祭り上げられた勇者

ゆん

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第4章

おふとぅん教が広まり、社会がゆるやかに変わり始めたころ。
その流れに違和感を持つ者たちがいた。
かつて“努力!根性!やる気!”で会社や軍を支えてきた世代――
名付けて:意識高い系寝不足おじさんズ(以下、「スパルタズ」)
彼らは思った。
「最近の若いもんは寝すぎだ。怠惰だ。ぬるい!!!」

一部は演説を始める。
「俺たちの時代は1日3時間睡眠だったんだぞ!寝るのは死んでからにしろ!!」
「こんなに自由に寝てばかりいたら国が滅ぶ!!もっと苦労を知らなければ!!!」
「魔王に甘やかされた勇者なんか、勇者じゃない!!」
「最近の若いもんは!」

とはいえ、現代の若者たちはやさしかった。
「わかります~!でも、健康って大事なんで~^^」
「がんばってきたんですね!でも、もう休んでいいんですよ?」
「話を聞いてくれてありがとね、布団用意してますよ~」
と、みんなで温かく受け入れた。
一部のおじさんは、ふと布団に入ってみて――
秒で寝落ちた。
目覚めた時には、ぽろっと涙がこぼれていた。
「……俺、ずっと、誰にも甘えられなかったんだな」

ただし、全員がそうなるとは限らない。
中にはどうしても認められない者たちがいた。
“眠りを否定し、他人の安心を破壊しようとする者たち”。

ある夜、魔王城の前に1人の男が立った。
瞳はぎらつき、手には本。
タイトルは――『目覚めろ!世界を変えるのはお前だ!』(帯:睡眠は甘え)
男:「俺は元・勇者育成教官、“目覚まし王”だ!!」
毛布から顔を出した勇者が呟く。
「おおぅ…きらいな人きた…」

魔王、登場。
「……君、ちょっと寝ようか?」
目覚まし王:「甘えるな!!!!!」
バッ!!!
目覚まし王が布団をはぎ取ろうとしたその瞬間――
ズシャアアッッ!!!
毛布が変形し、勇者を包む聖剣モードに突入。
バリア展開。侵入阻止。
目覚まし王:「……なにこれつよい」
魔王:「この子の安心のために存在しているからね。ちょっとやそっとじゃ破れないよ?」

戦いは激化――
――することはなかった。
なぜなら、目覚まし王がやたらしゃべるだけで、誰も耳を貸さなかったからである。
人々は眠って、回復して、目を覚ましていた。

魔王は優しく言った。
「焦る気持ちはわかる。でも、世界が変わるときって、案外静かなもんだよ?」
勇者:「あと、ごはん食べた?」
目覚まし王:「…………食べてない」
勇者:「おかゆあるよ、食べる?」
目覚まし王、泣いた。

こうして世界はまた少しだけやさしくなった。
おふとぅんの中には、まだたくさんの“眠れてない人”がいた。
でも――気づけば、隣には誰かがいた。
「安心していいよ」
その一言が、世界を救っていく。
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