学園ラブコメの恋愛フラグをことごとくへし折るニブチン主人公に恋焦がれるホモ兄弟の片想い地獄に巻き込まれてしまった……

橋元 宏平

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第1話 恋に堕ちて

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 同じクラスでゲーム好きという共通点から、大介オレ誠人まこと直樹なおきは友達になった。
 放課後は、「ゲーム同好会」の部室に入りびたって、遊んでいる。
 ゲームしてっと、時間なんていくらあっても足りない。
 気が付いたら真っ暗で、先生から追い出されるなんてしょっちゅう。

 それでも遊び足りなくて、誰かの家へ遊びに行く。
 ケンカにならないように、平等に三交代制さんこうたいせい
 ちゃんと、親の許可もている。

「今日は、直樹ん家だべ」
「あ、そっか、忘れてた。でも、家なんも用意してねぇわ。じゃあしたっけセイコーマートセコマ寄ってくか」
「俺、ポテチとコーラ買おっと」
「また、デブがデブりそうなもん食いやがって」
「おれ、甘いもんが食いたい」

 コンビニ寄って、直樹ん家で好き勝手飲み食いしながらゲームをやる。
 ここまでは、いつも通りだった。

 ノックもなく、直樹の部屋のドアが開かれる。

「兄さん、ちょっといい?」
「は?」
「え?」

 反射的に、声の方へ振り向いた。
 入って来た人物を見て、オレと誠人は目を見開みひらく。

 ソイツは服装こそ違うが、直樹そっくりだった。
 誠人はしきりに、直樹とソイツを見比べている。

「直樹って、双子だったの?」
「いや、違うって。コイツは、おれの弟の雅紀まさき

 直樹が紹介すると、弟は明るく挨拶あいさつしてくる。

「どうも初めまして、弟の雅紀です」
「コイツらは、大介だいすけと誠人」

 続いて直樹は、弟にうちらを紹介した。
 こっちとら人様ひとさまん家にお邪魔している身だし、挨拶くらいはすべきか。
 機嫌をそこねて、出入禁止できんになっても困るし。

「初めまして、雅紀くん。お邪魔しています」
「初めまして、こんにちわ」

 オレと誠人も、にこやかに挨拶をした。
 するとどうしたことか、弟がうちらを見て固まった。
 あれ? なんかおかしかった?
 初対面の人に対する、普通の挨拶だったと思うんだけど。
 うちらは、キョトンとするばかりだ。
 直樹も首をかしげて、弟に問い掛ける。

どうしたなした?」
「どっちがどっち?」

 弟の質問に、直樹がオレと誠人をそれぞれ指差す。

「デブが誠人で、小さいこまい方が大介」

 コイツ……!
 しれっと、ディスりやがった。
 言い返そうとしたら、弟が先に口を開いた。

「誠人さん、好きです! ぼくと付き合って下さいっ!」
「「「はぁ?」」」

 耳を疑う告白に、その場にいた全員があっけに取られた。
 直樹も告白された誠人も、ポカンとしている。
 まぁ、初対面でいきなり告白されたら、そうなるわな。
 しかも、相手は男。

 誰もが沈黙する中、ゲームのBGMだけが流れる。
 数秒後、誠人が声を立てて笑い出す。

「直樹の弟くんも、ゲーム好きなんだ? だったらしたっけ、一緒に遊ぶ?」
「はい! 喜んでっ!」

 誠人に誘われて、弟は満面の笑みでいそいそと誠人の隣に座った。
 直樹も「ああ、なんだ、そういうことか」と、納得した顔で頷いた。

 いやいや、そうじゃねぇっ!
 弟が誠人を見つめる熱を帯びた視線は、友情とも尊敬とも違う。
 明らかに「れてます」って、顔してんだろうが!
 てめぇらの目は、節穴ふしあなかっ!

「お医者様でも草津の湯でも、惚れた病いは治りゃせぬ」って、歌があんじゃん?
 恋とは、つまるところ病気です。
 相手のことで頭がいっぱいになって、注意散漫ちゅういさんまんになったり。
 夜が眠れなくなったり、食欲が減ったり、胸が苦しくなったり。
 そこが「恋は病気だ」って、言われる所以ゆえんなのよ。

 人を好きになるのに、理由はない。
 年齢も見た目も、性別すらも越える。
 全く好みではないタイプを、好きになることすらある。
「どこが好きなのか」と説明を求められても、本人にも分からない。
 好きなものは好きだから、しょうがない。

 悲しいかな、恋した相手はよりにもよって誠人。
 自己評価が極端に低く、「俺なんかどうせ」と否定する。
 人のことは褒めるくせに、自分が褒められた時は認めない。
 自分に自信がないヤツは、「自分は好かれるはずがない」と、思い込んでいる。
「自分には恋愛する資格がない」と、諦めてしまっている。

 どうあがいても、両想いになれない。
 失恋確定じゃん。
 あ~あ……可哀想に。

 その日から、ホモ弟の猛アタックが始まった。
 ヤツは中坊だから、学校が違う。
 にもかかわらず、翌朝から直樹について来た。
 オレは不思議に思って、ホモ弟に声を掛ける。

「あれ? お前、直樹の弟じゃねぇか。今日は一緒なの?」
「はい、一緒です」

 ホモ弟は「今日から」を、強調して頷いた。
 兄の直樹が、ホモ弟を指差して苦笑している。

「コイツ、登校時間も通学路も違うのに、『誠人さんと一緒に行く』っつって聞かねぇんだよ」
「バラさないでよ、兄さん! ぼくだって、誠人さんと一緒に登校したいんだもんっ!」

 頬を赤らめて、ホモ弟が直樹に向かってわめいた。
 コイツ、ガチだ。
 誠人と登校したいが為に、登校時間と通学路まで変えたのかよ。
 いつもの合流地点に誠人が現れると、ホモ弟のテンションはMAXに。

「あ、誠人さんっ!」

 手を大きく振って、スキップしそうな足取りで誠人へ駆け寄る。

「誠人さ~んっ、おはようございま~す!」
「おはよう。え~っと、直樹の弟の雅紀くんだっけ?」
「そうですっ、雅紀です! 覚えててくれて、嬉しいですっ!」

 愛想あいそが良い誠人はニコニコ笑って、軽く手を振り返す。
 ホモ弟は誠人の横にピッタリくっついて、楽しげに話し始める。
 デレデレの笑顔で、誠人を見つめている。
 でも誠人は、ホモ弟の恋心に気付きもしない。
 ふたりの後ろを歩きながら、直樹がオレに愚痴ぐちり始める。

「昨日からコイツさ、誠人誠人って、スゴいなまらうるせぇんだよ」
「マジかよ? ヤベェな」
「『誠人は何が好きか』『彼女はいるのか』って、質問攻めしてきやがって」
「うわ、ウゼェ」
「あんまりしつけぇから『そんなに知りたきゃ本人に聞け』って、キレたわ」
「そらぁ、本人に直接聞いた方が早ぇべな」

 直樹がウンザリした顔で、深々とため息を吐いた。
 オレは同情して、直樹の肩をポンポンと軽く叩いた。

「好きなヤツのことは、なんでも知りたい」って気持ちは、分からんでもない。
 でも、うちらはただの遊び友達。
 ワイワイ楽しく遊べれば良いっつぅ、気楽な関係なのよね。
 相手を詮索せんさくしないし、別に知りたくもない。
 ヘタに知りすぎると、面倒臭ぇしな。

 見ればホモ弟は、誠人を質問攻めしている。
 好きな食べ物、嫌いな食べ物、得意なこと、苦手なことなどなど。
 確かに、これはウゼェ。
 誠人は困惑こんわくしつつも、バカ正直に答えている。

 そういうところが、ますます好かれんだぞ。
 なんせこのデブ、天然人タラシだからな。
 老若男女問わず、無自覚むじかくきつけんのよ。

 ホモ弟は下校時も、うちらの高校の校門で待ち伏せしている。
 中坊が校門にいるっつって、そらもう目立つこと目立つこと。
 誠人と下校したくて、何時間でも待ってんのよ。
 部活動(笑)で、何時になるかも分かんねぇのにさ。

 誠人が出て来るとパッと顔を明るくして、手を大きく振ってくる。
 飼い主の帰りを大喜びで迎えて、ちぎれそうな程しっぽを振る犬みたい。
 てめぇは、忠犬ちゅうけんハチ公こうか。

「誠人さん、待ってました! 一緒に帰りませんか?」
「ここで、ずっと待ってたの? 待たせちゃって、ごめんね」
「誠人さんの為なら、ぼく、いくらでも待ちますよ」
「そんな、悪いよ。次から、早く出るからね」
「ホントですか? 嬉しいです、誠人さん!」

 待ち合わせの恋人みたいなやりとりをして、誠人とホモ弟は並んで歩き出す。
 誠人は「待たせた」ことを、詫《わ》びているだけ。
 ホモ弟が一方的に、恋愛ごっこを楽しんでいる。
 可哀想なヤツ。
 まぁ、本人がいいならいいよ。
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