学園ラブコメの恋愛フラグをことごとくへし折るニブチン主人公に恋焦がれるホモ兄弟の片想い地獄に巻き込まれてしまった……

橋元 宏平

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第4話 片想い地獄

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 誠人まことは、デッカイわんこみてぇなヤツだ。
 イメージとしては、甘やかされてデブったシベリアンハスキーって感じかな。

 どうもオレは、誠人に「ご主人様」と認められたらしい。
 満面の笑みでベタベタ触ってくるし、めっちゃなついてくる。
 オレがどんなに素っ気ない態度を取ろうとも、めげない。
かまって構って」と、まとわりついてくる。
 しっぽがあったら、力いっぱいブンブン振ってんだろうな。

 いつの間にか、誠人はオレを「大介だいすけ先生」と呼び始めた。
「さすが、大介先生っ!」と、なんでもかんでもたたえてくる。
 まるで、全知全能ぜんちぜんのうの神を妄信もうしん(やたら信じまくる)する信者。
 オレは、そんな出来た人間じゃない。
 てめぇと同じ、そこらへんにいる普通の高校生なんだよ。

 正直ウゼェから、適当にいなしている。
 構ってやらないと分かりやすくしょぼんとして、不憫ふびんオーラを出してくる。
 ちょっと可哀想になって構ってやると、めっちゃ喜ぶ。
 ここまで、喜怒哀楽きどあいらくが分かりやすいヤツも珍しい。

 そんなに構って欲しけりゃ、ホモ兄弟に構ってもらえば良いべや。
 てめぇのことが大好きなアイツらなら、喜んで構ってくれるだろうよ。

 ところが、誠人にとってホモ兄弟はただの友達らしい。
 ホモ兄弟と一緒に遊ぶけど、ヤツらの熱烈アピールには全く気付かない。
 一級フラグ建築士のくせに、恋愛フラグをことごとくへし折り続ける。
 ラノベのニブチン主人公か、てめぇは。
 そんな誠人に振り回されるホモ兄弟が、可哀想になるレベル。

 誠人がホモ兄弟の熱烈アピールに気付かないのは、一応理由がある。 
 聞けば、「中学の時にモテないと気付いてから、恋愛は諦めた」そうだ。
「自分にはモテる要素がない」と、思い込んでるっぽいのよね。
 もはや開き直って、「俺が末代まつだいになってやるっ!」などと言っている。
 確かに本人が言う通り、クソダサメガネオタクデブで、とてもモテそうには見えない。

 今までさっぱりモテなかったのに、急にモテ期が来ても気付けないわな。
 しかも、相手は男。
 世の中には、女には全くモテないけれど、ホモにはモテまくる男がいる。
 誠人は、そういうタイプなんだと思う。
「デブ専ゲイ」なんて、特殊性癖もあるしな。

 そんで、デブはネコ受けのことが多い。
 なんでデブがネコなのかっつーと、デブるとおっぱいが出来るから。
 誠人がおっぱいポロリした時なんか、オレを含めた全員がおっぱいに釘付けになった。
 だってうちら、性欲が有り余った欲望に忠実な男子高校生だもん。
 例え野郎のおっぱいだと分かっていても、生の巨乳きょにゅうを見たら勃起ぼっきしちゃうわけよ。
 あれだけデカけりゃ、男の野望である「胸の谷間に顔を挟む(ぱふぱふ)」も出来そうじゃね?
 お人好ひとよしの誠人のことだから、「ぱふぱふ」くらいならさせてくれそうな気もする。
 今度、お願いしてみるか。

 閑話休題それはさておき
 弟は欲望に忠実で、グイグイ行くタイプ。
 兄はむっつりスケベで、負けず嫌い。
 互いをライバルしてて、どうにか誠人を振り向かせようと必死だ。
 だが、誠人が懐いているのはオレ。

 その結果、ホモ兄弟はオレにまで対抗意識を燃やしてくる。
 マジで、何なのよ?
 この誰もむくわれない、片想い地獄。
「ハチミツとシロツメクサ」かよ?
 ホモしかいない「ハチシロ」って、誰得だれとく(誰が得をする)だよ?
 どうしてこうなった。

「なぁ、大介。どうすれば、誠人に信頼してもらえると思う?」
 自販機でお茶を買ってゲーム同好会の部室へ戻ると、例によって直樹の恋愛相談が始まった。
 コイツはいつも、単刀直入たんとうちょくにゅう(いきなり本編)なのよね。

「はぁ? なんで、信頼してもらいてぇのよ?」

 質問を質問で返すと、直樹はオレをうらめしそうに見た。
 すねた口調と低い声色で、ボソリと答える。

「だって、誠人が大介のこと好きだって言うから」
「ああ、そういうこと?」

 直樹が言うには、誠人は『頼りがいのある、大介が大好き』と言ったそうだ。
 だから信頼を勝ち得れば、好きになってもらえるかもしれない。
 自分にもワンチャンあるかもしれないと、安易に考えたワケか。
 だが、それはあまちゃん(考えが甘い)である。

「信頼ってのは日頃の積み重ねで、そう簡単に得られるもんじゃねぇんだよ」
「そりゃそうだけどさ……。誠人に好かれるにはどうすりゃ良いか、分かんなくて」
「信頼を得るには、それに見合った行動を取る必要あんのよ」
「『見合った行動』って、何すりゃ良いんだ?」

 直樹はすねた態度を改めて、真剣に聞く姿勢に入った。
 オレは買って来たお茶をひとくち飲んで、説明する。

「まず、『相槌あいづちの共感』だな」
「あ、ちょっと待ってくれ。忘れそうだから、メモ取っても良いか?」
「いいよ。てか、メモ取んねぇと絶対忘れんべ」

 直樹はカバンから、ペンケースとノートを取り出した。
 それ、数学のノートだけど良いの?

「えっと、なんだっけ? 何の共感?」
「もう忘れたのかよ。三歩歩いて忘れる鳥頭とりあたま超えたボケジジイか、てめぇは。『相槌の共感』だよ」
「『あいずちのきょーかん』と……」

 直樹がきったねぇクセ字で、シャーペンを走らせる。
『あいずちのきょーかん』って、全部ひらがなだし間違ってるし。
 こりゃ、全然分かってねぇな。
 仕方ねぇからボケジジイにも分かるように、丁寧ていねいに説明してやる。

「アイツは『かまってちゃん』だから、面倒臭がらずに話を聞いてやれ」
「話を聞いてやるだけで、良いの?」
「もちろん、聞くだけじゃダメよ。タイミング良く相槌を打ったり、オウム返ししたり、返事したりするんだ」
「『ちゃんと聞いてますよ』っつぅ、態度を見せるってことか?」
「そうそれ。共感してもらえないと、『話す意味がない』って、信頼を失くすワケよ」
「なるほど、それが『相槌の共感』からの『信頼』か」

 直樹は感心した顔付きで、うんうんと大きく頷いてメモを取る。
 そうそう、そんな感じ。
 元々コイツは素直な性格だから、割とすぐ実践じっせん出来そうだな。

「続いて、『承認欲求しょうにんよっきゅう』」
「承認欲求?」
「早い話が、『められたい』とか『認められたい』って気持ちだな」
「ああ、確かに。誰だって褒められたいし、認められたいもんね」
「でも、あんま褒めすぎるとウソ臭くなるから、ほどほどにな」
「そのって加減が、分かんないんだけど」
「てめぇの弟みてぇに、しつこくグイグイこられたら引くべ?」
「うん、めっちゃウゼェわ」
「だから、たまに引いてちょっとツレない態度たいどを見せるのも手よ」
「う~ん……、難しいな」

 ノートを取りながら、直樹は難しい顔をしてうなった。

「言ったべや。信頼ってのは、そう簡単に得られるもんじゃないって」
「でも、参考になったよ。ありがとうございます、大介先生」
「どういたしまして」

 信頼の手解てほどき(初歩を教える)を受け、直樹は満足げに笑った。
 そこで、ホモ弟とスマホで対戦ゲームをしていた誠人がこちらを向く。

「何? アンタら、勉強してんの?」
「そうよ。コイツが『分かんねぇことがある』っつぅから、教えてやってたんだわ」
「さっすが、大介先生! 優しいっ! 頭良いっ! 最高っ!」

 誠人はキラキラした尊敬の眼差まなざしで、オレを褒め称えた。
 そんな誠人を見て、ホモ兄弟は「ぐぬぬ……」と悔《くや》しがっている。

 ホモ兄弟と比べ、オレは圧倒的優位あっとうてきゆういにある。
 オレはコイツらと違ってホモじゃねぇから、誠人を友達以上には見られないけど。
 この状況は、満更まんざらでもない。
 もうしばらく、ホモ兄弟の無様ぶざま悪足掻わるあがきを見ていたい。
 まぁ、せいぜい頑張れや。
 上手くすりゃ、そのうち誠人の信頼を得られるかもな。
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