ごめんね、と付け加えた。

「映画の事、心配してくれてたんだよね? でも、翔くんが思ってるほど、私ダメージ受けてないからさ。どっちかっていうと玲華のCМの方がダメージでかかったんだよね」

 凛はあっけらかんとした様子で答えた。
 多分、強がっている。でも、彼女がこうして言っているのだから、これ以上とやかく言うのも変だろう。
 そこで凛とは別れて、仕方なしに一人でイワンモールに向かった。代わりに純哉を誘ったのだが、彼は彼で別の用事を言い渡されていたので、結局一人だ。
 学校からイワンモールはそんなに遠くは無いが、バスで行かなければならない為、少しめんどくさい。
 あと、買出しの材料リストを見る限り、果たして本当に一人で持ちきれるのかも謎であった。
 俺の手、2本しかないんだけど?

 ◇◇◇

 イワンモールから買出しを終えて両手に大荷物を抱えてヒーヒー言いながら学校に戻るために商店街まで一度バスで戻ったところで、不意に携帯電話が鳴った。

 一旦荷物を置いて、電話を見てみると、知らない電話番号だった。090で始まっているので、どうやら携帯電話からの着信らしい。
 もしかしたらクラスの誰かからかな? と思い、電話に出てみる。

 すると、電話口からすごく明るい声が聞こえてきた。

『ハーイ♪ ショー、元気?』
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