流行りのオモチャを買わされたら、そのオモチャが擬人化しました!

読み方は自由

文字の大きさ
26 / 61
第一章 日常ラブコメ編

第24話 普通のラブコメ小説では、ありえない

しおりを挟む
 だからこそ、神崎の行動が怖かった。俺達の秘密を知って、何をするか分からない。普通は、停学処分か。もっと悪ければ、退学処分? 曲がった事を許さない神崎なら、十分にあり得る事だった。

 学校の職員室に行って、担任の先生に「この事」を伝える。先生は、教育指導の先生に「この事」を伝える。教育指導の先生は、放課後に俺達の事を呼び出す。呼び出される場所は、二年生フロアの一番隅にある生徒指導室だ。

 生徒指導室の中は重苦しく……聞いた話では、「刑務所のような空気を感じる」と言う。正に学校の取調室だ。生徒指導部の先生も、柔道の黒帯で、言葉よりも身体の方が強かった。

 自分の行いに後悔を抱く。
 
 俺は暗い顔でポケットの中にキューブを仕舞い、これまた暗い顔で自分の教室に戻った。教室の中では、仲間達が下らない話題で盛り上がっていたが、昨日の放課後に……覚えているだろう? 
 俺と一緒に町のホビーショップに行って、キューブのオモチャを一袋買った奴だ。そいつだけは暗い顔で、仲間の笑いに応える事無く、俺の姿を見つめると、まるで親の敵と言わんばかりに、その顔をじっと睨みつけてきた。

 俺は、その顔に怯んだ。

「う、うううっ」

 そいつは、俺の顔から視線を逸らした。

 俺はその行動にホッとしつつ、机の中にキューブを仕舞って、残りの五時間目、六時間目の授業を受けた。それらの授業を受けた後は、教室の中を掃除し、帰りのホームルームを終えて(結局、生徒指導部には呼び出されなかった)部活に行く準備をはじめた。

 鞄の中にある、例のプロットモドキ。プロットモドキの内容は一応書き足していたが、藤岡を満足させる(だろう)クオリィティには達していなかった。
 
 俺は憂鬱な顔で文芸部の部室に向かおうとしたが、自分の席から立ち上がった所で、黒内のグループに「待って」と呼び止められてしまった。
 
 黒内は、俺にキューブ状態のラミアを返した。

「今日は、時任君と一緒に帰りたいんだって」

「そ、そっか」

 と少し動揺したが、それもすぐに収まった。ラミアの事を裏切ったわけではないけど。昼休みのアレは、確かに秘密にしていた方が良さそうだった。今後の生活の為にも。

 俺は鞄の中に彼女を仕舞って、文芸部の部室に向かった。部室の中では言わずもがな、藤岡がパソコンの画面に文字を打っていた。俺が部室の中に入った時も。「オッス」の挨拶には一応応えたが、それを応えると、パソコンの画面にまた向き直ってしまった。

 俺はいつもの席に座り、二人のキューブを優しく撫でてから、藤岡の顔に視線を戻した。

 藤岡は、パソコンのキーボードを叩きつづけた。

「プロットは、順調?」

「え?」と、緊張する俺。「まあ」

 俺は、右の頬を掻いた。

「藤岡のアドバイスを受けてさ。人間関係をちょっと複雑に」

「……そう」

 藤岡の指が一瞬、止まった。

「ねぇ、時任君」

「なんだ?」

「時任君って、オタク?」

「ふぇ?」と驚いた俺の気持ちは、察して下さい。「俺が、オタク?」

「ええ」

 藤岡は、俺の顔に視線を移した。

「あのプロットを見る限り。普通は……ラブコメのセオリーで行くなら、同じ人間同士が付き合うでしょう? お互いの事を好きだけど、素直になれない男女のラブコメとか」

「う、うん。たぶん」

「でも」

「でも?」

「あのプロットは、違った。擬人化した美少女と付き合う話なんて。普通のラブコメ小説では、ありえない。ましてや、その美少女から『好きです』って告白されるなんて」

「うっ」

「時任君」

 彼女の眼光が鋭くなった。

「わたしに何か、隠していない?」

 背筋が凍った。それこそ、冷凍庫に入れられてみたいに。「え? 何かって?」と誤魔化そうとした声も、明らかに震えていた。

 机の上に目を落とす。
 
 俺は覚悟を決めて、机の上に彼女達を置いた。
 
 藤岡は、その行動に目を細めた。

「キューブ?」

「ああ」

「そのキューブがどうしたの?」

 俺は自分の周りを見渡し、その安全を確かめると、声を細めて「これから言う事は」と話しはじめた。

「みんな(クラスの連中には、バレているが)には、内緒だぞ?」

 藤岡の表情が変わる。

「うん」

 俺は「それ」に安心して、机の彼女達に「二人とも、頼む」と言った。

 二人は、その願いに応えた。

 美しく光る、キューブの本体。キューブはその光を残したまま、部室の空いている場所に行って、その姿をゆっくりと変えた。
 
 藤岡は、その現象に目を見開いた。

「え? なっ!」

 二人は、彼女に笑いかけた。ラミアは「こんにちは」と冷静に、チャーウェイは「こんにちはぁ」と天然っぽい口調で。
 二人は藤岡の前に歩み寄ると、揃って彼女に頭を下げた。

「私は」

「サーちゃんの」

 二人の声が重なった。「恋人です!」

 藤岡は、その言葉に絶句した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編7が完結しました!(2026.1.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

処理中です...