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第33話 新年初出勤
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旧年中は色んなことがありすぎるぐらいありすぎたが、どうにか新しい年を迎えることが出来た。
新年初出勤すると、職場の仲間達と新年の挨拶を交わす。
「明けましておめでとうございまーすっ!」
「A HAPPY NEW YEAR!」
「今年もよろしくーっ!」
しばらくすると従業員は一ヵ所に集められて、姿勢を正《ただ》して整列する。
事業部部長がみんなの前に立つと、新年の口上(型通りの挨拶)を述べ始める。
「皆さん、新年明けましておめでとうございます。本年も、何とぞよろしくお願い申し上げます……――」
相変わらず、部長の口上は長い。
良くもまぁ、それだけ語る話があるもんだ。
感心しつつも、うんざりしながら、俺は部長の話を聞き流した。
長い口上が終わると、部長は俺の横へ来て、こそっと耳打ちする。
「川崎君、新年早々悪いんだけど、ちょっと来てくれる?」
「え? はい」
呼ばれるまま、俺は部長に付いて行った。
応接室に入ると、部長はいそいそとお茶の準備を始める。
「川崎君、どうぞ座って」
「え? あ、はい。座って良いんだったら、座りますけど」
「ちょっと待ってね。今、お茶を用意するから」
俺はワケも分からず、促されるまま、応接セットのソファに腰掛けた。
いつもなら、立ったままでいさせるはずなのに。
珍しいこともあるもんだ。
俺が座っていると、来客用の湯飲み茶碗が目の前に置かれた。
部長も自分のカップを持ってくると、俺と向かい合って座ってにっこり笑う。
「はい。安物のお茶だけど、良かったら飲んで」
今までとはあまりにも違う待遇に、俺は目を白黒させた。
「ど、どうしたんですか? 部長」
「どうもこうも。だって川崎君は、我が社の大株主様だからね。丁重(礼儀正しくていねいに)に、おもてなししなくっちゃ」
「は、はぁ……」
そういうことか。
金があるっていうだけで、人間はこれだけ目の色を変えるものなのか。
以前は、めちゃくちゃ説教垂れる人で、しかめっ面しか見たことなかったぞ。
なのに、今日の部長ときたら、超笑顔で、猫撫で声で話し掛けてくる。
やたら愛想笑いしてくる部長が、気持ち悪くてドン引き。
「お茶菓子も、あった方が良かったかな?」
「いえ、お茶だけで十分です。それで、俺を呼んだのは、何か用があったんじゃないんですか?」
「実はねぇ、川崎君の立場をどうしようかって話が出てるんだよ」
「立場?」
ひとつ頷くと、部長は続ける。
「だって、我が社の大株主で最高経営責任者であった、ミッチェル氏の跡を継いだんだから。今のままってワケには、いかないでしょ?」
「俺はこのまんまで、全然構わないんすけど」
「川崎君が良くても、こっちは良くないの」
「は、はぁ……」
俺が、気のない返事をすると、部長はお茶を一口飲んで続ける。
「しばらくは今まで通り、お仕事してもらうけど。これから、検討会議があるんだよ。川崎君の立場をどうすべきかを、話し合う予定になっている。決定次第、辞令を出すから、よろしくね」
「分かりました」
「あ、そうそう。これは現時点では、秘密裏でお願いね」
口の前に人差し指を立てて、部長は小声で言った。
「はい」
俺はお茶を飲み干すと、応接室を後にした。
いや、部屋を出ようとしたら扉にゴンッと何かがブチ当たった。
扉の向こうから、桜庭の痛そうな声がする。
「痛いです、ご主人様」
「あ、ごめん、桜庭」
っつーか、お前、扉に聞き耳立ててたな?
極秘情報を盗聴するとか、犯罪だぞ。
もういい加減、警察呼ばれるぞ、お前。
新年初出勤すると、職場の仲間達と新年の挨拶を交わす。
「明けましておめでとうございまーすっ!」
「A HAPPY NEW YEAR!」
「今年もよろしくーっ!」
しばらくすると従業員は一ヵ所に集められて、姿勢を正《ただ》して整列する。
事業部部長がみんなの前に立つと、新年の口上(型通りの挨拶)を述べ始める。
「皆さん、新年明けましておめでとうございます。本年も、何とぞよろしくお願い申し上げます……――」
相変わらず、部長の口上は長い。
良くもまぁ、それだけ語る話があるもんだ。
感心しつつも、うんざりしながら、俺は部長の話を聞き流した。
長い口上が終わると、部長は俺の横へ来て、こそっと耳打ちする。
「川崎君、新年早々悪いんだけど、ちょっと来てくれる?」
「え? はい」
呼ばれるまま、俺は部長に付いて行った。
応接室に入ると、部長はいそいそとお茶の準備を始める。
「川崎君、どうぞ座って」
「え? あ、はい。座って良いんだったら、座りますけど」
「ちょっと待ってね。今、お茶を用意するから」
俺はワケも分からず、促されるまま、応接セットのソファに腰掛けた。
いつもなら、立ったままでいさせるはずなのに。
珍しいこともあるもんだ。
俺が座っていると、来客用の湯飲み茶碗が目の前に置かれた。
部長も自分のカップを持ってくると、俺と向かい合って座ってにっこり笑う。
「はい。安物のお茶だけど、良かったら飲んで」
今までとはあまりにも違う待遇に、俺は目を白黒させた。
「ど、どうしたんですか? 部長」
「どうもこうも。だって川崎君は、我が社の大株主様だからね。丁重(礼儀正しくていねいに)に、おもてなししなくっちゃ」
「は、はぁ……」
そういうことか。
金があるっていうだけで、人間はこれだけ目の色を変えるものなのか。
以前は、めちゃくちゃ説教垂れる人で、しかめっ面しか見たことなかったぞ。
なのに、今日の部長ときたら、超笑顔で、猫撫で声で話し掛けてくる。
やたら愛想笑いしてくる部長が、気持ち悪くてドン引き。
「お茶菓子も、あった方が良かったかな?」
「いえ、お茶だけで十分です。それで、俺を呼んだのは、何か用があったんじゃないんですか?」
「実はねぇ、川崎君の立場をどうしようかって話が出てるんだよ」
「立場?」
ひとつ頷くと、部長は続ける。
「だって、我が社の大株主で最高経営責任者であった、ミッチェル氏の跡を継いだんだから。今のままってワケには、いかないでしょ?」
「俺はこのまんまで、全然構わないんすけど」
「川崎君が良くても、こっちは良くないの」
「は、はぁ……」
俺が、気のない返事をすると、部長はお茶を一口飲んで続ける。
「しばらくは今まで通り、お仕事してもらうけど。これから、検討会議があるんだよ。川崎君の立場をどうすべきかを、話し合う予定になっている。決定次第、辞令を出すから、よろしくね」
「分かりました」
「あ、そうそう。これは現時点では、秘密裏でお願いね」
口の前に人差し指を立てて、部長は小声で言った。
「はい」
俺はお茶を飲み干すと、応接室を後にした。
いや、部屋を出ようとしたら扉にゴンッと何かがブチ当たった。
扉の向こうから、桜庭の痛そうな声がする。
「痛いです、ご主人様」
「あ、ごめん、桜庭」
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もういい加減、警察呼ばれるぞ、お前。
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