祭り上げられた勇者

ゆん

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第3章

おふとぅん教の広がりは想像以上だった。
人々は眠り、回復し、
気づき始めた。

「あれ……なんで俺たち、こんなに働いてるんだっけ?」

朝7時起床、夜24時退社。
たまの休みにSNSを見れば、誰かが頑張ってる。
「俺も頑張らなきゃ」と無言の圧に追われてた毎日。
でも、1日8時間の睡眠を取り続けると――
“冷静”になった。

「平和なのに、勇者いらなくね?」
「戦争ないし、なんで軍備費こんなに高いん?」
「税金、どこに使われてんのこれ?」
「え、なんか移民政策とかやってんだけど」
「しかもその人たちの学費とか医療費、うちが払ってんの??」
「ちょっとその人ら生活保護申請したらすぐうちらが一日中働いて稼げる額以上の金額がもらえるんだってよ?」

人間たちは、だんだんと気づき始めた。

「なぁ、これ……疲れてたから見えなかっただけじゃね??」

そう。人間には、余白が足りていなかったのだ。

気づいた人間から、そっと魔界に移住を始める。

「ちょっと怖いと思ってたけど、住めば都だった」

魔界は制度こそ“魔界ファースト”だが、
情報の透明性が高く、トラブルさえ起こさなければ共存も可能。
住人:「今日の睡眠はどうでした?」
移住者:「ふかふかでした」
住人:「それはよかった」

たまに見かける勇者の顔も、すっかり血色がよく、
最近では「今日の朝ごはんはこれ!」とSNSならぬ“魔界通信”に投稿している。
なお、毛布の中から出てこないので写真は全て上半身までである。

そして王国。
民草がいなくなった王国は焦る。
税収が減る。
移民をさらに受け入れる。
が、うまく統合できず、
不満が高まり、暴動が起き――
王国は、あっけなく崩壊した。
歴史書の一節にはこう書かれている。
「真面目に働く者に眠りを返さなかった国家は、眠るように消えた」

魔界は今日も平和である。
睡眠時間は十分確保され、問題が起きればすぐ“睡眠カウンセラー”が対応する。
その筆頭が――魔王。
今日も毛布の中の勇者をトントンしながら、魔王は思う。
「勇者よ、世界は眠ることで救われたぞ」
勇者は、もそもそと答えた。
「ママぁ……ごはんたべたくなってきた……」
「よし、起きたらね」

世界は、今日もちょっとだけやさしい。
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