魔王さまに抱かれるもふもふツンデレオオカミの僕

蒼井梨音

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16.リュカの服選び

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オオカミの姿で二人きりの自由な時間を満喫した翌日。
リュカはまだ少しだけ、胸の奥がふわふわしていた。
胸の中にまだ“走る喜び”と“二人だけの世界”が残っているみたいで。

ゼファールは遠征帰りの仕事をひと段落させ、今日の午前は完全にリュカのために時間をあけていた。

ゼファールの部屋で、人型になっていたリュカは、ゼファールに借りたゆったりしたシャツに身を包んでいた。
ワンピースのようにぶかぶかで、リュカはスースーしていて落ちつかないけど、ゼファールにはそれが可愛くてたまらない。

ゼファールがリュカの頭をぽんぽんしながら
「……今日こそ、正式な服を仕立てような。
いつかは、リュカを街にも連れていきたいけど……まだ準備が必要だ」

「う、うん。ゼファと一緒なら……がんばる」

ゼファールはリュカが言う“がんばる”って言葉が本当に好き。
甘えでもなく、無理でもなく、まっすぐな、がんばる。
ゼファールは目を細めてリュカの顔を見ていた。


そして、二人で魔王城内の仕立て部屋に向かった。
ゼファールは、侍従たちに
「リュカに似合う服を」
と命じたが、侍従たちは困惑している。

「リュカ様は、森育ちなので人間の服に慣れておられません」
「だから、動きやすくて、でも公式場でも問題ない品位があって……」

リュカは緊張している。
ゼファが背中にそっと手を添えると、リュカの肩の力が抜けていく。

仕立ての担当が白いゆるいシャツを着せる。
「これ……なんか、落ち着く」
とリュカが言うと、ゼファも
「うん。白はリュカらしい」

次に着せられたのは、黒のスラックスに、短めの上着
リュカは鏡をじっと見て、小さく尻尾が出そうになるのを我慢している。

ゼファは、内心……(似合う。どれも似合う)と考えていて、一人困っていた。

侍従たちが耐えかね、口を挟む。
「陛下、どれも似合っておられるかと」

ゼファは迷わずに答える。
「……全部仕立てろ」

侍従にとっては、予想通りの展開なのであった。


服の採寸が終わり、二人は休憩室へ。
リュカはほっとして、出されたハーブティーを飲んでいる。

「街へ出るのは……もう少し待とうな。
魔族の言葉、仕草、危険な場所の見分け方……覚えてほしいことがいろいろある」
ゼファールが言うと、リュカは
「うん。ゼファと行きたいから……ちゃんと勉強する」

ゼファールと街へ行くという約束が、リュカにはとても嬉しい。
森じゃない世界へ、ゼファールと一緒に行けるのだから。

「何度でも教える。だから、わからないことは全部、俺に聞け」


夕刻。
魔王軍の勝利の報を祝い、大広間では大きな祝勝会が開かれることになった。

新しい服の中で、ゼファールが選んだ濃紺の上着を着たリュカは、少し緊張してゼファールの隣に立つ。
鏡を見ながら、わざと無表情で言う。

「……べ、別に。似合ってなくてもいいし。
ゼファールが着ろって言うから、着ただけだからな」
しかし、尻尾は嬉しさでぶんぶん高速。

「ああ、よく似合ってるぞ」
ゼファールは横で腕を組んで、ニマニマした顔で見ている。
「今日は俺の“連れ”として来ればいい。
礼儀は気にしなくていい。困ったら、俺の袖を引っ張れ」

リュカはゼファールの横で見上げて言う。
「……ふん、引っ張ってやる……」

「リュカ。無理するなよ。俺がついてる。」
リュカはゼファールの手をそっと握り、小さく嬉しそうに笑った。

――そして、二人で祝勝会へ向かう。

新しい慣れない服にソワソワしながら、
でも“緊張してる”と言いたくなくてツンとしてしまうリュカ。

「べ、別に怖くないし。
ゼファの軍の奴らがいっぱい集まってても、
ぜんっぜん平気だからな。」
尻尾は嘘つけなくて、しゅん…と細くなって、足元に巻きついている。

ゼファールが苦笑いしながら指摘する。
「……尻尾が正直に言ってるぞ」

リュカは恥ずかしくなる。
「~~~っ!!尻尾は反抗期なんだよ!!」

「うちのオオカミ殿は素直でよろしい」
ゼファールが優しい顔で言うから、余計に真っ赤になるリュカは、ゼファールに隠れるようにくっついた。
「からかうなよ!!」


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