流行りのオモチャを買わされたら、そのオモチャが擬人化しました!

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第一章 日常ラブコメ編

第53話 出会った少年は……

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 どうやって、そいつと出会ったのか? その記憶は、薄らとしか覚えていなかった。彼女のキスに驚いた所は、覚えている。それから自分の自転車に跨がって、そのペダルを漕いだ所も。自転車は、虚ろな世界を進みつづける。俺の意思を無視するように。町の道路をただ、進みつづけた。

 赤信号の時は、流石に止まったけれど。それ以外の時は、町の道路を真っ直ぐ進んだり、曲がり道の時は、その流れに従って、自転車のハンドルを回したりした。すべてが不可思議に、そして、幻想的に進んで行く。普段見慣れた町の風景も、この時ばかりは、得体の知れない場所、異世界の「それ」のように感じられた。
 
 俺はその世界に酔い痴れた瞬間、自転車のブレーキを握った。ブレーキの音が響く。それに合わせて、自分の意識を「ハッ」と取り戻した。
 
 俺は目の前の人、すげぇ美形の男(俺と同い年くらいか?)に謝った。

「すいません」

 の声に驚く男だったが、すぐに「いえ」と笑いかえした。

「こちらも余所見をしていたので」

 男は、俺に頭を下げた。

「申し訳ありませんでした」

 俺は自転車から降り、彼の前に歩み寄った。

「謝らないで下さい。ぼうっとしていたのは、俺の方ですから」

 と言いつつ、もう一度「すいません」と謝った。

 俺は頭を上げて、相手の顔(も含めた姿)を見た。

 相手はやはり、自分と同い年くらいの美少年。身長は彼の方が高かったが、体型の方はそんなに変わりなく……どちらかと言うと、痩せていた。それこそ、無駄なく引き締まっている言う感じに。
 服装は至って今風だが、それに違和感を覚えているのか、何となく着づらそうな雰囲気を醸し出していた。髪の方も、銀色(ラミアの髪と似ていた)に染めているし。
 
 俺は、彼の姿にラミアを、その姿を重ねてしまった。
 
 相手は、その表情に首を傾げた。

「どうなされたのですか?」

「え?」と、また我に返る。「い、いや」

 俺は、右の頬を掻いた。

「知り合いの女の子に似ていたもんで」

 彼は、「女の子」の部分に吹き出した。

「女の子に、ですか?」

「ああうん、その銀髪も。その子は」

 と言いかけた所で、その続きを読み込んだ。見ず知らずの他人にそんな事を言っても仕方ない。彼は、俺の事などまるで知らないのだから。右の頬をまた、掻く。

 俺は彼に「何でも無い」と誤魔化そうとしたが、その彼に「あなたの恋人ですか?」と笑われてしまった。

 彼は何処か楽しげな顔で、俺の答えを待った(と思う)。

 俺の答えはもちろん、「ち、違う」だった。

「あの子は……うっ、恋人じゃねぇよ。大事な人ではあるけどさ」

「そうですか。ボクにも恋、大事な人がいます。自分の命をしても良いくらい。彼女は、ボクにとっての女神様です。でも」

「でも?」

 の続きは、結局聞けなかった。

「家は、近くですか?」

「え? ああ」

 俺は、自分の周りを見渡した。

「ここからは、結構遠いけど。帰れない距離じゃねぇよ」

「そうですか。ボクの家……帰る場所も、ここから結構遠いんです。今は、夕方の散歩を楽しんでいたので」

「ふうん、そっか」

 俺はまた、自転車の上に乗った。

「俺、時任智。お前は?」

「ボクは、ラミ……蘭童らんどうすぐる

「蘭童優、か。うん、良い名前だな」

「時任智も良い名前ですよ?」

 俺達は、互いの名前を褒め合った。

「それじゃ」

「はい」

「さっきは、本当にごめん」

 俺は彼に頭を下げて、自分の自転車をまた走らせた。

 蘭童は、その背中を見送った(と思う)。

 俺は自分の家に帰ると、家のみんな(チャーウェイも家に帰っていた)に「ただいま」を言い、鞄の中から弁当箱を取り出し、母ちゃんに「それ」を渡し、自分の部屋に戻って、学校の制服からいつもの服に着替え、親父が帰ってくるまで、ラミア達と楽しくお喋りした。

 親父は、いつもの時間に帰ってきた。

 俺はチャーウェイと連れ立って(流石に全員は座れないので、食事は当番制にした)、家のダイニングに行き、スーツ姿の親父に「お帰り」、「お帰りなさい!」と言って、それぞれの席に座った。

 親父は、俺達の挨拶に「ただいま」と返した。

 俺達は、今夜の夕飯を食った、夕飯を食った後は、家の風呂に入り(チャーウェイと一緒に入ってしまった。お陰で、心臓とアレがヤバイ事になった)、自分の部屋に戻って、軽く勉強し、また例の如くプロットを作って、自分の頭を「う、ううう」と悩ませた。

 俺は、鞄の中にノートを入れ、スマホの端子に充電器を刺し、部屋の電気を消して、机の彼女達に「お休み」と言った。

 彼女達はそれぞれの調子で、俺の言葉に「お休み」、「おやすみぃ」、「お休みなさい」、「おう、おやすみ」と返した。

 俺は口の辺りまで毛布を引っ張り……蘭童優の事をふと思い出したが、眠気の方が勝ってしまい、気づいた時にはもう、夢の世界に落ちてしまっていた。
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