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第二部
Ⅴ
朝の会議室。
大きなプロジェクトの進行表が壁に貼られ、あちこちで社員が慌ただしく資料を準備している。
俺はパソコンを前に、舟形先輩と並んで座っていた。
「舟形先輩、この部分、仕様変更に合わせて直しておきました」
「お、助かる! 相変わらず仕事早いな、直樹」
「いえ、白鷹課長に叩き込まれましたから……」
そう言って、少し照れ笑いを浮かべた。
舟形先輩は俺を見て、ふっと優しく笑った。
「真面目で助かるよ。お前がいると現場の空気がやわらぐんだよな」
「そうですか? 自分ではそんなつもりないんですけど……」
「そこがいいんだって。まぁ、でも、無自覚なのが一番たち悪いけどな」
舟形先輩が肩をすくめると、周りのスタッフが小さく笑う。
俺は顔が赤くなってって、慌てて資料をまとめ直した。
「す、すみません、ちょっとお茶いれてきますね!」
そう言って、コーヒーメーカーに向かう俺を見送りながら、舟形先輩はぼそっと呟いた。
「……ほんと、放っとけねぇな」
俺は給湯室でコーヒーをいれながら、心の中でスケジュールを整理していた。
(舟形先輩に迷惑かけないようにしなきゃ……)
そのとき、背後から桐島課長の声がした。
「お、舟形の相方君、今日も頑張ってるねぇ」
「……あ、桐島課長。お疲れさまです」
「そんなに緊張しなくていいって。俺は味方だからさ」
俺は曖昧に笑いながら、カップを手に席に戻っていく。
デスクに戻ると舟形先輩が小声で囁いた。
「……桐島課長、また声かけてきた?」
「え、ええ、まあ……」
舟形先輩は少し眉をひそめて、ため息をつく。
「気をつけろよ。お前、変に優しいから、つけこまれやすい」
「だ、大丈夫だよ」
「……ほんとかよ」
俺は笑ってごまかしながらも、心の中では少しだけ、迅さんの顔が浮かんでいた。
(……迅さんに話したら、怒るだろうな)
昼休み。オフィスの片隅、窓際のテーブルで俺は舟形先輩と並んで弁当を広げていた。
外は秋晴れで、窓の外の銀杏並木が少しずつ色づいている。
今日はデスクを離れて、昼ごはん。
「……それ、今日も白鷹課長の手作り?」
舟形先輩が、箸を動かしながらからかうように言う。
直樹は慌てて弁当箱を少し閉じ気味にする。
「ちょ、ちょっと! 声大きいですよ、舟形先輩!」
「はいはい。誰も聞いちゃいねぇよ」
舟形先輩はニヤリと笑って、弁当の中を覗き込む。
「わ、卵焼き完璧じゃん。しかもこの照り焼き、見ただけでわかる、手慣れてるやつだ」
「……おいしいです」
「でしょーね。愛情たっぷりだもんな」
「ち、違いますよ! 愛情とか、そんなんじゃ……」
「はいはい、“そんなんじゃない”ねぇ~。顔が真っ赤だぞ」
俺はぷいと横を向いて、少し頬を膨らませた。
その様子に舟形先輩は肩を震わせて笑う。
「お前さ、隠したいなら、もうちょい隠す気出せ。みんなだいたい察してるから」
「えっ……! うそ、ほんとですか!?」
「見りゃわかるよ。朝、会社の前を一緒に歩いてるの、見られてんぞ」
「……っ!」
俺は手が止まって、耳まで真っ赤になる。
舟形先輩はフォローするように笑って言った。
「でもさ、いいことだと思うよ。ちゃんと大事にされてるって伝わるから」
「……そんな風に見えます?」
「うん。お前、最近いい顔してる。昔よりずっとな」
俺は少し照れくさそうに笑って、
「……ありがとうございます」
とだけ答えた。
舟形先輩はその笑顔を見て、ふと、
(……あーあ。こんなの、誰だって惚れるわけだ)
と心の中で苦笑していた……。
大きなプロジェクトの進行表が壁に貼られ、あちこちで社員が慌ただしく資料を準備している。
俺はパソコンを前に、舟形先輩と並んで座っていた。
「舟形先輩、この部分、仕様変更に合わせて直しておきました」
「お、助かる! 相変わらず仕事早いな、直樹」
「いえ、白鷹課長に叩き込まれましたから……」
そう言って、少し照れ笑いを浮かべた。
舟形先輩は俺を見て、ふっと優しく笑った。
「真面目で助かるよ。お前がいると現場の空気がやわらぐんだよな」
「そうですか? 自分ではそんなつもりないんですけど……」
「そこがいいんだって。まぁ、でも、無自覚なのが一番たち悪いけどな」
舟形先輩が肩をすくめると、周りのスタッフが小さく笑う。
俺は顔が赤くなってって、慌てて資料をまとめ直した。
「す、すみません、ちょっとお茶いれてきますね!」
そう言って、コーヒーメーカーに向かう俺を見送りながら、舟形先輩はぼそっと呟いた。
「……ほんと、放っとけねぇな」
俺は給湯室でコーヒーをいれながら、心の中でスケジュールを整理していた。
(舟形先輩に迷惑かけないようにしなきゃ……)
そのとき、背後から桐島課長の声がした。
「お、舟形の相方君、今日も頑張ってるねぇ」
「……あ、桐島課長。お疲れさまです」
「そんなに緊張しなくていいって。俺は味方だからさ」
俺は曖昧に笑いながら、カップを手に席に戻っていく。
デスクに戻ると舟形先輩が小声で囁いた。
「……桐島課長、また声かけてきた?」
「え、ええ、まあ……」
舟形先輩は少し眉をひそめて、ため息をつく。
「気をつけろよ。お前、変に優しいから、つけこまれやすい」
「だ、大丈夫だよ」
「……ほんとかよ」
俺は笑ってごまかしながらも、心の中では少しだけ、迅さんの顔が浮かんでいた。
(……迅さんに話したら、怒るだろうな)
昼休み。オフィスの片隅、窓際のテーブルで俺は舟形先輩と並んで弁当を広げていた。
外は秋晴れで、窓の外の銀杏並木が少しずつ色づいている。
今日はデスクを離れて、昼ごはん。
「……それ、今日も白鷹課長の手作り?」
舟形先輩が、箸を動かしながらからかうように言う。
直樹は慌てて弁当箱を少し閉じ気味にする。
「ちょ、ちょっと! 声大きいですよ、舟形先輩!」
「はいはい。誰も聞いちゃいねぇよ」
舟形先輩はニヤリと笑って、弁当の中を覗き込む。
「わ、卵焼き完璧じゃん。しかもこの照り焼き、見ただけでわかる、手慣れてるやつだ」
「……おいしいです」
「でしょーね。愛情たっぷりだもんな」
「ち、違いますよ! 愛情とか、そんなんじゃ……」
「はいはい、“そんなんじゃない”ねぇ~。顔が真っ赤だぞ」
俺はぷいと横を向いて、少し頬を膨らませた。
その様子に舟形先輩は肩を震わせて笑う。
「お前さ、隠したいなら、もうちょい隠す気出せ。みんなだいたい察してるから」
「えっ……! うそ、ほんとですか!?」
「見りゃわかるよ。朝、会社の前を一緒に歩いてるの、見られてんぞ」
「……っ!」
俺は手が止まって、耳まで真っ赤になる。
舟形先輩はフォローするように笑って言った。
「でもさ、いいことだと思うよ。ちゃんと大事にされてるって伝わるから」
「……そんな風に見えます?」
「うん。お前、最近いい顔してる。昔よりずっとな」
俺は少し照れくさそうに笑って、
「……ありがとうございます」
とだけ答えた。
舟形先輩はその笑顔を見て、ふと、
(……あーあ。こんなの、誰だって惚れるわけだ)
と心の中で苦笑していた……。
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