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当て馬にされた公爵令息は、隣国の王太子と精霊の導きのままに旅をします
精霊界の試練①
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魔術師長の部屋の静寂に、かすかな光が差し込む。
「それでは、準備はいいかね?」
魔術師長の声が響く。
僕は頷き、隣で肩を並べるマクシミリアン殿下の手を握る。
指先に伝わる温もりに、自然と力が湧いてくる。
「大丈夫、私がついてるから」
マクシミリアン殿下の瞳は、深く優しく、決意に満ちている。
その視線に、僕は胸が熱くなった。
自分も、絶対に守られるだけじゃなく、マクシミリアン殿下を支えたい――その想いを新たにする。
「光に身を委ねるんだ」
魔術師長の言葉とともに、僕たち二人を包む光が急に強くなる。
視界が眩い白に変わり、世界が揺れた――次の瞬間、僕たちは見知らぬ場所に立っていた。
広がるのは、言葉では言い表せない美しさ。
空は透き通った水色に輝き、地面には柔らかな光が流れている。
木々や草花も、どこか神聖な気配を帯びている。
「……ここが、精霊界……?」
僕が思わず息を呑むと、マクシミリアン殿下はそっと微笑む。
「さあ、行こう。君と一緒なら、どこでも行ける」
光の中から、ふわりと少年のような姿が現れた。
水色の髪に、柔らかなパステルの衣。
あの軽やかな笑み――
「おやおや、やっと来たかい、二人とも」
フィル・ウェン。
その声に、僕の胸は高鳴る。
初めて出会った日のことを思い出しながら、でも今回は違う。
「覚悟はできてるだろうね?」
フィルの目がキラリと光る。
「ええ、もちろんです!」
僕は胸を張る。
マクシミリアン殿下も頷いて、僕たちの手はしっかりと絡まったままだ。
フィルはからかうように、そして頼もしく微笑む。
「ふふ、よしよし。それなら次はもっと楽しいことが待ってるよ。
でも、女神さまのところまでは、そう簡単には行けないからね」
僕は胸に手を当て、深く息を吸い込む。
信仰と愛――二つの力が自分を支える。
「……僕たち、必ず辿り着きます」
その声に、精霊界の光も微かに応える。
マクシミリアン殿下に抱き寄せられて、殿下は額にそっと唇を落とした。
「一緒に、行こう」
僕たちは手を取り合い、神聖で未知の道を踏み出す。
精霊の導きのまま、二人の旅は、今、始まったのだ。
透明な水晶の道が、柔らかな光を足元に散らしながら続ていく。
僕たちは手を握り合ったまま、互いの存在を確かめるように歩く。
僕の頬がほんのり赤くなるのを感じていると、マクシミリアン殿下は優しく握る手の力を少し強めた。
「……手、離さないの?」
僕の小さな声に、マクシミリアン殿下は笑みを浮かべる。
「離す理由なんてないだろう」
「……うん」
僕は恥ずかしくなって目を伏せるけど、胸の中は安心で満たされている。
守られている、大丈夫だ、と思える感覚。
周囲の森の樹々は光を帯び、葉先からは淡い音色の風が舞っている。
空を漂う光の精霊たちが、僕たちの歩みに合わせて小さい輝きを揺らしている。
まるで、精霊界そのものが僕たちを歓迎しているかのようだった。
「おっと、仲良しカップルめ」
軽やかな声が聞こえ、後ろからフィルが姿を現した。小さな光の体をふわりと浮かせて、僕たちをからかうように笑う。
「……フィル」
僕は思わずマクシミの手をぎゅっと握り直す。
「見せつけてくれよ、手を繋いだまま歩く二人の姿をさ」
「やめてよ、からかわないで」
僕が真っ赤になっていると、マクシミがくすりと笑って、僕を自分の胸に少し引き寄せた。
僕たちは互いの手の温もりに安心しながら、光の川沿いを歩き続ける。
流れる水面は星空のように輝き、僕たちの影を揺らす。
手を離すこともなく、心も静かに寄り添いながら、女神のもとへ向かう旅は、穏やかな幸福に満ちていた。
「それでは、準備はいいかね?」
魔術師長の声が響く。
僕は頷き、隣で肩を並べるマクシミリアン殿下の手を握る。
指先に伝わる温もりに、自然と力が湧いてくる。
「大丈夫、私がついてるから」
マクシミリアン殿下の瞳は、深く優しく、決意に満ちている。
その視線に、僕は胸が熱くなった。
自分も、絶対に守られるだけじゃなく、マクシミリアン殿下を支えたい――その想いを新たにする。
「光に身を委ねるんだ」
魔術師長の言葉とともに、僕たち二人を包む光が急に強くなる。
視界が眩い白に変わり、世界が揺れた――次の瞬間、僕たちは見知らぬ場所に立っていた。
広がるのは、言葉では言い表せない美しさ。
空は透き通った水色に輝き、地面には柔らかな光が流れている。
木々や草花も、どこか神聖な気配を帯びている。
「……ここが、精霊界……?」
僕が思わず息を呑むと、マクシミリアン殿下はそっと微笑む。
「さあ、行こう。君と一緒なら、どこでも行ける」
光の中から、ふわりと少年のような姿が現れた。
水色の髪に、柔らかなパステルの衣。
あの軽やかな笑み――
「おやおや、やっと来たかい、二人とも」
フィル・ウェン。
その声に、僕の胸は高鳴る。
初めて出会った日のことを思い出しながら、でも今回は違う。
「覚悟はできてるだろうね?」
フィルの目がキラリと光る。
「ええ、もちろんです!」
僕は胸を張る。
マクシミリアン殿下も頷いて、僕たちの手はしっかりと絡まったままだ。
フィルはからかうように、そして頼もしく微笑む。
「ふふ、よしよし。それなら次はもっと楽しいことが待ってるよ。
でも、女神さまのところまでは、そう簡単には行けないからね」
僕は胸に手を当て、深く息を吸い込む。
信仰と愛――二つの力が自分を支える。
「……僕たち、必ず辿り着きます」
その声に、精霊界の光も微かに応える。
マクシミリアン殿下に抱き寄せられて、殿下は額にそっと唇を落とした。
「一緒に、行こう」
僕たちは手を取り合い、神聖で未知の道を踏み出す。
精霊の導きのまま、二人の旅は、今、始まったのだ。
透明な水晶の道が、柔らかな光を足元に散らしながら続ていく。
僕たちは手を握り合ったまま、互いの存在を確かめるように歩く。
僕の頬がほんのり赤くなるのを感じていると、マクシミリアン殿下は優しく握る手の力を少し強めた。
「……手、離さないの?」
僕の小さな声に、マクシミリアン殿下は笑みを浮かべる。
「離す理由なんてないだろう」
「……うん」
僕は恥ずかしくなって目を伏せるけど、胸の中は安心で満たされている。
守られている、大丈夫だ、と思える感覚。
周囲の森の樹々は光を帯び、葉先からは淡い音色の風が舞っている。
空を漂う光の精霊たちが、僕たちの歩みに合わせて小さい輝きを揺らしている。
まるで、精霊界そのものが僕たちを歓迎しているかのようだった。
「おっと、仲良しカップルめ」
軽やかな声が聞こえ、後ろからフィルが姿を現した。小さな光の体をふわりと浮かせて、僕たちをからかうように笑う。
「……フィル」
僕は思わずマクシミの手をぎゅっと握り直す。
「見せつけてくれよ、手を繋いだまま歩く二人の姿をさ」
「やめてよ、からかわないで」
僕が真っ赤になっていると、マクシミがくすりと笑って、僕を自分の胸に少し引き寄せた。
僕たちは互いの手の温もりに安心しながら、光の川沿いを歩き続ける。
流れる水面は星空のように輝き、僕たちの影を揺らす。
手を離すこともなく、心も静かに寄り添いながら、女神のもとへ向かう旅は、穏やかな幸福に満ちていた。
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