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2.魔力コントロール
「それで?私を頼ってきてくれたわけですね?」
言いながら、レストは自身に与えられた専用の研究室の椅子の背もたれに体重を預けた。少し古めかしい椅子がぎし、と悲鳴を上げる。研究室内は物であふれかえって、足の踏み場もないほどだ。見たところ実験に使う道具や、魔術書や実験結果の覚書を書き留めたものの切れ端などがほとんどのようだが、何をどうすればここまで雑多にできるのか想像がつかない。
レスト自身はいつもパリッと白いシャツに黒いベストとトラウザーを着こなしていて見た目は清潔感あるし、だらしなくないのに、このアンバランスさは何だ?と思いながら、フィンリーは背筋を伸ばした。
「ぶ、不躾なのは承知です。でも僕は、力が欲しい」
緊張で握った拳が震えるけれど、どうにか真っすぐレストの目を見てそう答える。レストはふぅん、と興味があるのかないのかわからないような生返事をして口元にうっすら笑みを張り付けている。
「力なら、王宮で稽古をつけてもらっているでしょう」
それは確かにそうだ。しかし、学園内に刃物は持ち込めない。つまり、剣術での対抗はほぼできない。あとは体術だが、確かに自分より身体の大きな相手をいなす術は知っている。それでもクインを庇いながら、さらに相手が複数人の場合を考えると心もとな過ぎた。
だから、考えたのは魔力。本来この世界にいる者は全てに魔力があるが、魔力量やそれを使う資質といったものは種族によって大きく違う。
例えば魔族は魔力量が大きく操るのも得意だが、獣人は魔力量も少なくほぼ扱うことも出来ない。その分獣人は元々の身体能力が高い傾向にある、といった種族ごとの特徴がある。
王族であるフィンリー達は基本的に精霊使役を得意とするため、魔力コントロールを学ぶことがない。実際、王宮のカリキュラムでも、学園の授業でも魔力コントロールは存在していない。
大多数が生きていく上で必要ないからだ。
では、どうやって学ぶかというと……魔族は魔族同士で切磋琢磨し、学んでいくようだ。
「魔力コントロールを、教えてほしいです」
気まぐれな魔族が、他種族に教えることはほぼないというが、それを承知でお願いしてみる。レストの片方の眉があがり、長い指がとんとん、と自身のこめかみをたたいた。
「覚えて、どうするんです?」
「……クインを、悪漢から守ります」
「精霊は魔力を嫌うのに?」
痛いところを突かれ、フィンリーはぐ、と押し黙る。
そう、王族が魔力コントロールを学ばないもう一つの理由は、精霊が魔力を忌避しているからだ。
レストの目が細められる。糸みたいになった目に、感情が読めない。
「大精霊と契約できなくなるかもしれないですよ?」
それは、嫌だ。自分が目指すものは国王だ。つまり大精霊と契約することが目的だ。だけど……そもそも自分が国王を目指す理由もクインだった。
「クインを守る方が、大事だ」
万一それで大精霊と契約できなくとも、クインを守れる力が手に入ることが今は重要だった。
ぐ、と目に力を込めて見つめ返すと、レストの表情が少し和らいだ。
「未来の国王が、双子の姫を優先する……。面白いですが……ただで協力は出来ないですねぇ」
国の未来よりも、身内を優先すると宣言したら、むしろ嫌われる可能性が高かった。けれど、レストの反応からそこはクリアしたことがわかる。教えてくれるのか、と喜色を浮かべかけたフィンリーに、レストはにんまりと口角を上げて告げた。
「交換条件、でどうです?私が貴方に魔力コントロールを教える代わりに、貴方の身体を研究させてください」
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